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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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大雨のゲートブレイク5

「寝ぼけてないで起きろ!」


「んん……マサキさん? どうしたんですか……」


 マサキがより激しく揺するとようやくレイは目を覚ました。


「イリーシャ、起きてくれ」


 説明もまとめてやった方が楽である。

 レイの疑問はひとまず置いといて、次はイリーシャを起こす。


「いやん、えっち」


「イリーシャー!」


「……分かった、起きる」


 イリーシャはわざとらしく少しはだけた浴衣を直す。

 マサキの渋い顔に冗談を言っている場合じゃないなと察したイリーシャはサッと体を起こした。


「何があったの?」


 外を見るとまだ暗い。

 起きる時間じゃないし、旅館にいる間はそもそもいつ起きたって構わないはずなのだ。


「ゲートが発生した。しかもブレイク状態だ」


「ええっ!?」


「ゲート」


「ああ、ここからも近いところで、今起こしたのはゲート近くにいる住人を助けに行きたいからなんだ」


 マサキは簡単に事情を説明する。


「足が悪い人がいるそうで、避難を手伝うんだ。力を貸してくれるか?」


「もちろんですよ!」


「うん、やる」


「ありがとう、二人とも」


 まだ完全に事情は飲み込めていないだろうに、レイもイリーシャも力を貸してくれると頷く。


「車、表に回すから。二人とも準備しといて」


「分かりました!」


「りょ」


 マサキは部屋に置いてあった鍵を取って部屋を出る。

 旅館までは車で来ている。


 横にある駐車場に走って、車を旅館の前まで運ぶ。


「よいしょ」


 車のトランクを開ける。

 覚醒者として装備は大事である。


 ゲートがどこで発生するのか予想もできない以上は、いつ何時装備が必要になるか分からない。

 そのために車にはちゃんと装備を積んできていた。


 旅館が用意した浴衣から動きやすい格好に着替えたレイとイリーシャも出てくる。

 慣れたものでさっさと装備を身につけて、瞬く間に覚醒者として活動できるような姿になった。


「これ、雨具です」


 流石に雨ざらしで活動するのは辛い。

 装備を身につけた上からカッパを羽織る。


 動きにくさはあるけれど、びしょ濡れにならないようにするためには仕方ない。


「行こうか」


 車はモンスターにとっても目立つ。

 バレにくいように徒歩で移動する。


「雨すごい……」


 カッパに雨が打ちつけて、バチバチと激しい音がする。

 地面はひどくぬかるんでいて、靴はあっという間に水に濡れてしまう。


 カッパを着ていても無駄なんじゃないかと思えるほどの大雨だった。

 事前に場所は確認してあるのでさっさと雨の中を歩いていく。


 真夜中、大雨の外は非常に暗い。

 懐中時計を使っても照らせる範囲は狭く、レイは目の前にいるマサキすら見失いそうになる。


 マサキは頭の中に地図を思い浮かべながら、モンスターも警戒する。

 それほど気温の下がる季節でもないのに、打ち付ける雨に体温が奪われ、集中力も持っていかれそうになる。


「あそこだ」


 懐中電灯を向けると雨の中にうっすらと建物が見える。

 マサキの言いつけを守ってカーテンを閉めて明かりを消し、モンスターにバレないようにしているみたいだ。


 一応表札を見て佐田であることも確認しておく。


「パッと見た感じでは襲われていなさそうだな」


 窓が壊されたりしたような様子はない。

 まだ悲劇は起きていない可能性が高そうだ。


「誰かいますか?」


 古い引き戸の玄関を叩いて声をかける。


「ど、どちら様ですか? な、名前をお願いします」


 少し間があって、人が玄関裏に近づく気配を感じた。

 震える男性の声が聞こえてひとまずマサキはホッとする。


 名前を聞けと教えたこともちゃんと覚えているようだ。


「助けに来ました。ムラサメケイです。あなたのお名前を聞いても?」


「佐田……佐田英治サダエイジと申します……」


「開けてくださいますか?」


「わ、分かりました」


 カチャリと音がして玄関が開く。

 頭の薄い中年の男性が不安そうな顔を覗かせる。


「ひゃあ……びしゃびしゃ……」


 玄関に入ると自分から滝のように水が滴る。


「温泉街を守っている覚醒者さんたちではないのですか……?」


「実は……」


 マサキは土砂災害の対応を覚醒者たちが駆り出されていて、こちらに来られないことを説明した。


「俺たちは旅館に泊まっていた覚醒者なんです。旅館の方々に頼まれて佐田さんを助けに来ました」


「そうなんですか。わざわざありがとうございます」


 若い三人でやや不安はある。

 しかし今は贅沢なことを言ってられないとエイジは頭を下げる。


「ゲートは近いんですか?」


「二階から見るとうっすらと見えます」


「それはかなり近いですね……足が悪いのは奥様ですか?」


「ええ、少し前に膝を悪くして……」


「少し無理矢理ですが、俺が背負って運びます」


 想像以上にゲートが近く、危険が大きい。

 普段はかかるかもしれないが、マサキが背負って旅館まで連れていくことにした。


「カッパはありますか?」


「ええと、はい」


「すぐに動きましょう。モンスターの動きが分からない以上、長居は危険です」


 時間が経つほどにモンスターはゲートから出てくる。

 早く動くことが生存率を高める唯一の方法である。


 まだモンスターの気配を感じない今さっさと逃げてしまうに限る。

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