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【ひと・よ――― 夜の内、】









 さて、何度でも語ろう。



 竜族のリアディは、大蛇のエンと落人のヨーコが拾った。

 彼らには害意はなく、善意しかなかった。

 竜卵のなかの彼が、ソレを知っていたのか否かは誰も知らない。

 ただ誰もが知っていることは、彼が彼であるためにその家族は必要だったということだけ。






「さあ、今日はファンリーと語るわよー!」

「…ヨーコ」


 場所は、竜族の城と呼ばれる長の住まいの一角。

 今回、客人扱いでやってきていた蛇族は大蛇の妻子、ヨーコとリアディが与えられた客室だった。

「たまには女同士の会話しようよ~。お母さんも楽しいけど、やっぱりたまには恋バナしたいよ」

「……いえ、その場合の話の恋バナの主役は私しかいないのだけども…」

「だから、それが訊きたいのよ!」

「………あいかわらずの理不尽ですわね」

 ため息ついているのは案内人のファンリーである。

 城に自室の一つくらいは確保している大身の一人である彼女だが、今回は大切な友人にして眼の離せないトラブルメイカ―であるヨーコとリアディを思って一緒に客室へ泊ることを選択した彼女は、なかなかイイ女である。

「ですけど、さすがにリー坊にまで巻き込む気はありませんわよ、わたくし」

 ましてや、自分の恋話など。

 さてもかくやとばかりに、幼いといえども男の性をもつリアディに自分の恋を語る気はさらさらないと告げるファンリーの気持ちはよく分かる。

 女同士であれば些少のあけすけない話も抵抗はないが、今後の事を思えばそれは遠慮したい。

「大丈夫。今日はリアディくん、さっさと寝かすから」

「………」

「ヨーコさんって…」

 理不尽。

 いい笑顔で述べるヨーコの側では微妙な表情の少年がいた。

 その後、美味しい夕餉も終え、寝る準備が終わったと同時に布団へと連れて行かれた彼はというと、

枕元でじっと寝るまで見つめられながらなんとかいつもより早い時間の就寝が出来た。

 ヨーコさんひどいというよりも、怖い。

 彼の心境はまさにそれである。


「…で? で? 最近付き合ってるのはどんな人なの? 幾つ? かっこいい? 付き合ってどれだけ経つの?」

「 …いえ、まあ。―――今の相手とはちょうど3月ほどの付き合いで…」




 眠りに就いた後の続き部屋での姦しい女たちの会話は、幸い少年リアディの夢には出てこなかった。










「…あ、れ?」

 むくり。

 よく寝たという熟睡感で身体を起こしたら、実はまだ夜だった。

 よほど寝具が身体にあっていたのか、それともただいつもよりもはるかに早い就床時刻に起床時刻がずれこんだのか。

 どちらにしても、二度寝するには無理のある状態だった。

「…ヨーコさん?」 

 子供用のベッドの横にある大人用のベッドを覗いてみたところ、気持ち良さそうな顔で寝ている女性が二人。

「………ファンリーお姉さん、ごめんなさい」

 追加で用意させていたファンリー用の予定だったベッドは無用で終わったらしい。

 あの体勢を見る限り、酒で潰れたヨーコをベッドに運んだら、そのまま胸に抱きかかえられたというのが正解だろう。

 ヨーコさんって、抱きつき癖があるんだよなー、特に寝るときとか。

 経験者でもある養いっ子は心の中で呟いた。

 その後で、彼が部屋の外へと歩き出したのはなぜだったのか。


 ただ、何かに呼ばれた気がしたのだと。


 ――― 彼は、未来にこのときのことを振り返る。




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