最初の日
今世界では第6次世界大戦が起こっていた。
世代交代をするうちに強くなっていく人間、どこまでも発展し続けている多種の分野での技術、数百年前に発見され、近代やっと実用化に成功した魔術、超能力などの異能の力。
それらを使ってより多くの領地を求めて戦争をする戦の絶えない時代にはいっていた。
世界はそして俺、百神千虎は今追いかけられていた・・・
「おい、虎!待てーーー!」
後ろからおっかない俺の麗しきお義姉さまが殺気を振り撒きながらそういって走って追いかけてきた。
しかも、その後ろにはまあ、いろいろと関係がある女の子が5人くらい、同じような感じで追いかけてきたいる。
はっきり言おう。俺は無実だ。今、お義姉さまを含めた女の子が追いかけてきている理由はさっきあった野戦で捕虜にした女の子が怪我をしていてそれを看病しながら仲良く話をしていたらいきなり襲われたのだ。
「おい、待てって言ってるだろーが!」
ついにお義姉さまは銃(もちろん麻酔弾である・・・と願いたい)をぶっ放してきた。
またまた、はっきり言おう。俺超ピンチ。
どれほどかと言うと、追い詰められて、近くに見えたお地蔵様に祈ってみたりするくらい
「そ、そこのお地蔵様ー。俺を助けてーーーー!」
そして俺は光になった。
光が収まると、銃撃がやんでいた。
「お、ほんとに助けてくれた・・・。」
万が一もあるのでそのまま警戒しながら周りを見渡してみる。
周りには銃声はおろかお義姉さま達の姿もなかった。
俺は安心したのか自然とため息が出た。
力が抜け自然と下を見る形になる。
すると目の前には美少女がいた。
そのまま二人とも見つめ合いながら固まることしばし、ようやく今の格好がやばいことに気づいた千虎が飛びのくようによける。
「ご、ごめん。」
美少女は砂埃をほろうとこちらをまじまじと見てきた。
「な、なにかな・・・」
俺は美少女にじーっとみられて落ち着かなくなった。
「あ、すまない。いや、珍しい服装だと思ってな。しかも我に気づかせずに忍び寄った。最初はどこかの忍びかと思ったが、忍びがこんな目立つ格好をするはずがないしな・・・、いやもしかしてそれを狙って・・・。だが、敵の忍びならなぜ今我を攻撃せんのだ?うーん、わからん。」
美少女はその後も一人でぶつぶつしゃべりながら考えていた。
俺はさすがにもう帰らないとやばいなと思い、お義姉さまたちが戻ったであろう拠点に行こうとするが、道がまったくわからない。
どうしたものかと思っていると、後ろから2、3度肩を叩かれた。
振り返ると、さっきの美少女がいた。
「それで、おぬし誰なのだ?」
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「・・・百神千虎だ。」
「千虎というのか。それでおぬし出身は?」
こいつ何馬鹿なこと言ってんだ?
