story 1
「悠ちゃん、大好き〜っ」
「俺も」
手足が震える。
「舞由よりも?」
「ん〜、どーだろ」
息ができない。
「ひどーい!萌は、悠ちゃんが1番好きなのに」
「ははっ、嘘だよ。萌が1番に決まってる」
今、聞いてる声は誰のもの?
頭が追いつかない。わからない。何も。
「悠ちゃーん………いつになったら、舞由と別れる?」
「わかんね」
「悠ちゃん!!」
「怒んなよ。べつにいつか別れんだから…」
もう無理。
聞いていられなくて耳を塞いだ。
何も聞きたくない。何も見たくない。
その一心で席を立ち、震える脚を動かす。
外は雨。
行き交う人はみんな傘をさしている。
でも、私はそんなことお構い無しに、ここへ来るときにさしてきた傘を引っ掴んで雨の中へ飛び込んだ。
傘をさす時間さえも我慢出来ない。
早く、この場所から離れないと。
早く、早く。もっと遠くへ。
2人からずっとずっとずっと遠い場所に。
沢山の人の視線が突き刺さる。
それでも、この雨が私の涙を隠してくれる気がした。
ーバンッ
「っ、はぁ…はぁ………」
数分なのか、十数分なのか分からないけど、家に着いた時には息絶え絶えだった。
苦しい、苦しい苦しい苦しい。
「………な、んで」
信じてたのに。楽しかったのに。嬉しかったのに。大切だったのに…っ!!
全部、壊れた。
「悠真ぁ…!」
玄関先なのにも関わらず、その場へ座り込む。もう、立っていられない。
いつから間違えた?どこで?何を?
考えても、ぐちゃぐちゃな頭では何も思いつかなかった。
あぁ、クラクラする。何がなんだか分からない。分かりたくない。もう、いいや。
グラリと世界が傾く。
目の端で自分の濡れた黒髪が泳ぐのを見ながら、私は意識を手放した。




