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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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氷の女帝1

「また逆戻りか……」


 病院のベットでマサキはため息をついた。

 コートの男にやられかけたので検査入院ではあるもののまたしても病院に来ることになってしまった。


 病院に入院するような事態になんかなるものかと意気込んでいたのに早速これだから笑えない。


「これも早々に使うことになるとはな」


 マサキは手に持った亀のアーティファクトに視線を落とした。

 アーティファクト、あるいは魔道具と呼ばれるものは魔力を秘めていて持ち主の能力を高めたり魔法的な効果を発することができる道具のことを指す。


 安いアーティファクトでも結構良い値段がする。

 今回マサキが使ったアーティファクトの効果は絶対防御という高い防御力を持ったシールドを発生させるものなのだが、三回しか使用できないという大きなデメリットがあった。


 利用回数制限はあるもののかなり良いアーティファクトである。

 今のところ貧乏なはずのマサキがこんなものを持っているのには理由があった。


 先日マサキがレイと共に参加した大規模なゲート攻略には参加者の貢献度というものがあった。

 基本的にはモンスターを倒せば好感度を得られるのだが仲間のアシストをしたりすると貢献度にも反映される。


 途中で貢献度が見られるタイプもあれば最後まで判断基準が分からないタイプまで色々とあるのだが、そのゲート攻略では攻略後に一つのことが騒ぎとなっていた。

 貢献度一位が誰なのかわからないということである。


 貢献度もランキングが発表されちゃうゲートもあるのだが今回のゲートは貢献度の基準もわからなければランキングも分からなかった。

 周りに聞いて回ってある程度調べたところ一位から十位まで報酬がもらえたようだということは判明したのだが、肝心の一位が名乗り出ることもなく謎になっていた。


 ちなみに二位はボスを倒した人だったので余計に一位の存在が謎になっている。

 そして何を隠そう一位であるのがマサキであった。


「迷ったけど……持ってて正解だったな」


 亀のアーティファクトは貢献度一位の報酬としてもらったものだった。

 なんでマサキが貢献度一位になったのかはマサキでもわからない。


 ただカスミとレイも十位以内に入っていて、マサキはもしかしたら木を破壊することも貢献度に大きく関わるものだったのかもしれないと考えた。

 マサキが目を覚ました時に貢献度一位の表示があって驚いたものだが、もらったアーティファクトの効果も分からないので鑑定ができるところに出していた。


 つい先日戻ってきたばかりで売るか使うか悩んでいた。

 使うことがあるかもしれないと持っていったのだけど、女の子たちをコートの男が攻撃したので亀のアーティファクトで防御するしかなかった。


 本当に使うことになってしまったのは少し勿体無さを感じている。


「どうも、調子はいかがですか?」


「どうも。早く退院できないかなって思ってたところです」


 病室にシンイチが入ってきた。

 シンイチの方は怪我もなかったようである。


「検査入院ですのですぐに退院できるでしょう」


「それは良かったです。事件はどうなりました?」


「女の子は無事保護しました。もう一つのコンテナにあったのは新型の薬物……末端価格にするとんでもない金額になるような量でした。国内最大規模です」


 コンテナの中にあったのは薬物だった。

 魔石を砕いて混入させたりゲートから持ち込まれた植物から作られた新手の薬物で近年各国で警戒を強めていた。


「スーツの男はいわゆる暴力団の幹部だった。前回の捜査があったから自分の部下ではなく雷神会を利用したようだ。そして取引相手だが……逃げられてしまった」


 シンイチはため息をついた。


「一人強い覚醒者がいて、そのまま船で逃げられてしまった。追跡も試みたが振り切られてしまった」


「そう……なんですね」


「人身売買を行うような連中だ。これからも追いかけるが外国で息を潜められると難しいだろうな」


 おそらく捕まえるのは無理だろうとシンイチも思っているが他の国と連携を取って諦めずに捜査は続けていく。


「あの覚醒者も何者なのか……」


 強い覚醒者とはコートの男のことだった。


「……女の子たちはどうなりましたか?」


「あの子たちはこちらで保護しています。名前が書かれたリストがあったので他の国に照会して身元が分かり次第協議……最終的には国の保護の元に送還されることになるでしょう」


「無事に帰れるといいですね」


「どうやら全員覚醒者のようですしどこの国の子か分かれば引き取ってくれることでしょうね。それともう一つ」


「もう一つ?」


「彼女たちはそれぞれ国も違う。話す言葉も違うのだが一人だけ日本語を話せる子がいてな。その子が中でも中心的な存在のようなんだ。是非とも話を聞きたいところなんだが……君でなければ話さないというのだ」


「俺ですか?」


 急な話にマサキは驚く。

 なぜそこで自分の名前が出てくるのか不思議でならない。


 日本語を話せる子というのはあの子のことだろうという予想はついている。

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