戻らぬ過去を惜しみ、気を紛らわすために書かれた手紙
1月4日
年末年始の休暇が終わるのと同時に、世界も終ってしまうかのような気分です。多くの人にとっても今日で休暇は終わり、程度の差こそあれ、同じような暗澹たる気分でいることでしょう。
先日は情けの無い手紙を書きました。他人に何でもかんでも心の内を正直に述べることは、許されないのですから(それは人に苦痛を与えます)、貴方にしか述べることはできなかったのです。あなたは私ですから、自分が楽になるとの希望をもって、私は自分を傷つけたわけです。
今、私は分煙が全く不十分な駅前の喫茶店でこの手紙を書いています。こんな時間(今は11時前です。もうそろそろ閉店)にわざわざ出掛けることは滅多にないのですが、休みを少しでも延長したくて、部屋を抜け出してきました。本を読んでいるとき、ものを書いているとき、絵を描くとき、そうして何かに熱中しているときだけは、明日から繰り返される時間の恐怖から逃れることが出来ます。
いま、音楽プレイヤーからL'Arc~en~Cielの叙情詩が流れています。この曲のPVを最近私は好きになりました。そういえば、何年か前、台湾人の留学生もこのPVを美しいと言っていました。洋館の中を歩いていたHydeがアンティークの椅子に座り、ペーパーナイフで手紙の封を開けると、(思い出の中の)ローマ時代の人々を描いた油絵の中から、半裸の男女が浮き上がって動き出します。油彩画に人物の動画がハメコミ合成されていて、人物だけが一時停止した状態から再生されるようにになっているのですね。半裸のローマ時代の服装をした人たちが、美味しいものを食べ、音楽を聴いて、踊るサロンの画です。美男美女の活き活きとした裸体がとても美しい。最近なんとなく官能美というのが分かってきたような気がします。手紙から情景が浮かぶという流れが、今の私の気分にぴったりです。
昨日は、最後の日に備えて、都会のエスプリをいっぱい吸い込んでおこうと、六本木ヒルズへ出掛けました。森アートセンターで開かれていた“ティムバートンの世界”が目当てでした。“激混み”とネットに流れていたとおり、入場まで一時間待ちという混雑でしたが、待った割に内容はそれ程でも・・・というのが正直な感想です。昼に行ったときは、行列が外にまで溢れていたので、夜まで買い物でもして待つことにしました。
最近、貴方宛てに切手の要らない手紙を書いていたら、返事の返ってくる本当の手紙を書きたくなって、インターネットで文通相手を作りました。それで、ちょっと都会じゃないと手に入らない珍しいレターセットはないかしら・・・と思っていると、ありました、ヒルズ内にお洒落文具専門店が。ペーパーミントという可愛らしいお店です。可愛らしさに怖気ずく私ではありません。堂々と入りじっくり吟味します。そこで私は、可愛すぎず、堅過ぎないデザインの理想的レターセットを見つけました。これは男性的な悩みですね。今は男性ならではという感じですが、男女の社会的立場が近づくにつれ、ビジネスシーン(商用)で堅いアイテムを求める女性が増えれば、次第に女性の需要も増えるかもしれません。(或は可愛い便箋を男性が普通に使うようになるか)イタリア製のレターセットを、お人形のように可愛い店員さんにお会計をしてもらいました。え、整形?っていうくらいに可愛らしい人でした。
その後はヒルズ内の喫茶店はならんでいたので、スタバが店内に併設されたTSUTAYA六本木店へ行きました。TSUTAYAでは本物の文通相手に手紙の続きを書いたり、小説を読んで、優雅に過ごしました。
麗しい時間は終わりました。もうお店を出なければなりません。さようなら。また手紙を書きます。
都会育ちのX様へ
自然の無い田舎暮らしのSより