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三:まおうさま、お風呂に入る。

 ジャンは女の子を抱き上げて、スクロールに魔力を注いだ。

途端、二人の周りに巻物が無造作にまとわり、青白い光でドームを作り始めた。


 帰還の巻物とは、ダンジョンやフィールドの低級モンスターが低確率で残して行く落し物である。他に王都やそれに準ずる大きな街だと、アーティファクトレプリカギルドに所属する魔術師が作っている事もあるし、魔法使いや魔導師ならば同じ効果の魔法を使う事が出来る。

魔力が少ない者が手軽に扱う事の出来る道具だ。


 効果は自分が一番慣れ親しんだ場所に強制送還する事が出来ると言うだけである。

 指定した場所に行きたいのであれば空白の移動の巻物を使わなければならない。空白の部分に行きたい地名、もしくは思い浮かべた場所の特徴を書き込んで魔力を注げば良い。他はたいてい同じである。

巻物系はほかに攻撃の巻物や補助の巻物等があるが、一般人に出回る率が高いのと認知度が一番高いと言う理由で帰還の巻物をスクロールと呼んでいる。

他の巻物を云う場合、火の攻撃をする巻物であれば火のスクロール等、頭に特徴を持ってくるのが普通だ。


 スクロールを使って出た先は、ジャンの実家であった。すなわちシークウェス家である。

普通貴族が冒険者をしている場合、家族との摩擦があって飛びだしたりするのが殆どだが、ジャンは好きにしていいよと放り出された身であるのでその様な事は無い。家族仲はいたって良好だ。


 ジャンにとっては久々の景色であったが、女の子にとっては初めての光景だ。しかし女の子は「あ!」と短く叫んだ後に、頭部分を闇で覆った。

 初めて見る太陽は刺激が強すぎたのだ。

驚きと未知で占められた心は即座にジャンに伝わった。此処まで来るとジャンも女の子がダンジョンで育ち、外に出た事が無い事に気がついた。

 髪先は焼け縮れ、恐らく邪魔だったから焼いて切ったのであろう。異臭こそしないが綺麗とは言い難い肌。しかし日に焼けた事の無い肌は恐ろしく白かった。

 身体を洗った事が無いはずの女の子だが、生き物としてのレベルが高く世界が栄養を補ってくれている、それと同時に身体に不必要な物の排除も行ってくれているので、病気や汚れとは無縁だ。

しかしそんな事ジャンは知らないので、首をかしげつつ女の子のマントを頭にかぶせるように巻きなおした。


「ジャンジャック様、おかえりなさいませ」


 丁度庭先にメイドが出ていたので、ジャンはこれ幸いとメイドを呼びとめた。


「丁度良い、身元不明の女の子を拾ったんだ。父とジル兄上と爺を談話室に呼んでおいてくれないか」


 身元不明と云う言葉を若干強調しつつ、ジャンは指示を出した。とりあえず変態の称号は免れたい。

初めにあったメイドにそう言い付け、玄関をくぐり、とりあえず風呂場へ急いだ。

他のメイドや執事に頼もうとも思ったのだが、如何せんこの少女は自分より遙かに力が強い。下手したら悪意の欠片も無くスプラッタ、なんて事になりえないとも限らない。


 なるべく害意が無い事を伝えつつ、女の子を風呂に入れた。なにせ体を洗うと言う行為すら知らない子供だ。警戒が強くて気苦労も多い。

害が無い事は伝わったのか、次第に泡や布に興味を示しだした。伝わってくる感情は疑問符だらけ。

何? が一番多く、何故自分が疑問に思うのかまで疑問符を浮かべる始末。

 だがしかし、外に対する適応も早く、もう日の光を浴びてもなんとも思わないようだ。証拠に風呂場から窓の外を興味津々と行った様子で見つめ続けている。


 あらかた体を洗い終えたところで全体的にすすぎ、メイドを呼び付けた。女の子の服をどうするかの相談だ。


「今まで服を着た事が無い見たいだ。何かいい案はあるか?」

「でしたら、動きやすい服がよろしゅうございますね。白のワンピースをお持ちいたします」


 服を着た事が無いと言った後にメイドは不思議そうな顔をしたが、特に尋ねる事も無く仕事を完遂した。

下着のゴムが鬱陶しいような行動に出たが、女の子はとりあえず服を着る事は周りのみんなとお揃いと認識してたのしんだ。




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