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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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必要なもの2

「もちろん治療法も同時に進めているのだけど……問題がある」


「問題……ですか?」


 柔らかかったカズキの顔が険しくなる。


「特殊な薬草が必要なんだ。研究所に保管してあったものを使わせてもらって、おそらくこれならばというものを見つけたのだが……かなり貴重なものだった」


「どんな薬草ですか?」


 薬草の話は回帰前に聞かなかったなとマサキは思った。

 薬の作り方など一から十まで全て説明してくれるはずもないので、当然のことかもしれない。


「イギリスのスコット・コールマンという博士が見つけたマーレイという薬草……まあ、毒草だな。毒がふくまれるものに奥さんの名前付けたなんて、なかなか人だよね」


 カズキは苦笑いを浮かべる。

 マーレイというのはスコットという人の奥さんの名前からつけられたものであった。


「ともかくその毒草なり、薬草が必要なんですね?」


「うん、そうなんだ。ただゲート内で発見、採取されたもので……同じものがあるのかどうか探してもらっている」


「どうしてわざわざ俺のこと呼んだんですか?」


「君なら何か知らないかなと思ってね。カスミにイリーシャちゃんを会わせたかったし、それに…………」


「それに?」


「ああ、いやなんでもないよ」


 カズキは笑顔を浮かべて誤魔化す。

 もう一つ理由はあったのだけど、それをマサキに直接伝えることはできない。


「ともかく、薬草を知らないかい?」


「知らないですね……」


「そうか……」


「でも……」


「でも?」


 知らないというマサキの言葉にカズキは少し落ち込んだが、続く言葉に期待を寄せる。


「四国にあるフラワーパークゲートはどうですか?」


 ゲートの中に現れる異世界の植物にも、需要が高いものがいくつかある。

 こちらの世界では見られない成分を含んでいたり、多くの魔力を含有しているなど様々であるが、どの植物にしても共通していえるのは入手が困難であることだった。


 ゲートは基本的に攻略してしまう。

 モンスターなどの危険があるためしょうがない話だ。


 植物採取のためにゲートを保有して、適切に管理しながら残しておくなんてところの方が少ない。

 たまたま環境調査のために持ち帰った植物は非常に有益なものだったと分かっても、もうゲートは閉じられてしまっていたことも珍しいことではないのだ。


 魔力や体を回復させたり、病気を治療したり、あるいはモンスターによる状態異常を打ち消したりするのにも異世界の植物が必要になってくる。

 だがちょっとだけ植物が取れるようなゲートを保持しておくことは、リスク面でも釣り合わない。


 そんな時に活躍していたのがフラワーパークゲートだった。

 フラワーパークゲートの中には多種多様な植物が生えている。


 回帰前の世界では、異世界の植物がたくさん生えているということでフラワーパークゲートは攻略されずに残されていた。

 その結果ブレイクを起こしたが、それでもまだ残し続けた。


 最終的に同化現象というゲートの中の世界と外の世界が混じり合うことが起きて、四国一帯は希少な植物の楽園となったのである。

 今も確かフラワーパークゲートはあったはずだとマサキは思った。


 そこならばマーレイがある可能性があった。


「四国のフラワーパークゲート……あとで調べてみよう。情報をありがとう」


「いえ、お役に立てたならいいのですが」


「用事はこれぐらいだ。まだカスミの方も時間かかるだろう。君も知り合いに会ってきたらどうだい?」


「……じゃあそうします」


 ーーーーー


「よう」


 軽くノックをしてマサキはサラの部屋に入った。


「マサキ……」


 入ってきたマサキを見て、サラはパッと笑顔を浮かべた。


「調子良さそうだな」


 相変わらず体は動かないようだが、頭はなんとか動かせる。

 前に会った時は全身に広がる鈍い痛みのせいで顔色も悪かったけれど、今日はだいぶ血色がいいように見えていた。


「魔力硬化症の進行を止めるお薬のおかげでね。あの薬、進行を止めてくれるだけじゃなくて病状も少しだけ軽くしてくれるんだ」


「そうか、それは良かったな」


 マサキはベッド横に座る。


「今日は会いに来てくれたの?」


「カズキさんに呼ばれてな」


「んもう、そこは会いに来たでいいじゃない」


 サラは少し頬を膨らませて拗ねたような顔をする。


「照れ隠しだよ」


 マサキは困ったように笑う。

 嘘ではなく本当に調子が良さそうである。


「……治療法もだいぶ完成が見えてきたっていうし…………マサキのおかげだね」


「俺? いや、俺じゃなくてカズキさん……」


「でもカズキさんを連れてきてくれたのはまさきでしょ」


「まあ、そう、だな」


「だからマサキのおかげ」


「そうだな」


 昔からサラに口で勝てたことはない。

 それなら素直に受け入れていた方が早いとマサキは知っている。


「元気になったら何したい?」


「んーとね……走りたい」


「走りたいか」


「うん。思い切り体動かすの。走ったらたくさん食べて、いっぱい買い物して……そして恋をするの」


 サラは少し熱っぽいような目をマサキに向ける。


「できると思う?」


「ああ、できるさ。絶対な」


 マサキも何がとは聞かなかった。

 でも元気になればなんだってできる。


「綺麗な人ですね……マサキさんの恋人……ですか?」


「たぶん……違うと思う……たぶん」


「あっ……」


 ダイチとレイは病院の中をこっそり覗いていた。

 レイの顔を見てダイチは複雑な人間関係を悟ったのであった。

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