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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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病院を守れ1

「まあ……そうだよな」


 病院の中庭に置いてあるベンチでマサキとイリーシャは並んで座っていた。

 イリーシャは売店で買ったメロンパンを食べていて、マサキは空を見上げている。


 今時個人情報がどうとか厳しくなっている。

 知らない他人が姫咲さんいますかと訪ねていっても病院側は答えてくれない。


 お見舞いも受付に申請しなきゃいけない。

 ただどの部屋に入院する誰のお見舞いとちゃんと申請せねばならないので、名前だけで突破するのは簡単なことじゃなかった。


 勝手に入院しているフロアに進入して歩き回ることもできない。

 警察なんて呼ばれたら困ってしまう。


「ちゃんと調べないマサキが悪い」


「おっしゃる通り……」


 イリーシャの指摘にマサキはなんの反論もできない。

 事前に少し調べれば分かることであり、もう一つの方の病院も同じくお見舞いには申請が必要であった。


「どうするかな……」


 二つの病院の距離は決して近くない。

 どちらかで張り込みをするともう一つを切り捨てることになってしまう。


「そもそも本人の方を探せば?」


「本人が分からないからこうして病院調べてるんだろ?」


「……社会人なら適当に呼び出せる」


「適当に…………あー、確かに」


 なんでこんなこと思いつかなかったのかとマサキは自分を殴りたい気分になった。

 病院は入院患者を守るために簡単には取次もしないし情報も教えてくれない。


 しかしカズキの方は用事があると伝えれば何かの反応は寄越してくれるだろう。

 いるなら電話を繋いでくれるかもしれないし、いないならいないと言われる。


 さも当然のことである。


「今から電話するか」


 マサキはささっと番号を調べ、研究所に電話をかける。

 まずはもう一つの病院の方にある研究所から。


「ええ……はい、すいません。姫咲さんいらっしゃいますか? …………いない。分かりました。ありがとうございます」


 なんともあっさり研究所にはいないと言われた。


「今度はこっちの方……」


 今いる病院に近い研究機関に電話をかける。


「……あっ、いますか。田中です。…………いたよ」


 なんとカズキが見つかった。

 電話を繋ぐと言われて名前を聞かれたのでとっさに嘘をついてしまった。


 繋いでいる最中に電話は切ってしまったので声までは聞けていないけれど、これでカズキの居場所は見つけられたのである。


「なんか美味いもん食うか?」


「焼き肉」


 マサキ一人だったらこんな簡単な方法にも気づかないで回りくどい方法でカズキの妹を探していたことだろう。

 多少イリーシャが呆れ返っているが今回はイリーシャの頭の柔らかさのおかげで助かった。


「んじゃ食いにいくか」


 カズキが近くにいるということは病院もここで間違いないだろうとマサキは思う。

 ただカズキが分かって、カズキの妹が入院している病院が分かったからと全て解決でもない。


 カズキの妹が入院しているということはそのうち病院にはゲートが発生してモンスターに襲われることになるということでもある。


「……今回はあんな暗い目をしなくていいようにしてやりたいな」


 ーーーーー


 毎日世界のどこかしらではゲートが出現している。

 日々覚醒者のニュースも多く流れている中で回帰前に病院にゲートが出現した日などマサキも覚えていない。


 つまりいつゲートが発生するのか分からないのだ。

 ただ毒王に関する噂を考えると時期的にはそう遠くないだろうと予想はしている。


 イリーシャと日々病院に通って入れるところをうろうろする不審者的な動きを繰り返していた。

 情報収集を兼ねて色んな人に声をかけたりしているうちに多少話しかけくれる人も出てくるようになった。


 いつの間にかマサキはイリーシャと兄妹で病弱なイリーシャに毎日会いにくる優しいお兄ちゃんということになっていた。


「イリーシャちゃんも優しいお兄ちゃんがいてよかったわね」


 病院に入院しているおばちゃんは昼間外を散歩することが日課になっている。

 ベンチに座るマサキとイリーシャに向こうから声をかけてくれる人で変な勘違いをして、それを広めている本人であった。


「ん」


 おばちゃんの言葉にイリーシャは大人しく頷く。

 マサキに対してはズバッと意見を言ったり割と普通に話すのだけど、他の人となると途端に無口な子になってしまう。


 人見知りする性格なのは仕方ない。

 むしろ自分には心を開いてくれているのだから特に問題もないとマサキは思っている。


「そういえば前に話していた子、いたわよ」


「本当ですか?」


 暇を持て余しているのかおばちゃんは色んな人と話していてかなり顔が広い。

 いわゆる情報通というやつで姫咲という苗字の子がいないかとそれとなく聞いていた。


 珍しい方の苗字なのでもしかしたらと思ったのだ。

 おばちゃんも全ての入院患者を把握しているわけじゃないので知らないと言っていたけど、調べてくれたようである。


「イリーシャちゃんの友達なのよね?」


「ええそうなんです」


「入院してる姿を見られたくないって気持ちも分かるわね。でもお見舞いしたいっていう気持ちも分かるわ」


 なぜ姫咲の妹を探しているのか。

 イリーシャが姫咲の妹の友達であるのだが、姫咲の妹は入院している姿を見られたくなくてイリーシャに入院している部屋のことを教えない、という設定にしてあった。


 我ながらうまい嘘であるとマサキも思う。

 疑わしく感じてもなかなか確認しにくい内容なのでバレにくい。


 ついでにおばちゃんはなぜか寡黙なイリーシャに対して好意的なので疑ってもいないようだった。

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