稲生の戦い
凛夏についていき襖を開けるともう多くの人が集まっていた。
そして、凛夏が入ると全員がひれ伏した。
「おー。俺こんなに多くの人が頭下げるの初めて見るよ。」
とそんな感じで俺が見渡していると、凛夏が呼んできた。
「千虎。そこに座れ。」
そう言って凛夏が指したのは一番の下座だ.
特に位、ましてや家臣の中の序列などはまったくこだわらない千虎はそのまま指された場所にすとんと座った。
それを見届けた凛夏は口を開いた。
「今、我と一緒に入ってきたのはこれから我に従うことになった桃神千虎だ。細かい説明は自分で話せ。」
「ほーい。桃神千虎でーす。よろしくね。」
みんなと早く仲良くなりたい一心でした挨拶は盛大に滑った。
あれ?これやれば麗しのお義姉さまはすぐほかの人と仲良くなってたんだけどなぁ・・・
「おい。千虎とかいうやつ。」
そう言ってきた方を見ると、とても男勝りな・・・少女、そうロリがいた。
「うーん?これはロリというよりショタだな。うん。」
「ろり?だか、しょた?だか知らんがお前、ふざけてんのか?」
あれ?なんでおこってるのーー!
「えーと、ひとつ聞いていい?」
「なんだ?」
「何で怒ってるの?」
「・・・・・・・・・・・」
俺がそういったとたん俺たちがいるここ大部屋から音が消えた。
「・・・・・・・お、お前・・・。ふざけんじゃねーぞ!」
そう言って沈黙を破ったのはさっきのショタだ。
「えーーー!」
俺が驚いているのもかまわずショタは腰に佩いた刀で切りかかってきた。
「ちょ、ちょっと、はなし、おわ。ちょっと待って。それ真剣でしょ!仲間だよ。ねえ、ちょ。おま。」
俺が話し終える前に次々と襲い掛かってくる斬撃。
このショタ意外とやる。
見た目はかわいい男の子って感じだが、その斬撃は正確にして、苛烈。
「うりゃ、うりゃ、うにゃー!」
うーん。攻撃のときの声は可愛いのに、斬撃にはかなりの殺気が・・・
「ねえ?そろそろ落ち着いてくれないかな?凛夏も困ってるだろうし・・・って笑ってるし。」
そろそろ斬撃を見切っていた俺はよそ見できるほどだった。
「くそ!なんであたんねーんだよー!」
そろそろ止めとくか。
俺が集中すると、俺の視界ではショタが振り下ろす刀がいつもよりかなり遅く見えた。
「ここ!」
そう言い、片手を前に出し何かをつかむように手を握った。
「な・・・。」
そう驚いたのはショタだ。
そして俺の親指とほかの指の腹は銀色の長い・・・刀に触れていた。
しかし、刀はそこで止まっていた。
「くっ。うにゃーーーー!」
と、ショタが言うも刀は1ミリも動いていない。
「はあ、はあ、はあ。や、やっと体が温まってきたところだ。」
と、言っておるショタの顔は限界そうだ。
「いや、お前結構つらそうに見えるけど・・・。」
「そ、そんなことは―」
「三佐殿、ちょっと落ち着きなさい!」
声がこの場に響き渡った。
声の主は背の高くて、きれいな黒い髪が腰まであるザ・清楚系って感じの女性だ。
「止めてくれるな十火。俺はこいつを倒すんだ!」
そろそろ場が混沌としてきたときにやっと凛夏が口を開いた。
「みなのもの、今は仲間うちで争っている場合でない。千虎に不満がある者もいるだろうが抑えてくれ。千虎のことは、今回の戦争を見て信用にたるかどうか判断してくれ。それでもまだ受け入れられない者には今回の戦が終わった後千虎とやりあっていいことにする。」
「・・・わかりました。」
三佐と言われたショタもしぶしぶといった様子で引き下がった。
その後、みんな座りなおし簡単な紹介が始まった。
まずさっきの清楚系の女性が口火を切った。
「丹羽五郎左衛門尉長秀。愛称は十火です。」
丹羽さんは丁寧に挨拶してきた。
「桃神千虎です。こちらこそよろしく。」
「次は俺の番だな。」
そう言ってきたのはショタだ。
「俺の名前は森三左衛門可成。愛称は三佐だ。先に言っておく、俺はお前のことぜってー認めないからな!」
「よろしく。」
可成はなんか俺のことをにらんでたがそれを無視してそう短く答えた。
「次は犬南の番だね。」
そう言って立ち上がったのは巨乳・・・ではなく元気そうな茶髪の女の子だ。
「犬南の名前はね。前田又左衛門利家。愛称は犬南だよ。」
「よろしく。」
その後も何人か挨拶をしてもらい、全員し終わったとこで凛夏が言った。
「これで、顔見世は終わったな。早速だが、我の妹の信勝が謀叛を起こした。直ちに、制圧に向かう皆の衆疾く準備をして我に続け!」
『はい』
すべての将がすぐに動き出した。
「千虎我らも出るぞついて来い。」
「オッケー、凛夏。」
・・・・・・
ん?なんで凛夏は止まってるんだ?
