わたしのお尻を触っているのは誰?
【読前閲覧注意】
夏の夜の不気味な静寂が生んだ、短くも後引く怪談です。
触覚と聴覚を揺さぶる一瞬の恐怖を、どうぞお楽しみください。
セミの鳴き声が、じっとりと肌にへばりつく蒸し暑い夏の夜だった。
自室の布団で横になり、うとうとしていた私の尻に、ぬっと生暖かい感触が触れた。
「……ひっ」
泥棒か、変質者か。息をのんで硬直する。手のひらはじわじわと動く。その不気味な感触は、湿った革手袋で撫でられているかのようだった。誰だ、私の尻を触っているのは。
怒りと恐怖で震えながら、私は一気に跳ね起き、明かりのスイッチを押した。
「誰だ!」
叫んだものの、部屋には誰もいない。施錠された窓もドアも閉まったままだ。気のせいかと思おうとしたその時、足元から**ジッ……**と低い音が響いた。
視線を落とすと、畳の上に一匹の巨大なアブラゼミが転がっていた。
裏返り、今にも死にそうなセミの脚が、私のパジャマの裾に触れている。
「なーんだ、セミか……」
心底安堵し、息を吐いた瞬間。
耳元で、ぞっとするほど冷たい女の声が囁いた。
「ねえ、そのセミ、私の指なの」
闇の中に消えかけたセミのジジジという羽音が、女の嘲笑い声に重なってひびいた。
夏の恐怖体験、いかがでしたでしょうか。
蝉の足の感触だと思ったものが、実は……という怪談でした。蒸し暑い夜に少しでもひんやりとした涼をお届けできたなら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




