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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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38話

 

「ハーゲンティ様、先日ぶりにございます」

「マルティム!ボルフライ!……と、オリアクスとバイェモン」

「私たちはオマケですか」


 ディリエルたちが去った後、4人が私の席まで来てくれた。

 元気はあまり無いようだけれど、マルティムが顔を見せてくれたのでホッとした。


「あらいやだ、みんなで来てくれてウレシイワ」

「サヨウデゴザイマスカ」


 バイェモンは相変わらず生意気だ。

 私との挨拶を済ませると早々に、ムルムルに用事があるからと言ってオリアクスから離れた。

 この面子なら少しの間側仕えが離れていても大丈夫だろうと、ムルムルにバイェモンとの交流を許可する。

 情報収集、大事。


「ハーゲンティ様がわたくしを助けるために無茶をなさったと兄から伺いました」


 マルティムがうつむく。

 オリアクスとマルティムの2人が揃って跪きそうだったので片手を上げて制する。


「下を向かないで、よく顔を見せてください」


 事件の日、救護室に運ばれたことは知っているがその後顔を合わせていなかった。

 目立った傷はなさそうだ。それでも、見えないところに痣などができているかもしれない。

 私はマルティムに確認をする。


「けがはない?見えない箇所に残るような傷もないですか?あの日は別々の部屋にすぐ連れていかれたでしょう。マルティムの無事をこの目で確認ができず、ずっと心配していたのです」


 マルティムの目は見開かれ、少し頬が朱に染まる。


「ハーゲンティ様のおかげでわたくしは無事でした。心よりお礼申し上げます。王宮側も気遣って下さり、念のためと衛生兵から癒しの魔法をかけていただきました」

「それは良かったです」


 少し離れていたムルムルとバイェモンが戻ってきた。

 どんな話をしたのかは、きっと帰宅したら教えてもらえると思うのでここでは聞かない。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさい」


 それだけ交わす。

 そしていよいよ、マルティムとボルフライに伝えなければならない。

 マルティムの、お揃いのリボンを紛失してしまったことを。

 今度は私がうつむきそうになる。


「マルティム、ボルフライ」


 私は二人の名前を呼ぶ。

 小さく、はい、と返ってくる。

 私とボルフライの髪にはリボンがついていて、マルティムの髪には代わりの飾りすらついていない。


「ボルフライが揃えてくれたマルティムの分のリボンを、取り返すことができませんでした」


 私はあの日、会が始まる前にお手水へ向かったところから、ディリエルの部分を除いて説明をした。

 話を聞き終え、男子2人は苦い顔になっている。

 逆に女子2人は少し顔が明るくなったように見える。


「マルティム様を救出するお役に立ててなによりです。社交が始まるより先にお渡ししていて正解でした」


 ボルフライはせっかく作ったのに、なんて怒ったりせずほわっとした笑顔をマルティムに向ける。

 マルティムもボルフライに笑顔を返す。


「わたくしは、ボルフライにも助けられていたのですね。本当に感謝いたします」

「恐れ入ります」


 友情がまだ壊れていない事に私は安堵した。

 それでもリボンが1人分足りないのは寂しい。

 そんな私の心を読んだかのようにボルフライが私へ顔を戻して言う。

 

「生地はまだ余っています。マルティム様に同じものをすぐご用意いたしますね」


 またお揃いにいたしましょう、と笑ってくれる。


「お願いいたします」


 私も一緒に笑う。

 お揃いを楽しめた時間がたったの1時間程度だったのだ。今度こそ思い出が作れる。

 大勢がいる前でこれ以上この話題を出すのもよろしくないため、気持ちを切り替えるために他愛のない話へ移行する。

 領地と比べて寒いですね、などだ。

 女子はたった「寒い」の一言だけでどこまでも会話を広げられる。

 オリアクスとバイェモンががんばって会話に混ざろうとしているのが可笑しい。

 雑談に一区切りついたところでオリアクスから私とボルフライの名前が呼ばれる。

 オリアクスはマルティムの方を向き一つうなずく。

 マルティムもうなずき返し、私とボルフライの顔を交互に見る。


「急ではございますが、明後日我が別邸で茶会を開き、そこにご招待させていただきたいと考えております。ご都合はいかがでしょうか?」


 マルティムからの招待だ。何がなんでも行きたい。

 予定は入っていなかったと思うけれど念のためムルムルに確認をする。

 笑顔で頷いてくれたのでその場ですぐに参加すると返事をする。


「ありがとうございます。帰宅次第、すぐに招待状を届けさせます」


 マルティムとオリアクスがホッとした顔をする。

 ボルフライは「絶対にリボンをお茶会に間に合わせます」とやる気に満ちている。






 ずっと同じメンツで居ては社交にならないので、ほどほどにして切り上げる。

 順番待ちをしていたようで、近くでこちらをうかがっているグループが3組いる。


「ムルムル、この場合は?」

「鉢合わせた場合は身分順です。お互いの確認が終わり次第こちらへ来るでしょう。堂々と構えていてください」


 小声でコソコソと話している間に3組が列に並んだ。

 私は知り合いが絶望的に少ないので、初対面の挨拶から始まる。

 挨拶をし、軽く雑談をして次の組へ。

 3組終わったと思ったら列が増えていた。


 うわっ。


 しかし王家もよその公爵家も似たような状態だった。

 自領多め、他領からも年の近い伯爵家以上の女子がちらほら挨拶に来てくれた。

 ちなみに他領の子からは「入学後、ご一緒できるのが楽しみです」といった内容が多かった。






 やっとこさ列が途切れたころにはサロンの閉会が近づいていた。

 他はまだ列が少し残っている。

 ディリエルから席で待っていてと言われているが、2度も王子を煩わせたなど言われてはたまったものではないので、次は私から行くことにする。


「さぁ、参りましょう」


 さっとムルムルが手を出してくれる。

 その手を取って優雅に立ち上がる。

 先頭がチャクス、次に私、半歩後ろにムルムル、最後尾は横並びでグイソンとシトリー。

 私たち5人はディリエルの挨拶待ちの列、最後尾に並んだ。








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