「なあ。」
すると突然凛夏がそう言って振り返ってきた。
「なに?」
「おけいとはどういう意味だ?」
おけいじゃなくてオッケーなんだけどまあいいか・・・
「えっと、了解したとか、わかったとかかな・・・使いどころが多くて説明し辛いな。」
「おー。なるほど、おけい、おけいか。」
うーん、おけいになっちゃった。
「よし、それじゃ気を取り直して行こうではないか。」
かなり上機嫌になった凛夏は鼻歌なんか歌いながら戦場に向かっていった。
鼻歌歌いながら戦場に行くとか、まるで俺の麗しのお義姉さまみたいだな。ちょっと、危ない人のようだな。
お義姉さまのことを思い出し、それが口に出ていることも知らず、笑って凛夏についていった。
しかし、周りから見ると後ろで笑ってついていっている千虎も十分危ない人だった。
戦に出かける凛夏は早く、すぐに決戦の場に着いた。
こちらの軍勢約・・・というほど多くなくわずか五騎。
千虎、凛夏、文華さん、可成、犬南だ。
丹羽さんはほかのものを先導しているらしい。
「んで、どうする凛夏。」
「味方の砦が攻撃を受けてるらしい、だから早く助けたいというのが本音だ。」
「「わかりました。」」
そういって、可成と犬南は行ってしまった。
「・・・行っちゃったけどいいの?」
「まさか、ほんとにいくとは・・・。」
二人が出て行って少ししたころ丹羽さんが到着した。
「丹羽隊、ほか700ほど着きました。」
「ご苦労。さてあの二人はいつ帰ってくるのか。」
そう言っても、待っていたら砦が落ちてしまう。
すぐに出られるように準備をして、出ようかと思ったとき向こうから二人が戻ってきた・・・敵兵を連れて。
「凛夏様ー。すいませーん。」
犬南はもう涙目だ。
「二人でできると思ったのだろうか・・・、それよりも今はあの二人の救出だ。それにとりでから少しでも敵兵が連れたのは悪くない。」
凛夏あきれながらそう言い、刀を抜くとそれを天に掲げ、前に振り下ろした。
「全軍突撃ーー!」
こうして稲生の戦いが始まった。
今ふと思ったのだが、この世界ちょっと史実と違うな。
まず武将が女の子になってるし、確か平手政秀はこの戦いの前に諫死しているはずだし、そして何より俺こと百神千虎なる人物は聞いたことがない。
これはどういうことなのかな。
でも、俺のやることは決まっている。
凛夏を助けて、支える!
