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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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大事なもののため1

「俺も連れてってください!」


 雨のせいでかなり体が冷えた感じはあるが、のんびり温めている暇もない。

 旅館もフロッグマンに襲われるかもしれないので、窓のない大広間に集まって明かりを消しておくように指示を出した。


 どうせまた濡れるのだからと体だけ軽く拭いた圭たちは、今度はゲートを攻略に向かおうとしていた。

 もう出発というところで、意を決したようにダイチが声をかけてきた。


「ダイチ君?」


「旅館のために……ゲートに行くんですよね?」


「まあ……そうだな」


 旅館がもうちょっとゲートから離れていれば、他の覚醒者の到着を待ちたいところである。

 しかし待っているような余裕がないので、ゲートの攻略に向かう。


「ただ待ってるだけなんて……俺は……」


 ダイチも覚醒者ではある。

 戦う力があるのだ。


 なのに他の人と同じようにただ待つしかできないもどかしさは、すごく心を締め付けるものだった。

 今圭たちは旅館を守るためにゲートに向かおうとしている。


 自分が旅館を守るんだなどと言いながら、他人に頼って、自分は引きこもって怯えていることしかできない。


「ここに残っても俺は何もできません。それなら少しでも役に立ちたいんです!」


 系たちがいない時にモンスターが旅館を襲ってきたのだとしたらダイチだけではなんともならない。

 残って守るなんてことは、結局モンスターが襲ってきた時にはできやしないことなのである。


 それならば圭たちについていって、ほんの少しでも力になった方が全体的に無事でいられる可能性が高まるのならそうしたいと思った。


「壁にでも盾にでもなります! マサキさんの言ってた覚悟もしました! だから……俺にも旅館を守らせてください……」


 目を背けていたことに向き合う時がきた。

 このまま旅館で隠れていることもできるだろう。


 しかし圭たちに何かあればダイチは一生後悔するだろうし、何かがなくても何もできなかったという後悔は付きまとうことだろう。


「モンスターを倒す覚悟、あるいはモンスターに倒されることもかるかもしれない、という覚悟があるんだな?」


「旅館は……俺が守ります! でも……その……死ぬ覚悟まではないかも……しれないです」


 モンスターと戦う覚悟はした。

 だけどモンスターによって死ぬことまでは正直覚悟しきれていない。


「……それでいいのさ」


 マサキは笑顔を浮かべてダイチの肩に手を乗せる。


「誰しもが死にたくはない。だが動けなくなっても困るから、死ぬ覚悟というよりは死ぬかもしれないことがあることはどこかに憶えておいてくれ」


「……分かりました」


 死ぬ覚悟はモンスターと戦って玉砕する覚悟ではない。

 死にたくないと願いながらも死に直面してしまうことは、モンスターと戦っているとどうしても発生してしまう。


 だが最後の瞬間まで諦めないことや死を感じても仲間のために戦うことの覚悟が必要なのである。

 マサキは最後まで足掻いた。


 死ぬ覚悟で最後まで戦い抜いた結果に、なぜか生き延びてしまった。

 だがやはり死ぬかもしれないと覚悟を決めつつ戦い抜くことが生き延びた秘訣だったのだろうと、今なら思える。


 死にかけて、死にたくないと戦いを放棄した人は死んでいった。

 ダイチをフォローしている余裕はないかもしれない。


 最後まで立ち向かう覚悟をしてもらう必要があるのだ。


「一緒にきてくれ」


 正直きてくれるとありがたい。

 フロッグマン単体なら問題なく戦えるが、集団となるとギリギリである。


 実はダイチの能力はある程度知っている。

 覚醒者個々人には得意なことがある。


 レイは素早さが高く、力としては弱めだけどスキルによる強力な一撃を有する。

 体の頑丈さとしても弱めであるが、潜在能力が高いので全体的にはかなり強くなれる。


 イリーシャは魔法タイプだ。

 身体能力的なところではあまり強くない。


 だが一方で魔力が高く、魔力のコントロールにも優れている。

 加えて氷をよく使うけれども、それもイリーシャの魔力が氷にするのに適しているからなのである。


 マサキは特徴のない平均的なタイプである。

 器用貧乏な感じであり、割と扱いに困る能力の伸びである。


 対してダイチは体が頑丈なタイプであった。

 力も強いのだけど、体に魔力をみなぎらせると高い防御力を得られるのだ。


 いわゆるタンクと呼ばれる役割に適した能力を持っていた。

 スキルについては分からないけれど、今のパーティーとしても良いポジションである。


「装備は俺のを貸そう」


 ダイチの気が変わらないうちに引き込んでしまう。

 前は装備もないだろうなんて言ったけれど、どうにかする方法はある。


 マサキの装備を使ってもらうのだ。

 ちょっと前までは剣一つでもギリギリだったけれど、レイとイリーシャというメンバーや良いスポンサーも得てお金に余裕ができた。


 今は予備の装備なんてものもちゃんと持ってきているのだ。

 身長的にも体格的にもダイチの方ががっしりとしている。


 しかしオーダーメイドの装備でもないから多少装着のサイズは調整できるようになっている。

 ダイチの体格でもマサキの装備ならばつけられるだろう。

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