ep.2 友人
こんな青春を送りたいだけの人生でした
日曜日、楓さんと出会った。その時彼女は死のうとしていた。僕があの時屋上へ行かなかったら、彼女はもうこの世に居なかったのだ。あんな事言ってしまったものの、僕が彼女の『生きがい』になんてなれるのだろうか。
そもそも『生きがい』とは何なのだろうか。自分の人生に足りない「何か」が分からないのに他人の『生きがい』なんて分かるわけがない。もう一度彼女に会わなければ…
「―――…さか」
「―――う坂」
「高坂ァ!」担任の怒号によりやっとこちらの世界に帰ってきた。
「はい!」脊髄反射で立ち上がってしまった。
「何ボケっとしてんだ!早く黒板写せ!」
「は、はい」クラスメイトは立ち上がった僕を見てクスクス笑っている。僕は俯きながら席に座った。顔に熱を感じる。
「あっれ~?新が上の空なんて珍しいね~」右隣の席からにやにやしながら話しかけてきた。
「何だよ駿、僕だってそういう時はあんだよ。」彼のほうを見ずに言った。
彼の名前は手塚 駿。去年から一緒のクラスで今年も一緒のクラスだ。ムードメーカーで運動神経抜群。明るくイイやつだ。しかし勉強は全くと言っていいほどできない。
「なに、好きな人でもできた?」一瞬ノートを写す手が止まってしまった。
「えぇ~!?図星かよ!」駿は大声をあげた。授業中である。
「手塚ァ!静かにすることもできんのか!」案の定担任の怒号が飛んできた。
「さーせーん」悪びれる様子はない。
「後で詳しく聞かせろよ。」駿は小声でそう言うと、机に突っ伏して寝始めた。
「んでんで~、新くんは~いつどこで恋に落ちたのかな~?」昼休み、彼はパンを齧りながら尋ねてきた。随分楽しそうである。
「だから違うって。」スマホから目を離さずに言った。
「いやぁ~、あの反応は違うね。まさしく恋する乙女って感じだったよ。」ケラケラ笑いながら茶化してくる。
「何回違うって言えばいいんだよ。これ以上しつこいなら今日から課題は手伝わないぞ。」彼は基本僕の課題を写して提出している。
「すんません、新様。もうこれ以上は何も言いません。だから課題は写させてね♡」このように彼の課題の生命線は僕である。
「はいはい。」軽くあしらっておいた。
結局この週は彼女の事をずっと考えており授業に集中できなかった。
次回は楓さんを登場させます