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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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氷の心を溶かしたら2

 女の子たちの状況は逮捕ではなく保護である。

 拘留するわけにもいかないが自由にさせるわけにもいかない。


 女の子たちはとあるホテルにいた。

 フロアを丸々貸し切ってその中では自由にしている。


 万が一に備えて覚醒者協会から覚醒者も護衛として派遣されていた。

 マサキがエレベーターを降りると身体チェックされる。


 当然武器なんか持ち込んでいないけれど引っかかったらとちょっとだけドキドキした。


「他の子もあなたに対しては態度が柔らかいですね」


 イリーシャは部屋にいるというので向かっていると他の子がたまたま別の部屋から出てきた。

 マサキは身をていして女の子たちを助けようとしたことがあるせいか、あるいは女の子たちの中心的な存在になっているイリーシャのおかげなのか軽く手を振ってくれた。


 まだ他の人に対しては警戒したような態度を取るらしく、マサキに対する態度にシンイチは驚いている。


「まあ命懸けだったので」


 貴重なアーティファクトまで使ったのだ、多少は感謝されてもいいだろうとは思う。

 奥の部屋がイリーシャの使っている部屋である。


「イリーシャ、俺だ。ウサミ……」


 事前にイリーシャには連絡してある。

 マサキがドアをノックするとすぐに開いてイリーシャが顔を覗かせた。


「待ってた」


「……あの子が笑った」


 イリーシャは笑顔でマサキを出迎えた。

 これまで全くニコリともしなかったイリーシャが笑顔を浮かべていることにシンイチもより驚いていた。


「入って」


「あ、うん」


 イリーシャはマサキの手を取って中に招き入れる。

 ドアが閉まりそうになってシンイチも慌てて中に入る。


「えっと……話がしたいと思ってきたんだけど」


「うん、聞いてる」


 そこそこ良いホテルの良い部屋なので広くて快適そうだった。

 ただ会議室や取調室のように正対して座って話すような感じの場所ではない。


 適当にソファーにでも座って話そうと思っていたのだけど、イリーシャはマサキを大きなベッドに座らせてその隣にイリーシャも座った。


「俺と一緒に来たいって聞いてるけど」


「うん、あなたと一緒がいい」


 レイも美人だがイリーシャも美人である。

 まだ幼い感じはあるが、微笑んで下から見上げられると幼さよりも妖艶さが際立つようだ。


「君にも祖国があるだろう? それに親だって。帰らなくてもいいのかい?」


「帰りたくない……私には親もいない」


 マサキの質問にイリーシャは表情を曇らせる。


「親のことはごめん。国に帰りたくないのも何か事情があるんだね?」


 イリーシャは頷いて答える。


「言いたくない?」


「言いたくない……」


「わかった。じゃあ聞かないよ」


「ありがとう」


 一々イリーシャの笑顔にドキッとしてしまいそうになる。


「俺と来たい理由を聞いていいかな?」


 助けたという恩はある。

 しかしそれだけで心を開くような子にも思えない。


 今もそうであるしなぜそんなに懐いてくれるのか不思議なのであった。


「あなたは私を守ってくれたから」


「守って……くれたから?」


「あなたはそんなに強くない。でも……私のことを守ろうとしてくれた。守られるのは……初めてだったから」


 なんだか国に帰りたくない、親がいないということも含めて深い事情を抱えていそうだ。


「あなたは私のことを嫌な目や怖い目で見ない」


「普通に接してるだけなんだけどな」


「私にとってその普通は嬉しい」


 何があったのかは分からないがこれまでの人生で嫌な目に遭ってきたんだろうとマサキはイリーシャのことが少し心配になった。


「あっ、ごめん!」


「ううん、嫌じゃない。もっと」


 なんだか少し悲しげにも見えたイリーシャの頭をマサキは無意識に撫でてしまった。

 安心してもらいたかったのかもしれない。


 ただ女の子の頭をむやみに撫でるものじゃないとすぐにハッとして降参するように両手を上げた。

 イリーシャとしては嫌じゃなかった。


 不意に撫でられたので驚きはしたもののほんの少しの懐かしさとマサキの手の温かさが心地良かった。


「あとは……あの人があなたなら信頼できるって」


 イリーシャはマサキの手を掴んで自分の頭に乗せる。


「あの人?」


「うん。私のことを見てくれている人……人じゃないかもしれないけど」


 仕方ないのでイリーシャの頭を撫でてやる。

 ネコのように目を細めるイリーシャは今にも喉を鳴らしそうだ。


「見てくれている人じゃない人……」


「それはなんでしょうか?」


 邪魔にならないように隅に立っているシンイチはイリーシャの言葉に眉をひそめる。

 ただマサキはそれがなんのことなのかうっすらと理解していた。


「……君が来たいというのならそれもいいかなと俺は思う」


「本当?」


「ああ、前の家はちょうど引っ越そうと思っていたし、もう少し綺麗なところを探そうと思う。ただ俺はお金がなくて……」


「じゃあ私が養ってあげる」


「えっ?」


「私も覚醒者。強い覚醒者はお金も稼げるんでしょ?」


「まあそうだけど……」


「じゃあ問題ないね」


「……問題ないこともないが…………上に相談してみよう」


 マサキはシンイチのことを見る。

 当人の意思は合致している。


 経済的な基盤など不安なところはあるけれど、イリーシャの処遇はかなり判断が難しいところで精神的な安定も必要なものではある。

 どの道イリーシャの魔力量から推定される能力の高さを保護施設で抑えるのは難しいだろう。


「ふぅ……どう説得したものか」


 シンイチはまた面倒なことになったとため息をついた。

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