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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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病院を守れ6

「……助けが来たか」


「俺たちが来たからにはもう安心だ。こちら高島。通報の覚醒者と患者たちを確保した」


 茶髪の男はタカシマというらしく、肩につけた無線機で状況を報告する。


「……了解した。もうすぐゲート近くまで攻略隊が来ているらしい。移動が難しい患者を無理に移動させるより、このまま攻略を待った方がいい」


「そうですね」


 動くのが難しい入院患者を一人ずつ運んでいくことはリスクも大きい。

 それならゲートが攻略されるまで守る方がリスクが少ないと判断した。


「何人か置いていく。この階にモンスターがいないか見回ってくるから君たちもここで患者を守ってくれ」


「分かりました」


「こんなところまで来て人を守るなんて見上げた奴らだよ、お前ら」


 タカシマはニッと笑うと三人の覚醒者を残して、他にモンスターや逃げ遅れた人がいないか探しに行った。


『緊急クエスト!

 病室を守れ! クリア!

 報酬:毒耐性(小)


 クリア報酬獲得!』


「おっ!」


 まだ危機が完全に去ったわけではないが、おおよその危機は去ったらしくて神の試練がクリアになった。

 マサキとイリーシャの体が一瞬淡く光る。


 耐性スキルなので特に強くなったような感じはないけれど、きっとどこかで役に立つ時が来るだろう。


「みなさん、安心してください。助けが来ましたよ」


 マサキはノックしながら病室に声をかける。

 声は聞こえているかもしれないが、外の状況を完全には分かっていないだろう。


「ほ、本当ですか?」


 そっとドアが開いてイトウが顔を覗かせる。

 マサキがサッと退けると、他の覚醒者の姿がイトウに見えた。


「よかった……」


 助けが来たことに胸を撫で下ろしたイトウはドアを開ける。


「えと……これからどうしたら?」


「患者さんを移動させるのは難しいのでもう少しこのまま耐えてください。もうすぐゲートも攻略して、病院内の安全も確保されると思います」


「分かりました。本当にありがとうございます!」


「いいんですよ。まだ終わってませんし、もう少し頑張りましょう」


「はい!」


 ここまで来ればもうモンスターが来ることもないし、来たとしても患者たちが襲われることもない。


「よし、それじゃあ配信もここまで。みんな、助かったよ」


 これ以上配信しても変わり映えしない絵しか撮れない。

 下手すると入院患者の顔が映ってしまうかもしれない。


 通報や情報提供などリアルタイムで動きを知らせてくれたことはとてもありがたかった。

 男が映っても喜ばないことは分かっている。


 最後にイリーシャに手を振ってもらって配信を終わりにした。


「皆さんは大丈夫ですか?」


 スマホをポケットにしまって改めて病室を確認する。

 体調が悪くなっていそうな人もおらず、ひとまずホッとする。


「あの……お兄さん」


「ん? どうかした?」


 カスミがそっと手を上げた。


「お……」


「お?」


 恥ずかしそうにもじもじとしていて、体調が悪いのだろうかと心配する。


「おトイレに……」


 カスミはやっと声を絞り出した。


「……なるほどね」


 生理現象は抑えられない。

 どうしてもそういったものがしたくなっても仕方ないことである。


「……大丈夫みたいだからトイレに行こう。俺とこの子がつくから」


 表で守ってくれている覚醒者に確認したところ、もう五階の安全はほとんど確保されているらしいかった。

 なのでマサキとイリーシャで護衛してトレイに連れていくことにした。


 カスミの病室から車椅子を持ってきて、トイレに向かう。


「すいません……こんな時に……」


「誰でもトイレは行きたくなるからね。謝ることはないよ」


 むしろあの状況で言い出せるのだから大したものである。


「俺はトイレ前で見張ってるからイリーシャ、手伝ってあげて」


「ん、分かった」


 緊急事態とはいってもさすがに女子トイレに入ることはできない。

 マサキはモンスターが来ないか見張ることにして、中で必要なことがあればイリーシャに任せることにした。


「おっと、今回のヒーロー様だな」


「ええと、タカシマさん」


「名前……そういえば教えたっけ?」


 トイレ前で待っていると巡回をしていたタカシマたちがトイレ前を通りかかった。


「無線で話す時に」


「ああ、そうか」


「それよりなんですか? そのヒーロー様って」


「俺が勝手に呼んでるだけだ。あんたらがいなかったらここにいた患者は助からなかっただろうな。間違いなくヒーローだ。たとえ仮面つけていたとしても……いや、仮面つけてた方がヒーローっぽいか?」


 気さくな人だなとマサキは思った。


「だがあんたの配信のせいで上はカンカンだ」


「えっ……何かまずかったですか?」


 勝手に混乱した現場を配信したことはまずかったかもしれない。

 何かを問題視されて怒られることもないこともない。


「おうとも。あの配信でこのフロアを見捨てて逃げた奴らが映ってた。本来ならあんたらがやってくれたことをそいつらがやるはずだったんだ。逃げた奴らに関する通報も入ってて上が怒ってるのさ」


「あー、じゃあ俺たちに怒ってるわけじゃ……」


「ないから安心しな」


 言い方が悪い。

 まあ怒っていないならいいとマサキはホッと胸を撫で下ろした。

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