大雨のゲートブレイク7
「おお……すごい」
一瞬、一撃。
マサキの瞬間拘束によって動きを止められたフロッグマンはそれぞれの攻撃によって倒された。
サダは全く危なげなく倒してしまったマサキたちのことを見直した。
若いからと多少の不安があったけれども、そんな不安は杞憂だったと反省する。
若くとも覚醒者。
関係もないのに、こんな雨の中でも助けに来てくれるような立派な若者だと感動すら覚えていた。
「倒せて……るな」
中にはすごく生命力が強いモンスターもいる。
首を切ったのに動くなんてことはまずないけれども、ないとは言えない以上、余裕があればモンスターの生死をしっかり確認しておく。
雨に血が流れていく。
武器の血を払う必要もない。
「他にモンスターはなさそうだな」
雨の中を睨みつけるようにモンスターを探す。
しかし赤い目のようなものは見えない。
「……行こう」
あまり長く警戒しすぎてモンスターが寄ってきても困る。
フロッグマンは鳴き声を出すこともなかったし、戦いの音は雨に紛れている。
血も雨に流されて臭いなんかも立たないはずだ。
見た感じ近くにフロッグマンがいないなら、他のフロッグマンにバレて集まってくることもないだろう。
フロッグマンの死体は放置して、マサキは再びサダの妻を背負って旅館に向かう。
「……遅いな…………あっ!」
宿の前では、ダイチが落ち着かない様子でマサキたちのことを待っていた。
走って行って帰ってくるだけじゃないことは分かっている。
雨がひどいし時間もかかることは理解しているが、焦るほどにマサキたちの帰りが遅く感じてしまう。
旅館の入り口をうろうろとしていると、チラリと明かりが見えた。
「マサキさん!」
走って確認しに行きたい気持ちを抑えて待っていると、先頭のレイの姿がハッキリしてきた。
「ダイチ君!」
ダイチは旅館の玄関を開けて迎えてくれた。
「タオルも用意してあります!」
「助かったよ!」
明るい建物の中に入るとやはりホッとする。
ダイチの祖父母もいて、フカフカのタオルを受け取る。
すっかり体は濡れてしまっている。
「この後はどうするんですか?」
ダイチは不安そうな顔をしてマサキのことを見ている。
「……ゲートを攻略する」
「えっ!?」
「やるの?」
マサキの言葉にレイも驚いた顔をする。
「思ってたよりもモンスターがこっち側にいたからな……このまま覚醒者を待っているのは危険だ」
フロッグマンが現れたのはサダの家と旅館のちょうど中間地点となる。
どれほどのペースでフロッグマンが出てきて、どんな動きをしているのか分からないが、割と早いペースで活動範囲を広げているように思える。
雨のせいかもしれない。
ただ何にしても旅館にフロッグマンが来るまでそんなに猶予もなさそうだ。
モンスターは人の気配に引きつけられるところがある。
人が泊まる旅館は狙われやすい。
広い建物の中をマサキたちだけで守ることは現実ではなく、それならゲートを攻撃してしまった方がいいだろう。
上手くいけば、ゲートを守るためにフロッグマンが戻ってくる可能性もある。
雨の中、人がいる方に逃げてモンスターを連れ行ってしまうのもまた大きなリスクとなる。
「危険は承知だ。だけどここでみんなを助けるためには打って出るしかない」




