十五:まおうさま、到着する。
アイリッシュ・リオルフォンフィールはその日、遊女として王族を相手にした時以上の緊張をもってそわそわとして居た。
それと云うのも今から十年ほど前、魔法陣が唐突に現れて消え去ってしまった自身の腹を痛めて産んだ子供が帰って来たとの連絡を受けたからだ。
本来はシークウェス家と云う、身分だけならば雲の上の人物とのやりとりの予定であったらしいが、我が子はなんと世界の加護を受けているらしく、実力も八つ星相当だと言う。
そのおかげか普段は決してみる事の出来ない中枢の要人達に囲まれて、酷く場違いである居心地と、それだけ注目を集めている我が子との対面に表情には出さないものの酷く困憊している。
しかし今日のメインイベントは自分と我が子の対面だ。
国の要人や貴族達が揃う場所に居るのはやはり場違いな印象が強いが、一対一ならば何度も経験がある。それ故にアイリッシュは仕事さながらの気配りをしながら気丈に振舞って見せた。
「ジャンジャック・オルド・シークウェス殿ならびに保護された少女が到着いたしました。只今パーティーホールに向かっております! 」
伝令役の兵士が小走りで部屋に入り、部屋の中に居た者達に今日の主役到着の旨を伝えた。
今回の会合は、女の子がどのような人なりであるかを王に報告する目的もあり、到着したと同時にコンパクト・スクリーンと呼ばれるテレビの生放送のような魔法が部屋中で展開される。
その為女の子に馬車の中で魔力があっても攻撃しないようにとジャンが言い聞かせていた。知らせずにいてヘタに警戒されたら総てがおじゃんになるので女の子以外はヒヤヒヤしているのが現状だ。
そうこうしているうちに足音が二つ、扉に近い者に聞こえるくらいまでになった。
「五つ星冒険者ジャンジャック、リツァを連れてまいりました」
「まいいましゅた」
子供で云うまねっこ期に突入している女の子は、なんとなく解るニュアンスの言葉をあまりまわらない舌で真似る。
そんな女の子に若干癒されながら、秘密裏に進められている会合が幕を開けた。