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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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大雨のゲートブレイク3

「こういう時の昔の鉄板は殺人事件、らしいんだけどな」


 この際お酒でも飲もうかなと思いながらコーヒー牛乳のビンを傾ける。


「どういうこと?」


「大雨、隔絶された地域、旅館に集まる人……小説なんかだとここで殺人事件が起きるけど、道路が封鎖されてるから警察は来られない。その中で犯人を探し出す……みたいなお話の話さ」


「ふーん」


「今は違うんですか?」


「今の鉄板……というか流行りの流れはゲートだ」


「ゲート?」


 イリーシャは二本目のフルーツ牛乳を開けながら首を傾げる。


「状況は似たようなもんだけど、殺人事件が起こるんじゃなくでブレイキングゲートが発生、そして人々はどうにか生き延びようとする……っていう元のミステリーからパニックホラーみたいな感じに変わってるらしい」


 なんにしても小説やマンガなんかのようなお話の中でのことである。

 陸の孤島になった場所で何かの事件が起こる。


 昔は逃げられない、警察も来られないという状況で殺人が起こるなんていうのが普通だったが、今はそんな状況でゲートが発生してどうやって生き延びるかみたいな物語が見られるようになった。


「まっ、そうそうブレイクした状態のゲートなんて出ないけどな」


「あっ、そういうのフラグが立つ発言ってやつですよ」


「ゲートが出ても温泉街なら覚醒者ぐらい雇ってるだろ」


「そんなこと言ってると酷い目見るんですからね!」


 ーーーーー


「寝れないな……」


 夜中、ふと目が覚めた。

 昼間は特にすることもない。


 いつもなら素振りをしたりと体を動かすのだけど、旅館に来てまでそんなことはしない。

 体力が余っていて眠りが浅くて目が覚めてしまったのだ。


 相変わらず雨風の音も激しく、一度起きると目が冴えて眠れなくなってしまった。

 覚醒者になって面倒だなと思うことは、感覚が鋭くなってしまうことである。


 吹き付ける風、打ち付ける雨、風でしなる枝の音や何かが転がっていく音など、目を閉じると色々と聞こえてしまうのだ。


「多分眠れないな」


 完全に眠気がどっかいってしまった。

 このままじゃ眠れないとマサキは体を起こした。


 レイとイリーシャを起こさないようにそっと移動する。

 最初は若い男女が同じ部屋で寝るとはどうかと思ったが、寝てしまえばなんてこともない。

 

 着替えなど多少の配慮をすれば大きな問題もなかった。


「確かに入り口のところに自販機があったな……」


 少しお酒でもあれば眠れるかもしれないと思った。

 旅館の入り口のところにお酒も並ぶ自販機が置いてあったのを思い出して、買いに行こうと旅館の中をゆったりと歩いていく。


 昼間と違って半分ほど灯りが消してあって落ち着いた雰囲気の中、人気もなくて遠くに雨音が聞こえている。


「ビール……レモンサワー……カップ酒……意外と色々あるもんだな」


 未成年のイリーシャもいるし、酔っ払うほどに飲むつもりはない。

 一つ二つ適当に買おうと思っていたが、思いの外種類がある。


 あまりお酒を嗜むタイプでもないので、どれがいいのだろうと悩んでしまう。

 カップ麺とかお菓子なんてものもあって、そっちもいいかもなんて思う。


「佐田おじさんのところに!? 大丈夫なの?」


 眠くなるためにお酒でもと思っていたのに、お菓子と炭酸ジュースを選んでいたマサキの耳にダイチの声が聞こえてきた。

 なんだかちょっと切迫したような雰囲気がある。


「足の悪いお母さんが……」


「今覚醒者に連絡をしているらしい」


「大丈夫……なのかな?」


「どうかしましたか?」


「ああ、マサキさん! 起こしてしまいましたか?」


「眠れなくて何か買いに来たんだ。それより何か問題?」


 どうしても気になったので声をかけてみた。

 マサキが声をかけてきて、ダイチは驚いたような顔をする。


「その……ゲートが出たんです」


「ゲートが?」


 マサキは顔をしかめる。


「ウチから少し行ったところにある知り合いのところに」


「大丈夫なのか?」


「今この地域の警戒に当たってくれている覚醒者ギルドに連絡を取ってるところなんです」


「……じゃあ大丈夫なのかな?」


 温泉街、観光地というところで、ゲートが発生していないかの見回りやモンスターの警戒として覚醒者ギルドに警備を依頼している。

 旅館単独ではなく、地域としてお願いしているのでこうした時には対抗してくれるはずなのだ。


「あっ、すいません!」


 電話が鳴って、ダイチが出る。


「佐田おじさん! 大丈夫なの? …………えっ、モンスターが?」


 ダイチが会話する声を聞いて、マサキはふと寝る前にした会話のことを思い出した。

 他の助けが期待できないタイミングで、ブレイクを起こしたゲートが出現してモンスターが出てくるというものである。


「……ダイチ君、部屋の電気を消してカーテンを閉め切るように言って」


「マサキさん?」


「モンスターに見つかれば命はない。玄関の鍵を閉めて、できるならブレーカーから落とすんだ。二階とか気配の気づかれにくいところに隠れて、決して外は覗かないように」


「わ、分かりました!」


 あまりいい状況じゃなさそう。

 マサキはとっさに少しでも生存確率を上げるためのアドバイスをした。


 ダイチもマサキの真剣な目をしてすぐに電話の相手にそれを伝える。

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