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【ひと・ふた――城、】








「はじめまして。蛇の落人…いや、大蛇の落人・ヨウコどの」

 そして、竜族のリアディ。





 城の玉座に座る人の名をバランというらしい。

 目の前で笑って見せる人型の竜族、バラン・ロウ。――彼が、現竜族の長。

 少し頬のこけた彼は、よく似た顔の青年を傍につけたままでリアディとヨーコへと声をかけた。

「はじめまして、竜のバランどの。お逢いできて光栄ですわ」

「…はじめまして」

 母を後ろに庇いながら言葉少なく挨拶したのは、幼いながらも男の子だったリアディの意地である。

「ほほ、これは孝行な息子どのじゃな」

 その姿を見て呟いたのは、赤髪の青年姿の竜族。

「ヨーコとエンさまの御子ですからね」

 応じたのは、父母の友人であるファンリーさま。

「……」

 バランの後継か、長と同じ銀髪の年若い青年は沈黙して控えるのみだ。

「よい性質の子じゃ。これならば、特に問題はなさそうだな」

 長が語る。

 ……何故人を呼んだのかをまず教えろ。

 いらっとしたのは幼いリアディだった。

 遠い道のり、しばしばかりの休息を終えて、やってきたら長々とした社交辞令。幼い身には、それは辛かろう。

 ちなみにリアディが城へ招聘された理由については、付き添いとして竜の城までついてきて下さったファンリーどのには【内諸ですわ☆】としかいわれていない。

 ……エンは予測がついているようすだったが、何しろあのへたれなお父上殿である。予測といえども断言する勇気はなかったようで、【……そのうち、わかるよ。リアディ……ははは…】との答しか与えてはくれなかった。

 件の日の夕食で窒息しかけて以来、地味にリアディを家の外へ出そうとしなくなった理由についてもいまひとつ不明なままだ。

 あれか、箱入り息子にしたかったのか、まさか今更。(反語)

 誰とは言わないが、現実的な義母の躾とかとかによって、すでに勘定とか利益とか濡れ手に粟とかそんな言葉を身につけているリアディがいまさらきらきららめらめ箱入り坊ちゃんになれるはずがないことは理解されているはずだったので、とにかく文学的にその気もちを表現してみたリアディだった。

「リー坊、遠くを見つめるんじゃありませんわ」

「ぐえっ」

 うっかり、ここ最近の義父の挙動不審を思い出していたら、ファンリーさまに力一杯、脳天をはたかれた。

「褒めた端から意識をとばしてどうするんですの。不甲斐ない」

 笑顔に怒りが透けて見えた。

 これだから、家族同然の付き合いの小母さまは始末に悪い。

「やあだ、ファンリーったら。そこがリアディくんの可愛いところよー。エンとはまた違う可愛さがあるんじゃない!」

「ヨーコも天然の惚気はいらないわよ!」

 頭上のママ様ズが怖い。

 ヨーコさんは、ファンリーさまが大好きなのでこの人がいると警戒もなく駄弁りにはいるのだ。

 しかし。


 ……いいのか?


 一応、ここは天下の竜族の本拠地なんだが。




「ほほほ。女子は元気が一番といいますからな」

「仲良きことは善き哉」

「………」


 男たちは素直にそれを見守っていた。


 どうやら、これでいいらしい。


 女尊男卑?


 いえいえ、たんなるへたれです。――――― 大蛇うちの男どもと一緒か、竜族も。








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