不運故に死亡
記念すべき1話目。 前振りというか、導入というかプロローグです。
本格的な話は2話からです。少しでも良いものにしていきたいとおもっているのでよろしくお願いします。
あれはいつものアルバイトからの帰り道だった。
一匹の犬が車道に飛び出し車に轢かれそうになっていた。
飼い主らしき人がすぐ近くで大きな声を出していたのを良く憶えている。
僕は気がついたら走り出していた。
なぜ走りだしたのかはよくわからない。
とにかく無我夢中で走った。
そして犬を抱えてジャンプ、危機一髪で回避、するはずだった。
しかし、その犬は車が迫ってくるのを事前に察知し、それを僕の目の前で避けてみせたのだ。
何もないところに突っ込んでいく僕、そしてそこに迫って来るのは鉄の塊。
僕は自分よりはるかに重い鉄の塊に跳ね飛ばされ、コンクリートに叩きつけられた。
「がぁ……はっ!」
今まで受けたことのない、例えようのない痛みが脇腹から全身に伝わった。
意識がどんどん薄れて、死を覚悟した僕は今までの人生を思い返していた。
子供の頃からずっと運が悪く、ついていなかった。
何かすれば争いごとや、面倒ごとに巻き込まれる。
信号は僕が渡ろうとすると赤になり、遊びに行こうと外に出れば雨が降る。
バイトでも色々とあったし、僕がレジをやっていた時に強盗が来たことも多々あった。
レジにお金が少ししか入っていなかったことに腹を立てた強盗に自分の財布まで盗られたこともあった。
こんな事は、僕を襲った不運のなかのごくごく一部分であり、まだマシな方でもある。
死にかけた事も何度もある。
交通事故、通り魔、大地震、etc……
要するに、僕は今まで生きてこれたことが不思議なくらい運が悪かった。
まさに前途多難、僕の人生は終わりの見えない障害物競走だった。
大変な人生だった。
良いことなんて何一つなく、定職にも就けず、彼女ももちろんいなかった。
犬の鳴き声が聞こえる。
さっき助け損なった犬だろう。
しかし、どうせ死ぬんだったら助けさせて欲しかったなぁ……
そしたら、犬を助けて死んだ男性として新聞くらいには載ったかもしれないのに。
そしたら、僕の人生も少しは報われただろうに。
僕は、轢かれかけていた犬を助けようとして車に突っ込んでいったが、轢かれて死に、犬は自力で逃げ出した。
うん……格好つかないな。
ネットとかでネタにされて笑われるんだろうな、きっと。
まぁ、僕らしいといったら僕らしいし、いいや。
もし、生まれ変われるんだったらやる事なす事うまくいく、そんな幸運な人になりたいなぁ。
そんなことを考え、僕は意識を手放した。