俺はそう思いながらも答えることにした。
「何馬鹿なこと言ってるんだ?」
あ、間違った。
「馬鹿か・・・まあ、うつけとさほど変わらんし今はそれよりも・・・。それで、どこの出身なのだ?」
「・・・日本連邦だよ。」
「・・・にほんれんぽう?」
「・・・ん?」
「??」
俺たちは二人して首をかしげた。
俺は恐る恐る聞いてみた。
「お前、馬鹿だろ。」
「確かに我はうつけもうつけ、大うつけと言われているが、空っぽなわけではないぞ。この日の本ににほんれんぽうなる国はないはずなのだ。」
「え?」
「ん?」
またしても二人して首をかしげた。
「なあ?ここってどこだ?」
不安になった俺はひとつの仮定を否定するために証拠となる言葉を聴いてみた。
「お主さんざん我を馬鹿にしておいたくせに今自分のいる場所もわからないとは・・・どちらが馬鹿なのか。まあいい、教えてやろう。ここは尾張国。そして我こそは織田信秀が子、織田三郎上総介信長だ。」
こいつ自分を信長だって言ったぞ。信長ってあの信長だよな・・・。しかもここ尾張だって。尾張なんていってたのなんかすごい昔だぞ。しかもこの二つが一緒ってことはここは世に言う戦国時代。ははは、笑え―
「ねーよ!!」
俺がいきなり大声を上げたのに驚いて刀に手をかけた信長につい反射で手が伸びた。
信長は抜刀しようとする寸前で止まった。いや、止められたというべきだな。
「お主、百神千虎といったな。なかなかやるでないか。どこのものだ?」
そういった信長の声は緊張とこちらを警戒しているものでさっきまでのおちゃらけた雰囲気は霧散していた。
「もう一度聞く。お前は何者で、どこの間者だ。」
俺はこちらを見る真剣なまなざしを受け止め、感じた。
これは相手の心を見通してる目だ。嘘はつけなさそうだな・・・
「・・・わかった。すべて言う。その代わりこの手を離しても抜刀しないでくれない?」
信長は俺の目を覗き込んできた。
俺もそらさずに見つめ返す。
「・・・よかろう。」
そういって信長が刀から手を放したのを見て俺も信長の刀から手を放した。
「まず最初に言っておく。俺はどこの勢力にも属していない。なんてったって今この世界に着たばかりだからな。」
「この世界だと・・・?」
信長が少し興奮をはらんだ視線で次を促してくる。
「ああ、俺はこの世界のものではない。こことは違う世界からあの地蔵によってこの世界に送られたみたいだ。」
「あの地蔵にか?・・・ところで、まさかあのような地蔵にお主も祈ったのか?」
「お前も?あ、なんでもない。」
一瞬、殺気が急上昇したのであわてて聞かなかったことにした。
「まあ、祈ったのは事実だな。俺は俺の世界のこんな感じの地蔵に助けてくれと祈った。そして、光に包まれて、それが収束したらお前の上にいたってわけだ。」
「そんな言い方するでない!」
急に信長が顔を赤くしてそういってきた。
それにしても、さっきお主もってことはこいつも何か地蔵に祈ったんだよな・・・。
俺の世界では織田信長は神も仏も信じない魔王って感じだったような。やっぱ、少し歴史が違うのかな。というか、こっちの信長女の子だし。
「は、はよう続きを言え。」
俺が黙ってるのが落ち着かなかったのか次へと促してくる。
まあ、何はともあれ。顔を赤くした信長
「かわいいな。あ・・・」
そう思ったときには時すでに遅し。ぼふっとなるのが見えた気がした。
信長の顔が一気に真っ赤になった。
「そ、そそそ、そんにゃこと言うにゃーーーーー!」
そういって信長が斬りかかってきた。
それからまた俺は信長を抑えて落ち着かせることにした。
・・・5分後
「すまなかった。」
頭を下げる信長がいた。
「いや、俺も気を付けるよ。」
「まあ、そ、そうだな。でもかわいいって初めて言われたぞ。そ、そのー、ちょっと、ちょっとだぞ、その・・・う、うれしかった。」
そう赤らめた顔で言う信長は―
ちょーーーかわえー!
と思ったが、また言って斬りかかられても(止めるが)困るので、心のうちに押さえつけた。
「まあ、さっき話したと思うが俺はこの世界の人間ではない。さっきこの世界に着たばっかりだから、どこかの間者であるはずもない。」
俺がそう結論付けると、信長は何か考え始めた。
「さっきここに着たばっかりなのだよな?」
「ん?まあ、そうだ。」
「お金とかはあるのか?」
「・・・・・・・」
あるはずがなかった。一応財布はズボンのポケットに入っているがこの世界で使えるはずがない。
「ないな。」
俺がそう答えると、信長はやはりなと言ってまた黙考をはじめた。
「そして、お前はどこの家にも属してないんだよな?」
「あ、ああ。」
今の俺の答えで結論が出たようだ。
信長は俺に向かって手を伸ばして言った。
「我に仕えぬか?給料もそうだが、寝床も付けてやる。お主のその力、浮浪させておくにはちともったいない。ほかの家に与えるのはもってのほかだ。どうだ?悪くはなかろう。」
今度は俺が悩む番だった。
「・・・元の世界に戻らなきゃいけないしなー。」
しかし内心結構、ゆれていた。
さっきの条件もそうだが、信長からときどき哀愁の気配がただよってくるのだ。
ほっとけねーー!
