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第 2 話  奴隷

 さあ、冒険――じゃなかった家出の始まりだ!


 俺はフィールドを駆けだした。


 しかしすぐに疲れたので徒歩に切り替える。


 先は長いし無理せずゆっくり行こうと思う。


 しばらく街道を歩いているとゼリーのような物体が横切って行った。若干びびりつつもすぐにいなくなったのでホッと胸をなで下ろす。


「あれがスライムか……」


 いきなり襲いかかってこなかったところをみると、モンスターなんて騒がれてはいるが野生動物とかわらないのではなかろうか?


 魔王の配下と教えられはしたが、野放しにされているところを見ると統制などとれていない気がする。凶暴な野生動物にエンカウントする確率が高いというだけで、注意をしていればなんとかなりそうだというのが俺の見解だ。


 そんなわけで注意して進むことにする。


 途中で野生動物を襲うモンスターもいたし、野生動物の群れに蹂躙されるモンスターの姿も見かけた。大自然とは恐ろしいものだ……。


 適当に休憩を取りつつ歩いていると悲鳴が聞こえた。


 やるべき事はわかってる。状況確認と素早い逃走、この二つだ!


 俺は近くの岩場にのぼり周囲を偵察する。


 ――見つけた!


 街道からそれた原っぱに横倒しの馬車と人の群れを確認する。でかいカラスとでかいウサギとでかいカエルに襲われているようだ。人の群れがどんどん倒されていく。劣勢なのは間違いない。


 よし、逃げよう!


 ゼリーならまだしもガチモンスターに敵うはずがない。断言できる。前世で喧嘩すらろくにしたことがない平和主義者の俺には荷が重い。


 などと考えていたら群れから逃げ出してきた人々がこちらに向かってきた。

 しかも悪いことに高いところにいた俺をみつけて助けをも求めているではないか。


 なんてことだ。今更逃げづらい……。


 それでも逃げるべきなのだが、泣き叫びながら助けを求めている少女たちを置き去りにする外道にはなりたくないという葛藤が俺の判断を鈍らせた。


 案の定、獲物を追っかけてきたモンスター共に見つかった。


 もはや逃げたところで回り込まれるのがオチだろう。


 戦うしかないか……。しかし武器屋で武器を買いそびれた俺は丸腰だ……と思ったらあるじゃないか。俺の腰には頼もしい味方が!


 ひ弱な店主がトロールの血を引くと噂のある3メートル級の奥さんを血祭りに上げたバールのようなものが!


 俺はバールのようなものを引き抜き正眼にかまえるとモンスターを見据えた。

 やっかいなのは空を飛べるカラスか……。


 ならば――!


 こちらに襲いかかってきたカラスめがけて飛翔するとバールのようなものを振り下ろした。


 決まった! と思ったのは俺だけで、素人の剣技ではタイミングなど合うわけもなく、そのまま重力に引っ張られて落下した。

 しかしそこには遅れて到着したウサギの姿があり「いま攻撃かわされたじゃん!」と言いたげな非難顔にバールのようなものが容赦なく叩き込まれる。


 額から生えた立派な角を叩き折り、それでも勢いは止まらずにウサギの頭蓋を粉砕した。顔面を陥没させられて絶命したウサギがどさりと倒れる。


 意図した攻撃ではないが……やったぜ俺!


 油断せずにカラスの姿を追うと、仲間を置き去りにして遙か遠くへ飛んでいった。


 潔いカラスだ。見習いたいものである。


 少女たちがへなへなと倒れ込む。介抱してやりたいところだが、まだ馬車の方ではモンスターが暴れている。バールのようなものの攻撃力に自信をもった俺は勇者気分で馬車へと駆けた。


 俺はとくに自分を鼓舞するとか注意を引きつける理由で叫ぶこともせず、そそくさとでかいカエルに近づいた。


 でかいカエルは長~い舌を手足のように動かして、少女の肢体を絡め取ったりなめまわしていた。なんてエロいモンスターなんだ!


 俺はその所行に魅了された。たぶんカラスに突っつかれて破れたであろう服はほとんど残っておらず、全裸にちかい少女が二匹のカエルに強姦されている。少女が「イヤ、イヤ!」と叫ぶたびにカエルは満足そうに目を細めるているのだ。カエルの分際で言葉がわかるのだろうか?


