俺、神になります。
「は?」
「ですから、神になってみませんか?あなたにはその素質があります。」
神って人間がなるものなのか?いや、そもそもこのコスプレ少女を信用していいものか・・・
「あっ!そういえば自己紹介がまだでしたね。私は女神のクリシアというものです。よろしくお願いします。」
「俺は安間ハジメだ。まあ何をよろしくかは分からんがとりあえずよろしく。」
「で、神になるってどういうことなのか説明してくれないか?」
「そのままの意味です。実は今、人間関係を管理する神がストライキ中でして、人手が圧倒的に足りてないんですよ。」
「神もストライキとかするのか・・・」
「そりゃそうですよ。神の仕事ってとても大変なんですよ。それに最近の世の中はますます人間関係が面倒になってきていて、神たちも我慢の限界だったのでしょう。」
頭がついていかない。
「神になることで俺に利点はあるのか?今の聞いたかぎりじゃ絶対やりたくないんだが。」
「もちろんあります。なんてったって人間が神になれるんですよ。神の仕事は交代制です。神は死ぬことがないので500年くらい仕事すれば後の500年は楽しいですよ」
「ちなみに、俺がこれを断ったらどうなるんだ?」
「その時は、あなたの記憶を全て消して、新しい肉体に入れるだけです。」
それはなんかやだな。俺は数時間考えたのち、
「しょうがない。やるか。」
「ありがとうございます。でも、できればもう少し早くしてくださると嬉しかったです。」
笑顔でそんなことを言ってくるこいつを本当に女神かと疑うのは仕方のないことだと思う。
「で、何から手伝えばいい?」
「待ってください。ただの人間をいきなり神にするわけにはいきません。簡単なテストをさせてください。」
「面倒くさそうだな。なんだよそれは?」
「今からあなたにはとある世界にとんでもらいます。あなたたちがいういわゆる『ギャルゲー』の世界に。」
「なんで神になるのにギャルゲーの世界に行かなきゃならないんだよ。」
「さっきも言ったじゃないですか。人間関係を管理する神が足りてないと。だったらその人間関係で最も面倒な恋愛についてあなたが心得ていないといけないというわけです。」
「うーん、そういうものか。」
「そういうものです。というわけで、頑張ってくださいね〜。」
その直後、俺の意識はまた途絶えた。
「・・・さん。・・メさん。ハジメさん。」
誰かの声がする。
起きるとそこには誰もいなかった。おかしいな。たしかに誰かの声が聞こえたのだが。
「ようやく起きましたか。私です。クリシアです。」
「お前、どこから声かけてんだよ?」
「頭の中に直接です。あなたが神になれるよう、サポートするのが私の役目です。」
「えっ!それ聞いてないんだが」
「当然です。今初めて言ったのですから。」
「もう少し早く言えよ!てかそんなことよりここはどこだ?」
「さっきも言った通り、ギャルゲーの世界です。ここはあなたの自宅です。あなたは一人暮らしで、両親は数年前に他界。そこそこの金持ちだった両親のおかげで普通に生活できているという設定です。」
「そうか。で、こっから俺は何すりゃいいんだ?」
「普通にギャルゲーをするような感覚で問題ありません。とりあえず、学校に通ってもらいます。」
「もしかして、普通に授業もやる感じなのか?」
「当然です。ここはギャルゲーの世界と言ってもあなたがもともといた世界となんら変わりません。ただ、あなたたちの世界よりも恋愛に繋がるものの発生件数が格段に多いです。」
「それって、ギャルゲーの世界っていうのか?」
「ええ。もちろんです。」
こいつには言いたいことが山ほどあるが、とりあえずは新しい生活の始まりだ。
この時の俺は少しワクワクしていた。ただ、この数時間後に思い知ることになる。このギャルゲーは上級者向けだと。