「そ、そのだめか?元の世界への戻り方は我のほうでも探してみる。だからおぬしが元世界に戻るそのときまで我と一緒にいてくれぬか?」
上目遣い(故意でなく俺のほうが背が高いので必然的にそうなる)+潤んだ目(これは・・・なんだろ?えーと仕様だ。そういうことにしうよう。)でそう言ってきて、俺にはなすすべなかった。
「わかった。元の世界に変える方法が見つかって、帰るその日まで俺はお前を支えてやる。」
またまた信長の顔が赤くなった。
「お、おけい。存分に忠義に励め。」
「ああ、絶対に裏切ったりはしない。お前を悲しませもさせない。だから!だからもう悲しそうな雰囲気出すな。約束のその日まで俺は何があってもお前を守って、支えて、時には諫めて、そして笑いあってやる。だから前を向け!そして堂々と進め。そうすればみんなお前についてきてくれる。そしておれがついていってやる。」
少し気障なせりふで、少し恥ずかしかった。
俺はやけになって信長を見ると、 信長は俺の言葉を聞いて信長は涙をこぼしていた。
「ありがとう。本当に、ありがとう千虎。」
そのときの信長の笑顔はとても輝いていて、きれいだった。
「き、きれいだ。」
ゴスッ!
信長が真っ赤になって振り落とした刀の鞘を笑顔に見とれていて回避もなにもできずにくらい意識が途切れた。
目を覚ますと頭がやわらかいものにふれていた、というか乗っけられていた。
目の前にそれなりにある信長の胸と心配そうな顔、そして頭の下の柔らかい感覚。たぶん想像通りだろう。
「あ、起きたか。その、すまなかった。つい恥ずかしくなってやってしまった。」
「いや、気にしなくてもいいよ。そんなことよりも俺的には今状況のほうが気になるんだが・・・」
「この格好のことか?いやなに、硬い地面にこぶのできた頭を乗せるのは気が引けてな。こうして、我の足に乗せていた。い、いやだったか?」
「いえ、とてもうれしいです。」
つい敬語になってしまうほどだ。
「千虎が起きたことだし、そろそろ行くとしよう。大丈夫そうか?」
誘惑のひと時だったが俺は信長のやわらかい太ももから頭を離し、立ってからうなずいた。
「ああ、大丈夫だ。」
「そうか。では行こうか。」
そういって信長は歩いていった。
そこにはさっきまで感じていた哀愁はなくなり、堂々としたものだった。
「なかなか堂に入ってるじゃん。」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでも。それより。」
「なんだ?」
信長がすっかり赤くなった空の下で夕日を背に振り返った。
「これからよろしく。我が殿。」
信長派その言葉に驚いた顔をして、言ってきた。
「・・・千虎、頭の打ち所悪かったのか?」
本気で心配されてしまった。
「どうしたのだ急に。」
「なんでもないよ。」
そういって、恥ずかしかった俺は信長を追い越して駆けていく。
「ありがとう。そしてよろしく千虎。」
信長のそのささやきは小さい声だったため千虎には聞こえなかった。
何も知らない千虎は黙々と進んでいく。
そして道を左に曲がり―
「千虎、そっちじゃないぞ。こっちの道だ。」
道を間違えた。
時間がたって少し頭が冷えた千虎は今度は信長の隣に並んで、今度は一緒に進んだ。