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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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必要なもの1

「お世話になります」


「そう固くならなくていいよ」


 連れていってくださいと言ったが、そのまま車に乗って一緒に行ったわけじゃない。

 旅館を閉める都合なんかや引越しなど色々とあって少し時間を置いてダイチはこちらに来た。


 難航していたのは物件探しだった。

 当然ながら旅館と行ったり来たりで活動は難しい。


 なのでマサキたちのそばに来ようとしていたのだけど、マサキが借りているアパート近くでなかなかいい場所がなかったのだ。

 どうしたものかと悩んでいたらいいところが空いた。


「まさか上の部屋に来るとはね」


 レイが天井を見上げる。

 いいところとはマサキたちのアパートの上の部屋であった。


「結構高いところだと思うけど……お金大丈夫?」


「大丈夫です。両親の遺産があって。あまりお金使うことなかったですし。それに高校の時から旅館手伝ってて……その時から貯めてた給料だって笑いながら、通帳渡してくれました」


 給料だなんてのは冗談だろうが、ダイチの祖父母もダイチのためにお金を貯めてくれていた。

 あまり使わなかった両親の遺産もあった。


 お金だけで言うなら意外とダイチは持っていたのである。


「いらないっていうのに生活費も振り込むって……」


 ダイチは困ったような顔をしている。


「愛されてるな……」


 ともあれダイチの住居問題は解決した。

 上下の部屋になったので集まることも簡単だ。


「それでこれからどうするんですか?」


「しばらくはダイチが覚醒者としての活動に慣れるようにゲートの攻略に参加していこう」


 正直フロッグマンもボス相手だと危ない場面もあった。

 もっと強くなる必要がある。


 加えてダイチにも色々と教えて慣れていってもらう必要もあった。


「手近で簡単なゲート探したり、攻略メンバー募集しているところに参加したりしていこう」


 最近良い感じだったから調子に乗っていたところがあるのは否めない。

 ここは基本に立ち返って力を蓄えていく。


「カズキさんの方も進展があるといいんだけどな」


 魔力硬化症の治療法の研究も順調に進んでいるとは聞いている。

 もちろん治療も大事なのだけど、マサキにはカズキにやってもらいたいことがある。


 マサキの体の強化にも必要なことなので、多少の焦りは感じてしまう。


「マサキ、電話」


「おっと」


 テーブルに置いてあったマサキのスマホに着信が入る。


「前も思ったんですけど、スマホ……デカいですよね」


「そう思うよね。でもあのスマホ、ゲートの中に持ち込んでも壊れないらしいんだ」


「そうなんですか」


 男であるマサキが持ってもゴツく見えるスマホを、ダイチは不思議に思っていた。

 そんなスマホがあることも不思議なのだけど、マサキがそんなスマホを使っていることも不思議だった。


 丈夫さを重視しているとしてもデカすぎる。

 だがゲート中に持ち込んでも大丈夫なスマホなのだと聞いて納得した。


 そう言えばゲートの中でもスマホで撮影していたなと今更思い出す。


「分かりました。病院ですね。すぐに向かいます」


 短い会話を終えてマサキは通話を切った。


「誰から?」


「カズキさんから」


「カズキ……さん? 誰ですか?」


「知り合いの科学者だよ」


 噂をすれば電話の相手はカズキであった。


「会って話がしたいって」


「病院?」


「ああ、そうだ」


「カスミに会ってもいい?」


「もちろん」


「ええと?」


 ダイチだけは何が何だか分からないようである。


「ちょっと覚醒者関係でも関わりがある人なんだ。これから会いに行くからダイチ君も行こうか。紹介するよ」


 ちょうど良いタイミングだし、ダイチも連れていこうと思った。

 マサキたちは車に乗り込み病院に向かった。


 ーーーーー


「カズキさん、お久しぶりです」


「やあ、久しぶりだね。元気そうで何よりだ」


「カスミ」


「イリーシャ!」


 入院しているカスミの病室にカズキはいた。

 前の研究所勤務の時は疲れたような顔をしていたのに、今はエネルギーに満ちた元気な顔をしている。


 忙しさとしては多少緩くなった程度だろうに環境の違いは大きいらしい。

 イリーシャはカスミに駆け寄って、ハイタッチしている。


 カスミの方もまだあまり病気が進行していないようで、元気そうな笑顔を浮かべていた。


「おや? そちらの方は?」


「新しく仲間になったクロセダイチ君です」


「よ、よろしくお願いします」


 ダイチは旅館仕込みの姿勢の良さで頭を下げる。


「僕はキサキカズキだ。よろしくね。さて、場所を変えて話そうか」


「イリーシャはカスミちゃんと話してな」


「ん。いってらっしゃい」


 カスミの相手はイリーシャに任せて、マサキたちは場所を移す。


「だいぶ治療の目処が立ったよ」


「本当ですか?」


 カップタイプの自販機のコーヒーを前に、カズキは希望に満ちた目をしていた。


「いまは治療法の確立も目指しながら副産物としてできた病菌の進行を遅らせる薬を先に作ったんだ」

 

「じゃあ、サラも?」


「ああ、タイムリミットはあるだろう。でもだいぶ延長できるはずだ」


「良かった……」


 マサキはホッと息を吐く。

 サラの状態はかなり悪い。


 治療法の完成を待つことも難しいかもしれないと思っていたが、だいぶ明るい話題である。

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