無人島サバイバルRTA
トキは、無人島にいる。
何を願ったのかも忘れている。
砂浜に寝転び、手で自らの顔を覆う。
「うぐ〜〜っ 何を願った? 思い出せ……」
スマホすら持っていない。きつねに連絡をとることもできない。絶望的だ。
無人島とはいうが、近くに水の入ったペットボトルが落ちていたり、ナイフやロープが落ちていたりする。人の気配がいたるところにある。
(人の気配というか、きつねの気配だ)
果物もなっていたり、つりざおが落ちていたり。だが、終了条件がわからなかった。
(まるで某ゲームのようだな……ん?)
ゲーム。何かが引っ掛かった。
「オマエは、いいよな」
近くにあった、たぬきの置き物が喋る。
「いつだって願いを叶えてもらえて」
たぬきの足元にダンボール片がある。黒のマジックで
『1万円稼げ!』
と書いてあり、店で金銭のやりとりに使うトレイが置いてある。
「一万円……」
一万円置けば、終わる気がした。
しかし、財布も持っていない。
「ちなみにこの無人島って貨幣流通してたり、店があったりするか?」
「ああ? あるわけがないだろ」
詰んでいる。
「なあ、あいつって、どうして俺の願いを叶えようとするんだと思う?」
「そりゃオマエ、オマエのことが好きだからだろ」
3日後。
トキはお金を稼ぐことも脱出を試みることもしていない。果物食べてダラダラして生きている。
きつねがぷんすかしてやってくる。
「トキさま! ちゃんとやる気だしてやってくださいよお!」
「ほらな、これが正解」
「え?」
「おまえを呼ぶにはゲームをさぼればいい。おまえが来たからゲームは終わった。俺の勝ち」
きつねはぽん、と手を打った。
「なるほど」
トキは願いを思い出した。
『RTAやりたい』だ。
「にしても……終了条件のバグったゲームに放り込むな!」
トキはきつねの頭に軽くぽん、とこぶしを乗せる。
「おまえってさ、俺のこと好きなの?」
「好きですよ」
「それは、恋愛的な意味なの?」
「……?」
きつねは首を傾げる。
「きつねに、トキさまの好みの女の子に変化して欲しいですか?」
トキはもう一度、ぽん、とした。
今度は強めに。
「いや、願わん」
「あいたっ」
「きつねはきつねのままでいい」
きつねはトキを見上げる。
「願いがろくに叶わなくても?」
「もう諦めた。それがきつねなんだろ」
「トキさま、だーいすき!」
「だけど、勝手に願いを叶えようとしなくて、本当に良いからな」
きつねは、ニコニコしている。
「おい、聞いてるか? おい……」