そう結論づけて自分も突っ込もうかと思ったとき、前がやたら騒がしくなった。
戦争だからどこもかしこも騒がしいのだが、この感じは・・・
「正面、敵の勢いが強くもちこたえられそうにありません。」
そう、何度も戦争を経験したことがあるのでわかる。
あれは敵軍の勢いにこちらの軍勢が押され、おののいているざわめきなのだ。
「味方の山田冶部左衛門殿敵に討ち取られました。」
「佐々孫介殿敵に討たれました。」
「なに、孫介が討たれただと!・・・このままではやばいな、我も出る。正面の敵を押し返すぞ。」
刀に手をかけ前に出ようとする信長を止める手があった。
「凛夏様、ここはわしが出ましょう。」
文華さんだ。
そして、その顔は至極真剣だった。
「しかし、文華ではあの鬼柴田には勝てん。むざむざ死にに行くようなものだ。」
今度は逆に文華さんとめようとする凛夏の手を・・・小さい両手で包んだ。
「けじめをつけねばいけません。凛夏様の行動の一つ一つにはそれだけの重みがあります。・・・重々お忘れのなきよう。」
そう言って、凛夏の手を包んでいた手を放すとすぐに前線に突っ込んで行った。
「文華ーーーー!」
後ろから、凛夏がよぶ声は文華にも聞こえていた。
凛夏様の守りは信房と三佐に任せてきたし、最後に一発かましてやるかの。
そう考えながら、刀に手をかける。
「さて、おぬしらにはわしの最後に付き合ってもらおうかの。」
そう最高の笑顔で言った文華はトップスピードで突っ込む。
居合いで一人倒し、返す刀で周りの敵も切り伏せていく。
文華の活躍で、少しは持ち直したかに見えた。
しかし、文華の近くにいた兵たちが吹っ飛んだ。
「やっぱりきたか、柴田勝家。」
「平手の婆さんか。すまないが倒させてもらう。」
勝家は持っていた得物を振りかぶる。
勝家の得物は4尺もある斬馬刀だ。
文華はすぐに危険を感じ引いた。
しかし、振った衝撃に後ろに少し吹っ飛ばされる。
これはやばいのう。時間稼ぎぐらいにはなると思ったんじゃが、正直相手にならないぐらいじゃ。もって2、3合じゃな。
「ならば!」
文華は踏み込んだ。
すでに退路はない。
突っ込むしかないのだ。
だが、単に突っ込んでいってもそのまま斬られておしまいだ。
それなら、少しでも体力を削らしてもらうかの。
しかし、勝家の強さは文華の予想以上だった。
気づいたときにはもう刃は目の前に迫っていた。
強さは、得物を扱う技量だけではないということかの
そう、考えてしまうほど文華はもうあきらめていた。
キンッ!
金属同士が触れ合う音がして次の瞬間文華は襟を引っ張られ後ろに倒れこんだ。
「はあ、言ったじゃないですか。凛夏が悲しむからまだ死なないでくださいって。」
そう呆れ顔でぼやいたのは千虎だ。
「小僧。なぜここに。」
文華は目を見開き驚いていた。
「だ、か、ら、死ぬなって言ってるんですよ。もう、なんで戦争する時代の人はそうぽんぽん死のうとするかなぁ。」
「おい、貴様何者だ。」
俺が文華さんと話していると近くから声がかけられた。
「ん?あ、俺?教えてもいいけど、普通名乗るときって自分から言うんじゃないの?」
「そうだな、私の名前はし―」
「って言うのは冗談。俺の名前は桃神千虎。今日から凛夏の家臣になった者だー!」
俺が名前を言ったのに目の前の少女がにらんできた。
「おほん。私の名前は柴田―」
「えーーー!まじで、このきょにゅ、おほん、お姉さんがあの柴田勝家。おっさんだと思ってた。・・・あ、続きどうぞ。」
「・・・勝家だ。」
勝家はむすっとしながらもちゃんと?最後まで言い切った。
「それで?俺早く文華さん後ろに連れ帰りたいんだけど。」
「そんなことさせん。」
そう言って、おっさんが突っ込んできた。
千虎は洗練された動きで刀に手をかけ、居合い斬りを放った。
今まさに突っ込んできた、男はきれいに真っ二つになって静かになった。
千虎はそちらを一瞥もせず、刀を振ってきれいにすると勝家に向き直る。
正直、勝家は迷っていた。
技量を見れば、勝てる見込みは5分ぐらいだった。
勝ったとしても無事ではすまないだろう。
ならここでひくか?
