毒にも負けず3
「しかし……近くにモンスターがいますね」
目的のマーレイが見つかったのはいいけれど、近くにモンスターがいる。
「変なの」
「うん、変だな」
なかなか奇妙な形をしたモンスターをイリーシャは目を細めて見ている。
「トマトヘッドみたい」
「ちょっと似てるな……てか、頭はトマトかもな」
モンスターの頭は四つある。
それぞれ別々の四方向を向いており、頭の形はトマトだった。
以前トマトヘッドというモンスターを討伐したことがある。
頭の形はトマトなのですごくざっくりと見れば、似ていると言えるかもしれない。
ただ体とか頭の色を見ると全然違う。
トマトヘッドはツタでできていた。
複雑に絡み合うツタの上に、デカいトマトの頭が乗っているという変なモンスターだった。
対して見えているモンスターは結構気持ち悪い。
例えるならカカシのような体をしている。
一本の丸太の胴体に細くて長い腕がついているのだ。
ただ腕も頭の数だけあって、四対八本もある。
顔と腕がそれぞれ多い阿修羅像みたいな感じもある。
そして、トマトの頭だけど紫色をしていた。
トマトとして青いとかではなく、腐ったような色をしている。
「あれはポイズントマトヘッドスケアクロウですね」
「ポイズントマ……えっ?」
ササヤマがあまりにもサラッと言ったのでマサキは聞き取れなかった。
「ポイズントマトヘッドスケアクロウです」
「なんか……長いですね」
マサキは呆れた顔をしてしまう。
見た目の特徴を並べているだけなのかもしれないが、スッと頭に入ってこない名前だと思う。
「毒トマト頭カカシ」
「……そっちの方がわかりやすいな」
イリーシャが直訳してくれる。
ポイズントマトヘッドスケアクロウなんかよりも、よほど分かりやすいと思う。
「ポイズンってことは……」
「そうです。毒を持っています。あいつは毒エリアのエリアボスのような存在……厄介ですね」
ポイズントマトヘッドスケアクロウは、エリアの中でも一つ頭の抜けた存在である。
あるエリアでは明確にそのエリアのボス的な存在として君臨しているモンスターもいるが、エリアボスの境目が曖昧なエリアもある。
毒エリアもそんな曖昧なエリアで、ポイズントマトヘッドスケアクロウも一応エリアボスと見られているのだ。
確定していないものの、ボスと見られるだけの実力はあるので油断はできない。
「本来なら討伐して、と行きたいところですが……」
ササヤマは顔をしかめる。
最も安全にマーレイを確保する方法は、ポイズントマトヘッドスケアクロウを倒してしまうことだ。
しかしながらそうもいかない。
やはりどうしても戦力が足りない。
ポイズントマトヘッドスケアクロウはどうしても倒せないような強力なモンスターではないものの、マサキたちでは荷が重いと言わざるを得ない。
マサキは能力がEクラスだ。
イリーシャも才能はSクラスだけど、現段階の覚醒者能力はEクラス。
将来的にSランクになる可能性が高いとしても、今はまだ駆け出し覚醒者に過ぎない。
ササヤマはCクラス。
ポイズントマトヘッドスケアクロウもモンスターのとしてはCクラスになる。
一般的にモンスターは同ランク覚醒者が五人いて倒せると言われている。
戦力にならないカズキやランクが低いマサキやイリーシャがいては、まず勝ち目がない。
「俺たちが囮になりましょう」
少し悩んだ末にササヤマは自ら囮になることを決めた。
ササヤマとウエノでポイズントマトヘッドスケアクロウを引きつけてマーレイから離し、その隙にカズキがマーレイを収集、マサキたちはカズキの護衛をする。
今回は討伐が目的ではない。
どんな方法であれマーレイさえ確保できればいいのだ。
「そうしましょうか」
「できるだけ早くしてくださいね」
「分かってますよ」
「では……行ってきます!」
ササヤマとウエノが飛び出していく。
ウエノが魔法を放ってポイズントマトヘッドスケアクロウを攻撃する。
四つある紫色のトマトの頭の一つに魔法が当たって、紫色の汚い汁が飛び散る。
まるでハロウィーンのカボチャのようにトマトの頭に刻まれた顔が、魔法を放ったウエノの方を向く。
「こっち来い!」
前に戦ったトマトヘッドは地面に固定されていて動かないモンスターであった。
しかしポイズントマトヘッドスケアクロウは動くモンスターだ。
どこから出しているのかも分からないが、うめくような声を上げてササヤマとウエノの方に向かっていく。
「……よし、いきましょう」
ポイズントマトヘッドスケアクロウが十分に離れたのを確認して、マサキたちはマーレイのところに向かう。
「それじゃあ採取します」
カズキは手袋とゴーグルを身につけて、小さいスコップを手にマーレイの横で膝をつく。
水仙の花のような可愛らしいマーレイだが、こんなところに生えているものだということを忘れてはならない。
「おっと……」
マーレイ近くの土にスコップを差し込むと、マーレイが花粉のようなものをボフンと花から放つ。
やはりただの花ということはなく、ちょっとした防御反応のようなものを見せてきた。
もちろんただの花粉ではなく、吸い込めば喉が痛くなったり目に付着すれば涙が止まらなくなったりするような毒である。




