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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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29話

 

「みんなありがとう、私の長い話を聞いてくれて」


 そういえば、ゆっくり会話をする時間なんてなかったな。


 私の行動基準の共有を行なった。

 チャクスとムルムルの見習い組はどこか感心した様子を見せている。

 ケレブスは怪訝といえばよいのだろうか、「6歳ですよね?」と言いたいのだろう複雑な顔をしている。

 打って変わってカシモラルは涙で目を潤ませている。

 カシモラルの反応が1番理解できない。


「帰敬式の日まで、ずっと耐えていらっしゃいましたものね」


 言われて理解した。カシモラルが側近になったのはつい最近だけれど、ハーゲンティが生まれた時から見守ってくれていたのだ。変化をプラスの方向に感じてくれているようで良かった。

 これだけ心配してくれて、ずっと側にいてくれて、一緒に怒られてくれるこの4人はすでに身近な存在だ。


 てゆーかそもそもファーストコンタクトがあれだ。ザブナッケとのあんなやりとり見たのにここまで側近やめてないんだよ?すごくない?


 そんな彼らをイマイチ信用していなかった私のなんて薄情なことか。

 ま、だからって全てを包み隠さず話すなんてことはしない。転生者であることも、悪魔の書と契約していることも内緒だ。


「帰敬式後に色々解放された反動で、少し身勝手になっていたようです。そこは反省します。ですが」


 私はニッと笑ってみせる。


「また何かが起こった時、わたくしは今回と同じように絶対助けに飛んでいきます」


 不安をわざわざ見せる必要はない。

 私は悪魔と契約をしているのだ。

 次はもっと上手くやるよ。


「覚悟してください」


 そろりそろりとケレブスが近づいてきて跪く。


「空を飛ぶのは、本当に危険ですのでおやめください」

「比喩です」


 止めるのはそこかい!と突っ込みたくなるが、空を飛ぶ魔法を習得していれば誘拐犯にもっと早く追いつけたのではないかという考えがすぐ前面に出てしまい「いやでも練習はしておこう」という言葉がポロリした。

 ケレブスが勘弁してくれと言いたそうな、泣きそうな顔をしている。

 すまんな、私はすでにファルファレルロから空を飛ぶ魔法を教えてもらう約束をしているのだ。


「いい天気ですね」

「ハーゲンティ様、そんなんじゃ誤魔化されませんよ」


 ダメだったか。






コンコン


 話し合いも終わりに差し掛かり、見計らったかのように部屋の扉がノックされる。

 カシモラルが出て、何かを手に戻ってくる。


「王宮の社交再開と、子供の社交縮小のお知らせが届きました」


 王子たちと顔を合わせる機会が少なくなりそうで良かった。

 あんな事件も起きたし、あらぬ疑いもかけられたし、これ以上王家も他領も関わりたくない。まぁこの流れで婚約者候補からは外れたと思うのでそこだけヤッター。


「あら、もう一枚はヴァサーゴ様からハーゲンティ様へのお手紙……いえこれは、招待状でしょうか」


 うへーなんて思いながらお茶を飲もうとカップに手を伸ばす。


「子供の社交が再開する前に、王子殿下が顔合わせを行いたいそうです」

「えーそれは、第五王子と個人的にお茶をする、ということでしょうか?」

「そうなりますね」


 カシモラルが眉間に皺を寄せている。以前から王子たちと関わらせたくなさそうだったので当然の反応だろう。私もめんどくさそうなので関わりたくない。


「お断り」

「できません」


 スパっと切られた。


「え!?」

「ハーゲンティ様。え、ではありません。王の子ですよ。よっぽどのことがない限りお断りなどできません」


 くうぅぅぅ!身分制度おおおおお!!


 こめかみを押さえながらカップに口をつける。

 さらにここでヴァサーゴとのやりとりを思い返し、苛立ちでお茶がうまく飲めない。


『ハーゲンティ様、包み隠さずお話しください』


 ん、あれ?


 ヴァサーゴとの会話を思い出して引っ掛かる。


『未成年のうち金の髪を持つのは、第五王子、第六王子、そしてハーゲンティ様です』


 さらに先日のカシモラルの言葉を思い出し、ブワっと嫌な汗をかく。

 むせてしまってお茶が鼻に入って痛い。


ドッドッドッ


 恐怖とはまた違った鼓動の早まりを全身で感じる。

 今になってやっと繋がった。


 ___第五王子の襲撃犯、私だ!







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