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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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大雨のゲートブレイク4

「助けが来たと思っても、まずは鍵を開けずに名前を聞いて」


「……なんでですか?」


「モンスターかもしれないからだ」


「モンスターが……」


 ダイチはマサキの話を想像して顔を青くする。

 基本的にモンスターは人語を話さない。


 しかし一部のモンスターには人語を利用するものもいるのだ。

 人だと思って対応したらモンスターだったという事例も存在している。


 ゲートが現れて、ブレイクを起こしてモンスターが出てきているようだがどんなモンスターが出てきているのか分かっていない。

 そうした知恵を使ってくるモンスターの可能性もあるので、人の声がしたからとただ信用してしまうのはいけない。


「ダイチ……そっちはどうだ?」


「おじいちゃん! 佐田おじさんの方はどう? すぐに助けに行ける?」


「それが……行けないそうなんだ」


「どうして!」


 ダイチの祖父は覚醒者に連絡をしていた。

 行けないということは、すなわち覚醒者たちがゲートに向かえないということだろう。


「土砂災害が起きたらしい。覚醒者さんたちはそっちの方に行ってしまって……連絡がつかないようだ」


 ダイチの祖父は困った顔をしている。

 災害救助は覚醒者の仕事ではない。


 しかし一般の人よりも体が強い覚醒者が災害の対処に向かってくれれば、ありがたいのは確かである。

 仕事ではないのでと断る人もいる中で、温泉街を守る覚醒者は正義感がある覚醒者だったようだ。


 だが今回はそれが少し問題となってしまった。

 災害の方に向かった覚醒者たちと連絡が取れない。


 問題が起きたのか、あるいは単純に電波が届かないという可能性もある。

 だがどちらにしろ佐田という人は絶体絶命の状況にあることは間違いない。


「……じゃあ、俺が行く!」


「ダイチ!」


「佐田おじさんのところには足の悪いおばさんがいる! おじさんだけならともかく……おばさんは」


「行ってどうする?」


「えっ?」

 

 黙って聞いていたけどマサキもその場にずっといた。


「どんな状況かは知らないけど、家の中からモンスターを見たぐらいならかなり危険だよ」


「でも……ほっとけない!」


「だから聞いてるんだ。どうするつもり?」


 マサキはまっすぐにダイチのことを見る。


「どうするって……」


「モンスターと戦わないようにして助け出す? それともモンスターを倒して助け出す?」


「そりゃ……もちろんモンスターにバレないように……」


「おばさんは足が悪いんだろ? まさか雨の中背負って助けるつもりかい? モンスターにバレたらどうする?」


「そ、それは……」


 特に難しいことを聞いたつもりはない。

 しかしダイチは口ごもる。


 マサキも意地悪な感じになっていることは分かっている。

 だが今ダイチを行かせれば、おそらくダイチも含めて佐田という人も無事ではいられないだろう。


 激しい雨の中を上手く行動すればモンスターにバレずにいられることもできるだろう。

 だが一方で雨の中で行動することは難しい。


 モンスターに見つかりにくいことの裏を返せば、モンスターを見つけにくいともいえる。

 突発的にモンスターに遭遇してしまう可能性もあるのだ。


 ダイチは覚醒しているものの、覚醒者としての基礎も何もない。

 モンスターと戦う心得もない。


 仮におばさんを連れ出したタイミングでモンスターに遭遇すれば、致命的といってもいいだろう。


「助けに行くのもいいが、君の判断一つで助けようとした命が失われることもあるんだ」


 数々の美談の裏には、誰も語れない失敗の話がある。

 助けに行って本当に助けられるのは一握りなのだ。


「じゃあ……どうしたら……」


 ダイチは泣きそうな顔をする。

 佐田という人をマサキは知らないが、ダイチにとって大事な人であるようだ。


「ダイチ君」


「はい……」


「俺は何者だ?」


「マサキさん……が? マサキさんは……あっ……」


「俺は……いや、俺たちは覚醒者の端くれだ」


 ダイチがハッとした顔をする。

 ちょっと臭かったかなと思いつつも、マサキはダイチに対して微笑みかける。


「少し頼ってみないか?」


 正直マサキはやれせてくれというほどまでに正義感が強くもない。

 かなりリスクは高い。


 モンスターが想定よりも強い場合は、マサキたちも無事で済まされないことになってしまう。

 でも助けてくれと素直に言われた時に助けないほどに性格が悪くもない。


「お願いします! 助けてください!」


「私からも……こんなことをお客様にお願いするのは心苦しいのですが、他にどうしようもありません」


 ダイチは深く頭を下げた。

 プライドとかそんなものが邪魔する人も多いが、ダイチは素直な性格をしていていいなとマサキは思った。


 ダイチの祖父も頭を下げて、やるしかないなとマサキは思った。


「この辺りの地図……それとカッパみたいな雨具があれば用意お願いします」


 こんな時間に起こしたら怒られるかな。

 そんなことを思いながらマサキは部屋に向かった。


「レイ、起きてくれ」


 荒天の音が激しくともレイとイリーシャはグックリと寝ていた。

 マサキはまずレイのことを起こそうと肩を揺する。


「うぅーん、マサキさん? ダメですよぅ、イリーシャちゃんいますし……」


 何がダメなんだとマサキは目を細める。

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