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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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病院を守れ4

「この病室の子は足が動かないんです。運んであげられますか?」


「分かりました。……508号室」


 動くことも動かすことも難しい患者の病室に人を集めることにした。

 動ける人には自分で動いてもらい、動けない人は車椅子を使ったりマサキや看護師が補助して移動してもらう。


 マサキは足の動かない女の子を運ぶように指示された。

 病室の部屋番号は508。


「外では何が起きてるんですか? ナースコールも通じなくて……」


 中に入るとイリーシャと同じ年頃の女の子がベッドに寝ていた。

 ナースコールを手に不安気な顔をして、入ってきたマサキのことを見ている。


 508号室の患者は未来の毒王カズキの妹である姫咲香純キサキカスミだった。


「俺はマサキ、覚醒者だ。館内放送が聞こえただろ? ゲートダンジョンが発生したんだ。館内にはすでにモンスターが広がっていて君たちを俺の力だけで逃がすのは難しいから、一つに集めて助けが来るまで耐えることにしたんだよ」


 細かに状況を説明している時間はないが、パニックになられても困るのでざっくりと状況は伝える。

 名前のところは配信に乗らないように小さめの声に抑えてある。


「君を運ぼうと思うんだけど大丈夫かな?」


「あっ……はい」


 緊急事態でも許可なく女の子の体に触れるわけにはいかない。

 マサキが同意を求めるとカスミは素直に頷いた。


「ごめんよ」


「ひゃっ……!」


 マサキはスッと腕を差し込んで優しくカスミのことを抱き上げた。

 いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「むぅ」


 イリーシャは少しだけつまらないといった顔をする。

 緊急事態なので仕方ないと理解しつつも、カスミを羨ましいなとも思っていた。


 カスミは思わぬ運び方に顔を赤くしてそっとマサキにしがみついた。

 覚醒者の力を持ってすれば女の子の一人ぐらい軽いものである。


「他の人は?」


「病室にいらっしゃった方は集めました! 元々個人部屋の階ですし、魔力症患者もそれほど多くはないので」


 病室には十人の患者が集められた。

 動けないほど重篤な人は一人ぐらいで、あとは意識もあってそれなりに体を動かせるような人が多かった。


「助けが来るまでここで持ち堪えます。俺たちがドアの前で守りますから鍵は閉めずにドアを閉じてください。窓から入ってくる可能性もあるのでカーテンを閉めて目隠しをし、窓からも少し離れていてください」


 ここからは防衛戦となる。

 マサキがサラサラと注意事項を述べると、ヤマモトとイトウは青い顔をしながらも頷く。


 鍵を閉めてしまうと窓からモンスターが入ってきた時にすぐに逃げられなくなってしまう。

 どうせモンスター相手にドアなんか鍵をかけようと、それほど持たないことは分かっている。


「大丈夫。俺たちが守りますから」


 安心させる言葉を残してマサキとイリーシャは病室を出る。


「全部凍らせちゃう?」


「それもいいけど、魔力持つか?」


「……分かんない」


 道を全てイリーシャの魔法で塞いでしまうという方法もあるだろう。

 ただ問題が二つある。


 一つはイリーシャの魔力が持つかどうか。

 回帰前のイリーシャなら五階の通路の中を全て氷で塞いでも魔力に余裕があっただろう。


 しかし今のイリーシャはまだまだ駆け出しで、魔力の量も多くない。

 魔法は維持にも魔力を使う。


 通路を塞いで助けが来るまで維持し続けられるかは分からない。

 仮に維持できなくなってしまうとイリーシャは魔力切れで戦えないということになってしまう。


 そしてもう一つの問題は助けが来た時に、イリーシャの魔法で進めないなんてことにもなりかねないということである。

 道が塞がれていたら助けの覚醒者の進入も阻んでしまうのだ。


 ついでに魔法などがあるとモンスターが集まりやすいとか、道が塞がれているといざ逃げる時にも邪魔になる可能性もある。


「よいしょ。すいません。見ている人がいるなら現在どんな状況なのかコメントで教えてもらえますか?」


 マサキはイリーシャの胸につけたスマホを外す。

 画面には色々なコメントがついている。


 ゲートの状況やモンスターの状況はスマホでちまちま調べるよりも、みんなに調べてもらってまとめてもらったほうが早い。


 [情報求む]

 [ゲートは一般病棟六階に発生だって]

 [モンスターは口裂けウルフ。等級はEだとさ]

 [トラちゃん可愛い]


「ガオー」


 マサキが画面を見るとカメラはイリーシャに向けられる形となった。

 イリーシャはトラのように両手をあげてカメラサービスをする。


 すると一瞬でコメントが溢れて情報が流れかける。


「覚醒者協会……あるいは今回病院の護衛に当たっているギルドや緊急本部の連絡先分かる人がいますか?」


 マサキが質問するとすぐに答えが返ってくる。


「トラ、お前のスマホでこの番号にかけてくれ」


 すでに覚醒者協会の覚醒者が駆けつけていて、病院の護衛のギルドと対策本部を開設しているようだ。

 対策本部に繋がる連絡先を教えてもらったのでイリーシャに電話をかけてもらう。


「……繋がらない」


「何回もコールしろ。繋がったら……」


『緊急クエスト!

 病室を守れ!

 報酬:毒耐性(小)』


「これは!」


 マサキとイリーシャの前に突然表示が現れた。

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