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第1話 夢


「今日も仕事が終わったビールがうまい」


今年で25才になる月島照人つきしまてるひとは仕事を終え一人自宅でビールを飲んでいた

毎朝毎朝満員電車に揺られ愛想笑いを浮かべ上司とコミュニケーション

お得意様への接待で言いたくもないおべっかを使い…


そんな日々に疲れ果てながらも唯一楽しみである酒を飲みながらボーッとしていた


「はぁー俺はいつまでこんな生活を続けんだろ?」


そうひとりごとを呟く


いっそ会社なんてやめるか?

という考えが脳裏をよぎったがすぐ否定する


「っていうか本当に人生ってなんなんだろ」


リアルが充実していないのだ


恋愛にうつつを抜かす時間もなければ出会いもない

大学の頃の友人とはたまに会って飲むが


そもそも大学で在籍していたサークルがまずかった

サークルという名を騙った酒飲みサークル


女の子でもいればよかったが、生憎と男だらけのムサイ飲み会だけだった


それでも当時は楽しかった

バカをやっているだけで気が紛れた


しかしいつまでもバカ騒ぎができる年齢ではない


社会人として最低限のマナーは守らないと社会的に死ぬ


それを自覚しているからこそ人生を楽しもうとする気持ちに歯止めがかかる


大人になったといえばそれまでだが、それがとても悲しいことに思える



そんなことを思いながらゆっくりと眠りにつくのであった



どれくらいの時間で寝ただろうか

そもそも眠っているのだろうか



そうやてって意識が朦朧として来たとき、照人は不思議な感覚に襲われた

幻聴だ


「そなたは境を越えるか?」


誰かの声がする


「え?」

照人は眠気に脳をやられながらもなにか得体の知れない恐怖に襲われた


「心配めさるな、我は冷やかしに汝を覗いておるにすぎん」


誰かが言う


「月の名を持ち、十六夜の今宵にひとりで酒宴、まるで昔の我を見ているかのようだ。どうだ一度世の境というものを超えてみる気はないか?」


誰か分からないが照人は元来頭の回転は悪い男ではない

朦朧とした意識のなかで必死で頭を働かせる

これはなんだ?この人はだれだ?俺の知りうる限り、声だけで畏怖を覚えさせ、畏敬の念を抱かせる存在などこの世にいないはずだ


「なかなか聡明なおのこよの。いかにも我はうつつ世には顕現しておらぬ」


ますます分からない


「良い、分からぬものはわからぬで良い。我は夜、我は月、幽世と現し世の狭間に住む者じゃ、一人で月見酒という孤独が哀れになって覗いておったが」


なんと答えればよいのだろう?


「まあよい境を超える超えまいは汝に任せよう、良いか、境を作れ、超えてみよ、もう話は終わりじゃ、よう眠れ」


うつらうつらとした意識のなかでその声だけが響き渡った

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