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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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大雨のゲートブレイク6

「すいませんね……」


「大丈夫ですよ。落ちないようにしっかりと掴まってくださいね」


 杖をついたサダの奥さんをマサキが背負う。

 カッパを着ていると滑ってうまく背負えないので、マサキはカッパ無しで雨の中を突っ切ることにした。


「かなり危ないがいくぞ」


 何もない。

 何もなさすぎるとマサキは思った。


 近くにモンスターがいるはずなのに、雨以外の音がせず気配を感じない。

 モンスターが近くにいても不安だが、何もないというのもまた不安に感じてしまう。


 外は相変わらずの荒天。

 雨風は弱まるような気配もない。


「行きますよ。足元気をつけてください」


 家から出て旅館に向かう。

 レイを先頭にして、サダ、マサキ、イリーシャの順で並ぶ。


 嫌な予感がする。


「イリーシャ! 警戒を怠るなよ!」


 本当ならマサキが危険な後ろに担当すべきである。

 しかし人を抱えていてはそうもできない。


 どうしても前後の両方を覚醒者で守る必要があったので、仕方なくイリーシャには後ろを警戒してもらっている。

 こうした時の嫌な予感というやつは馬鹿にできない。


 雨の中でも聞こえるように声を張り上げる。


「雨の中で何か光ったような……」


「今なんて?」

 

「雨の中に赤く光るようなものが」


「……レイ! 止まれ!」


 マサキの声に反応してレイが泥を跳ね上げて止まる。


「サダさん! これ使って周りを照らしてください!」


 できるだけ明かりも少なくしたくて、先頭のレイと最後尾のイリーシャだけが明かりをつけていた。

 マサキは自分の分の懐中電灯をサダに渡す。


「どうしたんですか?」


「モンスターがいるかもしれない!」


 赤い光を見たとサダの妻は言った。

 その光がなんなのか分からない。


 見間違い、あるいは何かなんでもない光の可能性もある。

 しかしそれがモンスターである可能性も否定できない。


 走りながら警戒するのは難しい。


「……旅館にモンスター連れて行くわけにはいかないしな」


 加えてモンスターが遠巻きに見ているのだとしたら、放置しておくのはかなり危険である。

 旅館までモンスターがついてくる可能性が否定できない。


 人を助けに行って、旅館にモンスターを連れてきてしまったなんて笑い話にはならないのである。

 雨の中、目と耳をこらして異変がないかを警戒する。


「マサキ……」


「ああ、そうだな。サダさん、一度降りてください」


 マサキは背負ったサダの妻を地面に下ろす。

 雨の中に赤い点が六つ見える。


 目の数が多いモンスターもいるが、人や他の生き物のように目が二つというモンスターも多い。

 二つ等間隔の赤い点が六つということは、モンスターが三体だろうとマサキは思った。


「二人とも体勢を低くして、傘を開いて動かないでください」


「分かりました」


 サダは手に持っていた傘を開いて、妻と一緒に地面に膝をつく。

 傘に防御力なんて期待できないが、弱いモンスターなら一回ぐらい攻撃を防いでくれるだろう。


 距離はさほど遠くない。

 止まったマサキたちを見て、襲いかかるかどうか悩んでいる。


 立ち止まって、すぐに距離を詰めてきたところを考えるにあまり賢くはないだろう。

 暗いしサダ夫婦から離れるわけにはいかない。


 他にもモンスターがいる可能性を考えると、ここで目の前のモンスターは倒しておきたい。


「ギリギリまで引きつけて、一気に倒すぞ」


「うん」


「分かった」


 ただし倒すというのも、倒せるレベルのモンスターならという話である。

 ダメならその時はマサキが犠牲になるつもりだった。


 ジリジリとモンスターが距離を詰めてくる。

 いまだにちゃんと姿は確認できず、赤い目だけが浮かび上がったように見えていた。


「あれは……」


「フロッグマンだな」


 懐中電灯を向けるとうっすらと姿が見えるぐらいにモンスターが近づいてきた。

 人のように二足歩行はしているものの、フォルムは明らかに人じゃない。


 やや丸みを帯びていて、ヌメヌメとした質感の皮膚をしている。

 言うなればカエルのような見た目をしていた。


 二足歩行のカエル人間、いわゆるフロッグマンという魔物である。

 マサキは少し安心した。


 フロッグマンはさほど強くない魔物であるからだ。

 雨という条件下では多少強くなるものの、絶望的な相手ではない。


 マサキたちでも十分に勝てる可能性がある。


「来るぞ……」


 カエルに睨まれた人間たちは動かない。

 フロッグマンの考えは読めないが、近づいてくるところ見るにあまりマサキたちのことを警戒している雰囲気ではない。


 マサキはあえて一歩下がった。

 大体の場合、下がった方が負けなのだ。


 フロッグマンから見て、一歩下がる行為はマサキがフロッグマンの圧に押されたように感じることだろう。

 そうなると予想される次の行為は逃走である。


 逃げられる前に倒そうとフロッグマンたちは一気にマサキたちに飛びかかった。


「止まれ、瞬間拘束」


 マサキはスキルを発動させた。

 力の差が大きくない相手ならマサキのスキルでもしっかり動きを止められる。


 飛びかかってきたフロッグマンは三体とも体が動かなくなる。


「レイ、イリーシャ、やるぞ!」


「行きますよ!」


「ごめんね、カエルさん」


 レイは剣を振り下ろし、イリーシャは鋭い氷の塊を飛ばす。

 マサキもフロッグマンの首を狙って剣を振る。

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