夕日の中の、
テスト週間なのに書いてみました(´ω`)
甘々なお話が書きたいなー、と思って
失恋した。
一言で表すとそんな感じ。中学校の時から好きで、好きで好きで好きで。でも終わりはあっさり。信じられない、の一言を呟いてみる。
思えば、毎日が楽しかった。あいつを見るだけでときめいて、顔が赤くなって。同じ高校に入れたのが嬉しくて、しかも二年連続で同じクラスになれて。いつか言おうと思ってた。
「好きだ」って。
「先輩、俺に押し倒されてるのに余裕ですね。何考えているんですか?」
……皆さんこんにちは。高校二年、平凡な女子高生の野田ひまわりです。本日、中学校の頃からの思いの人、辻本智に失恋しました。いやぁ、まさか谷さんに取られるとは思ってなかったです、はい。
「先輩」
そして重要なのがこいつ。辻本智の後輩でサッカー部一年代表の笹間光輝君。辻本と仲が良くてちょっと話した事はあったけど、こんな押し倒されるような関係ではないはず。おかしいって笹間君。私なんか押し倒さなくても、君の顔ならよりどりみどりで選べるって。
「笹間君、何でこんな事してるの」
「分かりませんか?」
「うんちょっと分かんない。ここ教室。誰かに見られたら噂立っちゃうよ?」
「別に良いですよ。寧ろ立って欲しいですね」
駄目だこりゃ。
いまだに掴まれたままの自分の両手首を見ながら、時計を見る。
現在4時ちょい過ぎ。かれこれ5分間はこのままの体制なのか。しかも笹間君、ずっと私の顔見てるし。あのー、何か恥ずかしいんですけど……。
穴があくんじゃないかと思うくらいに見つめてくる笹間君の視線は熱っぽく、正に『雄』というオーラを出している。おお、身震いが…………。
と言うかおかしいんだよ。失恋して教室で一人泣いてたら何故か笹間君が来て、びっくりして動けなかった私を力任せに机に押し倒した。それだけでもうおかしいのに、耳元で囁かれた。
『先輩、好きです』
と。
いやね、確かに相手はイケメンだよ? サッカーも上手くてモテモテらしい(辻本情報)し。押し倒されたいって思ってる女子は一体何人いるんだか。だけどタイミングが悪かった笹間君。失恋の直ぐ後に他の人について行くほど遊び人じゃないし、自慢じゃないけど私は結構一途だ。例え叶わないとしても、辻本の事はまだ諦めきれない。
だからごめん笹間君! 私は君を好きになれない!
「笹間君、ごめん私、」
「黙って下さい」
振ろうと思って声をあげると、上から不機嫌そうな声が降ってくる。うわ、ヤバい今怒らせたら私おそわれそう。やだやだまだ17なのに貞操失うとか。しかもここ教室だし。
「えっと笹間君。まずは落ち着こうか。何で私を押し倒した」
「好きだからです」
「ごめんそっからわかんない」
「そうだと思います」
目の前で顔色ひとつ変えずに即答した笹間君は、私の手首を掴んだ手を緩めた。逃げれるか、と思い動いたそのとき、彼の顔がずん、と近くなる。え、待って近い近い。動いたらキスでもしちゃいそうな距離なんですけど。
「この距離何」
「黙って下さい、俺だって男ですよ。襲いたくもなるじゃないですか」
縁起でもないこと言うなーっ! ヤバい、ピンチだよ私。
半分覆い被さるような体制の笹間君は、顔の位置を少しずらして私の首筋の匂いを嗅ぎ始めた。それと同時にぞわ、と妙な汗が噴き出す。
「いいいいやぁ笹間君何してくれちゃってるの止めてぇぇ!」
「先輩、甘い匂いがするので大丈夫です」
「それ私の中での安心ボブギャラリーに入ってない! 止めて止めてぇぇ!」
すんすん、と微かな音を立てて匂いを嗅ぐ笹間君。ああだめだ。もう全身が汗でびっちょり。こんな事初めてだよ。服の臭いかぎあうのは友達どうしでやってたけど、異性でしかも首筋って飛びすぎ。
「先輩……」
耳元で囁くなぁぁ!
明らかに挙動不審になった私に、笹間君はにこりと王子様スマイルを繰り出し、
「好きです」
何度目か分からない告白を囁いた。
頭の中に、辻本の事が消えていたのは内緒で。
窓から見た校庭は夕日のせいで真っ赤に染まっていて、それでも運動部の声がまだ木霊している。今日はまだまだ、これからだ。