 そうこう考えながら見入っていたのだが、少女の股に舌先が突っこまれようとしたところで正気を取り戻した俺は、隣にいるのに完全に無視されていることをいいことに、バールのようなものをカエルの脇腹に打ち付けた。カエルの脇腹は思いのほかやわらかく、勢い余って振り抜くと、白目を向いて巨体が倒れた。


 エロいことに夢中だったもう一匹も異変に気づいて振り返るがすでに遅い。俺はがら空きの脇腹にバールのようなものをお見舞いしてやった。「ゲゴッ!」と叫び絶命するカエル。出会った世界が違っていれば友達になれた気がした……。


 冗談はさておき、俺の初戦闘を勝利した。さっそく被害者を介抱してやろうとして近づくと、あられもない姿のままボロボロと泣き出した少女にしがみつかれた。不謹慎かと思うが役得だ。


 もう大丈夫と安心させるように背中をさすってやる。やわらかいお尻にふれてしまったのは不可抗力なので許してほしい。


 とりあえず落ち着くまであやしていると二人の少女がおそるおそる近づいてきた。


 なにをそんなに脅えているのかと思ったが、よくよく考えればわかることだ。少女の裸体とお尻の感触に意識を奪われていていて気がつかなかったが、俺の周囲は実に凄惨なありさまだった。


 エロいことに夢中だったカエルはともかく、カラスとウサギはさんざん暴れ回ったようで馬車のまわりは血の海だ。これまたミルクのような少女の匂いに意識を奪われていて気がつかなかったが、辺りは鉄錆の臭いで充満していた。


「心配するな。モンスターは全て俺が片づけた」


 ちょっとかっこつけてみたら二人の少女もようやく安堵したようだ。


「危ないところを助けていただきありがとうございました」


 礼儀正しく頭を下げる少女と軽く会釈する少女の姿を見て彼女たちの生い立ちに気がついた。


「君たちは……奴隷か?」


 奴隷という言葉に反応を示した二人は黙って頷いた。

 よく見れば馬車のまわりに倒れている死体も一様にみすぼらしい身なりをしている。どうやら奴隷商人の馬車だったようだ。一人だけ装飾を施された衣服を着ているのが商人だろう。自らの血で汚れた服を脱ぐこともできず絶命している。


 少女に聞くと護衛もつけずに単独走破しようとしたケチな商人らしい。弱肉強食のこの異世界では自業自得だろう。


 俺の胸の中で泣いていた少女もよくやく泣き止んだようなので離そうとしたら……離れてくれなかった。がっちりホールドされている。背骨が痛い……。


「あの……そろそろ離れてくれないか」

「…………」


 無言で力を込められる。やわらかい胸が当たってうれしいのだが、どうしたものかと困っていると、礼儀正しい少女がいましめてくれた。しぶしぶ裸体が離れていく。ちょっと残念だ……。


「申し訳ありません冒険者様」


 家出中の平民なのだが再び深々と頭を下げられてしまい言い出しづらい雰囲気だったので彼女の勘違いはスルーしておく。これ以上勘違いの上乗せをされてガッカリされるのも嫌なのでそうそうに立ち去ることにした。


「お待ち下さい!」


 礼儀正しかった少女が慌ててすがりついてきた。


「私たちが見ての通り行く当てもない奴隷です。ここに置き去りにされては助けていただいた命も無駄になります。どうかお助け下さい!」


 勝手な言い分だが必死なのだろう。またモンスターに襲われる危険もあるし、生き残れたとしても主人が死んだ奴隷は野良犬のような扱いをうけると聞いたことがある。国に回収されて再び売られるか、もしくは……処分されるか。この年齢の少女なら殺されることはないだろうが……。


「お願いします! 私たちを拾って下さい!」


 どうしたもんか。この場合なら拾った俺に所有権が移るので法的に問題はないのだが、家出中の俺に三人の娘を養ってやる余裕はない。奴隷を働かせるという手もあるが、少女にできる仕事なんて……限られる。


「町まで一緒に行こうか」

「――ッ!」


 今度は離れたばかりの全裸少女に背中から抱きつかれた。頑張って胸を押しつけてくるところが健気で泣けてくる。

 そっけない少女はダッと近づいてきたが俺の手だけ握ってボソボソと呟いた。「助けて」と聞こえてまた泣けた。仕方がない……。


「今日からお前たちは俺のものだ!」


 見上げた少女たちの顔が輝いていた。そんなにうれしいのだろうか?

 主人としてプレッシャーを感じずにはいられなかった。


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