いやでも、ここで私が引けば後ろにいる晴様が危ない。
それに数で有利なこちらがまだ優勢だ。
「なら。この勝い―」
「やぁあああー!」
この戦場でも響き渡るほどの大きさの声。
その大きさに、戦場にいるほとんどのものがびくっとしたくらいだ。
「林美作守、討ち取ったりー!」
またもや、響く声。
しかも敵の将を討ち取ったみたいだ。
声の大きさに足軽が腰が引けているところに、将が討ち取られた情報が入ったことで戦況がひっくり返った。
敵はどんどん押し返され、ついに引いていった。
勝家も、殿をやっていたがもう姿が見えない。
俺たちは、追撃はせずかなり減った味方の再編を行っていた。
そんな中、俺が文華さんを連れて戻ると、周囲からの冷たい視線とそれよりも冷たい、凍えるような冷たさの言葉が投げかけられた。
「千虎、姿が見えないからどこに行ったのかと思えば、文華のところに行っていたのか。」
本当は文華さんが帰ってきたことで感動の再開シーンのはずなんだけど、行ってくる凛夏の言葉には感動の再開のような涙と暖かさはなく、あるのはゴミを見るような冷たい視線と、冷たい言葉だけだ。
まあ、なぜかというと・・・
「ちとらー。なあ、ちとらわしの婿になることへの返事はまだかの?」
今絶賛俺の腕に抱きついてきてる幼女、もとい文華さんのせいだ。
「それで、何があったのだ?言い訳だけはさせてやる。」
「凛夏、ちょっと落ち着けって。俺も何がなんだかわからないんだから。勝家とか言う女の子と戦ってた文華さん―」
「だから、ふみかでいいと言っているだろうちとら。」
「あー・・・文華がピンチだったんでちょっと間に入って助けただけだ。」
「そうか。よくわかった。それでどんな薬を使ったんだ。南蛮にはそういう薬があると聞いたことがある。」
「いや、そんなものは断じて使ってないぞ!」
「凛夏様は疑り深いのう。ちとらがやっていないと言っているというのに。」
文華がやれやれといった風にそういう。
凛夏は変なものを見たかのような視線で文華を見た。
「凛夏様、部隊の再編終了いたしました。」
「そうか、うむ。では、出陣するぞ。それでだが、文華はどうする?あの鬼柴田とやって無傷ではないだろう。」
「だいじょうぶじゃよ。ちとらがたすけてくれたからのう。」
そういってよりいっそうくっついてくる。
「ちょ、ちょっと文華。そろそろやばい。凛夏の目がやばいって。なんか光がないよ!」
それから、なんとか文華を離し千虎は凛夏の横に馬を並べた。
「それで、敵の規模はどれくらいなんだ?」
「2千ほどだと聞いている。」
「2千か、それにあの鬼柴田がいるとなると結構厳しそうじゃな。」
当たり前のように千虎の横に馬を並べた文華が言った。
「兵力はさっきの攻撃で5百ほどになった。」
「4倍くらいか・・・」
そんなことを話しているうちに先頭の部隊がもう交戦状態になったらしい。
「文華、凛夏をお願いします。俺は加勢に行って来ます。」
「わかったのじゃ。」
千虎は馬を走らせ、ある者の姿を探していた。
そいつはすぐに見つかった。
人が吹っ飛ぶのだ。
「いた。」
千虎はそちらに馬首を向けかけた。
千虎がそいつに近づいたときには回りに味方の者がいなかった。
そこだけ戦場から切り抜いたかのように人がいない。
いるのは、柴田勝家・・・と女の子だけだ。
「む、さっきの桃!」
「百神千虎な。あと、たぶんだと思うがあんたの中では果物のほうを思い浮かべているだろうけど、俺の名前は百に神と書いて百神だからな。」
「そ、それくらい、わかっている。」
あー、あれはわかってなかったときの言い方だな。
脳筋って呼ばれてる俺の知り合いがよくごまかすときにああいうかんじになるからわかる。
「まあ、いいや。それで、そちらの女の子は?」
「ふん。聞いて驚け。こちらにいるのはこの反乱の頭領である織田信勝様だぞ。」
そうは言われたものの千虎は半信半疑だった。
馬鹿なふりをしていて、実は策があるかもしれない・・・
