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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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46話

 

 この国の音楽はアップテンポな曲が多いようだ。

 開会式で舞姫が奏上した舞のBGMしかり、オペラしかり。

 好き。


「わぁ」


 思わず声が出てしまう。

 どの楽器も難しそうに見えてくるので、式部官から習う時は馴染みのあるクラヴィコード(この国での正式名称は知らない)にしようと消極的に決める。

 クラヴィコードはピアノの祖先と言っていいだろう、とても似ている楽器だ。

 ピアノはバレエ団付属教室で幼年組を教える必須技術になるので猛特訓をした。ピアノが弾けないと本団員に上がる試験に合格できなかったのだ。


 良かった、なんとかなりそうな楽器がこの国にあって!


 曲を楽しみながら、領地へ戻ったあとの勉強時間を考えて過ごした。






 中休憩(なかきゅうけい)になり、ロイヤルボックスから出て細い通路へ出る。

 私たちに割り当てられたボックスの出入り口をケレブスとバエルが警備している。


「ケレブス、わたくしは休憩をしに少し歩いてきます。戻り次第チャクス、マクラスと交代してください」

「はい、お気をつけて」

「いってきます」


 私はカシモラル、チャクス、マクラスを連れて散歩する。

 ロイヤルボックスが並ぶ細い通路を進んでいくと、見慣れた騎士たちが警備している出入り口に差し掛かる。きっとディリエルのボックスだ。

 レラージュに連行されていたので呼び出さない方が良いだろうと判断する。


「ごきげんよう」


 前世のクセで、会釈と挨拶をしながら前を通らせてもらう。

 カシモラルから「会釈は男性の挨拶ですよ」と小言を言われた。

 ロビーに出ると、他にも休憩をしに出ている人たちがそこそこいた。

 その中にマルティムとボルフライを見つける。


「マルティム、ボルフライ。ごきげんよう」

「ごきげんよう、ハーゲンティ様」


 私たちを囲むように護衛が配置につく。

 雑談をしている間にバイェモンがこっそりカシモラルにメモを渡した。


 帰宅したら中身確認しなきゃな。


 雑談を続け、少ししてから気づいた。

 マルティムとその側近たちの胸元に揃いのブローチがついている。


「それ」

「これですか? わたくしが跡取りに決まったことを周知するためと、側近の引き抜きを防ぐ目的のため作らせました。わたくしの瞳に合わせて緑の魔石を探したのです」

「側近が引き抜かれるのは困りますね」

「ええ、なので急いで作った方が良いと両親に言われました」


 爵子に決まってから2週間も経ってないよね?


 私はゴクリと息を飲む。

 ブローチはどう見ても金属細工で、細かなアラベスク模様を(かたど)っているし、側近の人数分というと今目の前にいるだけでざっと10人はいる。

 金型成形品でもあるまいし、この短い期間にこれだけの数を用意できるなんてと驚く。


「魔法道具になっていて、わたくしの書陵官見習いに作らせました」

「書陵官ですか?職人ではなく」

「はい。入学後に書陵科で魔法道具制作において優秀な成績を収めると、王立研究所の研究員になれるそうです。将来、その研究員になりたいと言っている者をがんばって口説きました」


 マルティムの余裕の笑み。


 バイェモンも何か魔法道具作れるのかな?書陵官の中でも一部なのかな?


 マルティムのちらりと動く視線を辿ると、気恥ずかしそうにしている12歳くらいの少年が立っていた。

 彼か。

 おとなしそうな雰囲気があり、社交の場もあまり得意そうに見えない。黙々と仕事をしていたいタイプなのかもしれないと思うと、研究者は確かに向いていそうだ。


「リオウメレ領の鉄ではないので飾りの部分に魔法道具としての効果はありませんが、魔石には身を守るために有効な魔法を込めてもらいました」


 なんでここでリオウメレ?


「リオウメレ領は聖獣クルセドラ様の御力(おちから)により鉄鉱石が魔石に近い性質を持ちます。鎧などは全てリオウメレで生産されています」


 カシモラルが耳元でそっと教えてくれる。

 なるほど、あの不思議な胸当てたちは自領で賄えないのか。

 富国強兵思想の国で重要な素材が1つの領地頼りなことに危うさを感じるとともに、ウハイタリ領もギルティネ様の御力とやらで何か秀でた特色はないのだろうかと少し期待をする。


「魔石がお守りになっているのなら一安心ですね」

「はい」


 私は本当に知識が足りないなと肩を落とす。

 マルティムがそれを見てそっと付け加えてくれる。


「わたくしはこの度、魔法道具を作ることになるまでリオウメレの鉄の特色を存じておりませんでした」


 私はマルティムの顔を穴が開きそうなほど見た。


「ハーゲンティ様の教育が遅れているわけではありません」

「ええ、わたくしも今の会話で初めて存じました。ウハイタリにはどのような特色があるのでしょうね?」


 ボルフライも初めて知ったと言う。

 知らないのは自分だけではないと分かって少し安心をした。

 ボルフライが「良い事思いついた!」と提案をしてくれる。


「マルティム様。次の社交までに、他領の特色を調べてきてハーゲンティ様へ報告するというのはいかがでしょうか?」

「それは良い案ですね! サーガの勉強はしているので聖獣様によって御力に違いがあることは存じていましたが、それがどのように領地へ影響するのかを考える良い機会です」


 ふむふむ、私は私で調べてみよう。

 特にウハイタリは我が家が治める領地なのだから、みんなより詳しくないとあとあと恥をかく場面が出てきそうだし。


「内容も調べ方も、知っていれば将来必ず役に立つでしょう」


 そうカシモラルが言う。

 なるほど、今のうちから練習をするのか。

 教科書と机にかじりついているだけでは分からないことはたくさんある。

 遠足、社会科見学、仕事体験、こういった経験を子供のうちにさせるために王城へ集められているのだろうと推測ができ、前世の小中学校より実践的で厳しいなと苦笑いが浮かんでしまう。

 なぜ“子供の社交”があるのか、なぜ領地内で済ませないのか理由がようやく理解できたので良しとしよう。

 私は自分の側近含め、全員を一度ぐるりと見渡してほほ笑んだ。










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