出会い
光が段々収まってくる、それを名残惜しく思う自分の美希は驚く。
血の匂いが鼻に着く血の臭いの他に酸っぱい臭いもする。
思はず顔を顰める、なんなの?この臭いは?
生まれて初めて嗅ぐ臭いだが不快な臭いだとわかる。
臭いの元……光が収まって行くところには一人の少年が倒れていた。
全身真っ赤な血を纏い、口には形容しがたい何かが付きどころどころに黒色や美希とは違う黄色っぽい肌が見える。
美希は汚いと一瞬たりとも思わず急いで少年の体に触る。
「暖かい……息もしている。よかった……」
自分の手が服が血に汚れようと気にせず少年の体に抱き着く。
「誰か!誰か!!居ませんか!?」
生まれて初めて大声を出す、自分の喉がこんなにも大きな声が出る事にびっくりするがすぐに誰かを呼ぶため大声を出す。
廊下から数人の足音が荒々しく聞こえてくる。
「どうしました!?姫様」
護衛役の女騎士が緊張に強張った顔で扉を開ける。
「な!?」
瞬時に部屋を見渡し思考が停止した、戦いでしか嗅がない濃厚な血の匂い、酸っぱいゲロの匂いそして血濡れになった姫様と自分と同じぐらいの少年、それを抱える姫様と何時もにこやかにしている姫様が目を赤くして焦った表情。
「どうしたんですか!?」
後ろの方では侍女、衛兵などが来る。
「助けて!この人を……この人を!助けて!!」
初めて見る姫様の取り乱した態度、その事にいち早く思考が戻った騎士が叫ぶ。
「此処は私が何とかしますから!皆様は言ってください!後で報告します!!」
そう言い、少年の肩を持つが姫様はもう片方の腕を放そうとしない。
「私の部屋に」
美希も何でこの少年が大事なのか分からなかった、一目惚れという線を考える。
この少年には生きてほしい、ただそう言う思いだけが美希を駆り立てる。
縁のなければ会った事も話した事もない少年なのに酷く大事に失いたくないという思いだけが強く心に留まり訴えてくる。
「貴男は誰なの?」
黒い髪に黄色が少し入った肌、多分歳は一緒ぐらい。
「美希……」
自然と美希は少年の黒髪を撫でていた。それを見た同い年の親衛隊にして影の親友でもある優衣が心配声で自分の名前を言う。
今は美希の部屋にベットに寝かせた少年とそのベットに腰かけている自分そしてその隣に座っている優衣だけだった。
「どうするの?それに何者なんだ?」
親友が美希を心配して聞いてくる。
「分からない……でも、書庫に在った勇者召喚の本を見てやってみたの」
「勇……者?本当に?」
親友である優衣でもそうなのだ、勇者……それ程に勇者という存在はあいまいでおとぎ話の住人なのだ。
「いや……現にこの少年の胸に奇妙な刻印があった」
「そうなの……そして私の胸にも」
「ちょっ……う」
美希が無造作に服を脱ぎ白い肌を晒しながら胸を優衣に見せる。
それに優衣は真っ赤にしながら目を反らすが見ないと着てくれないと分かり見る。
「同じ刻印……とりあえずこの少年が起きてからだな」
「そうね」
優衣は心の中でこの少年に嫉妬と僅かな興味を持った。
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なるべく早く次のを書く努力はします。