「もう、かっちゃんの馬鹿!それは言わないでって言ったでしょうが。ばれるじゃない。」
という、推測は女の子自身によって砕け散った。
「あんたら、二人そろってお馬鹿さんだな。そっちの勝家は敵に頭領がすぐ近くにいることばらすし、そっちの女の子、頭領ってことは信勝ちゃんかな?は自分ではいそうですって答えるし・・・。俺的には凛夏のほうが聡明に見えるんだが。」
「むむむ、おい桃!」
「百神な。」
「桃、お前私を侮辱するなら首を切るぐらいで許せるが、主君を侮辱されて黙ってはおれん。」
「かっちゃん。」
信勝ちゃんは感動したかのように目を潤ました。
「その罪、私との一騎打ちでないと許さんぞ!」
「かっちゃん・・・」
今度は別の意味で目を潤ました。
「それ、罪軽くなってない?」
「そんなことはない。私と戦えばすぐには死なせんからな。首を切られて、すぐに死ぬより重いに決まっておるだろう。」
そう言って、勝家が斬馬刀を構えた。
「なるほど。」
俺もそれに答えて、刀に手を置く。
「うおぉー!」
戦いの火蓋は、勝家が突っ込んできたことできって落とされた。
(-50,73,38)から(68,-42,-22)に向かっての斬線。武器の厚さは5cm、長さは124cm。
千虎は一瞬にしてその斬撃を見切り振り下ろしてきた斬馬刀をかわし、刀に力を流し込む。刀が浅く発光した。
それを勝家が振り下ろしてきた斬馬刀の根元に打ち込む。
次の瞬間、斬馬刀は根元からきれいに切れていた。
今のは、体内に残っていた残りの魔力を使って、刀にすべてを切断するという 属性を付与したのだ。
しかし、刀の発光はすぐに消えてしまった。
この時代には魔法に使う魔力や精霊、超能力に使う大地の力など異能の力を使うための源が空気中にないのだ。
そのため、すぐに魔力がなくなり魔法の効果が切れてしまったのだ。
「な、お前。何をした。」
勝家が恐る恐る俺に聞いてきた。
俺はつい癖で使ってしまった最後の魔力のせいで超ナイーブだった。
「んあ?まあ、ちょっと、な・・・」
なので、こんな風に返事が適当になってしまうのも仕方ないだろう。
「かっちゃん。どうしよう。私たち丸腰だよ。このままだと欲望にかられた男共にあんなことやこんなことを・・・」
「しかし、私にはほかには得物持ってきてないですし。」
もうちょっと、鍛錬しないとな。
元の世界では魔法などに頼りすぎて技術のほうがおろそかになっていたなと感じ、いい機会だと自分に言い聞かせやっといつもの元気を取り戻した。
「んで、そこの二人。何で凛夏を裏切ったの?」
俺がそう聞くと、密談を切り上げて涙目でこちらを見てきた。
「えーと、言ったら助けてくれるの?」
信勝ちゃんは目をキラキラさせて聞いてきた。
悪い子には見えないんだよなー・・・
「理由にもよる。」
「えっとね、実は私は凛夏お姉ちゃんの不安分子を取り除こうと思ってたの。凛夏おねえちゃんお父様のお葬式で聞いてると思うけどやらかしちゃったから、家臣の中にはそんな凛夏お姉ちゃんに不満を持って反乱を起こそうと思っている人が多くいたの。だから、私が反乱を起こせばそれに乗じてみんなこちらにつき、反乱を起こそうと思っていた人たち全員をあぶりだすことができる。しかもそれを収めた凛夏お姉ちゃんは家臣たちにお姉ちゃんの凄さを知らしめることができる。そして、そのために一役買った私は凛夏お姉ちゃんにほめて貰える・・・と思ってたんだけど、凛夏おねえちゃんが反乱を起こしたもの全員処刑だって言ったという情報を聞いて・・・。」
「なるほど。この反乱も凛夏のためにやった反乱分子のあぶり出しだと。」
「そうです。そのことは私が保証します。晴様は凛夏様のことをとても慕っておいでです。凛夏様に取って代わってなど思うはずがありません。」
「ふむ。」
「「・・・・・・・・」」
「わかった。あんたたち悪い人には見えないし、嘘を言っているようにも見えない。信じてやる。ひとまず、ついてきてもらえる?」
俺がそう聞くと、二人とも勢いよく首を縦に振った。