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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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過去を清算せよ1

「色々あったし少し休みにしよう」


 病院じゃ落ち着かない。

 早めではあるものの無理を言って退院させてもらうことにした。


 覚醒してからここまで割と突っ走ってきた。

 そんなに次々と大きな出来事が起こるわけでもないので一度体を休めて状況を整理する時間を作ろうと思った。


 レイには大学もある。

 回帰前は覚醒して大学を中退してしまったようであるが、言っておけばよかったなんて口にしたことをマサキはうっすらと覚えていた。


 レイは成績もいいし一、二年の時に取れるだけ単位を取ってしまっているような人である。

 もうちょっと単位を取れば卒業までかこつけられるので卒業できるならしておいた方がいい。


 マサキは今回のゲート攻略でもらったお金でパソコンでも買って家でまだ出していない動画の編集でも行おうと考えていた。


「家に帰るの久しぶりだな」


 ゲートの攻略が始まる前はレイの家に数日泊まっていた。

 帰ろうとしたのだけどレイがどうぞと言うし、編集作業もしたかったからなし崩し的に泊まることになったのだ。


 若い男女が同じ屋根の下というのはどうだろうと思ったがマサキも回帰前を含めるともうおじさんと呼ばれる域である。

 ほんの少しドキドキはしたけど何事もなく編集作業にまい進した。


 そこからゲートの攻略で入院することになった。

 思えば意外と長く家を空けてしまったことになる。


「……ボロアパートだな」


 レイのアパートは綺麗でいいところだった。

 そりゃあ女子大生が住むのだから安いだけが取り柄のようなところには住まわないだろうとマサキも思う。


 今住んでいるところも悪いところではないだけど、レイのところと比べてしまうとどうしても見劣りする。


「おい、お前!」


「あっ? ……ああ、何の用事ですか、タナカ先輩?」


 マサキの部屋の前で待っている男がいた。

 誰だと思っているとマサキを見つけて相手は大きな声を出す。


 待っていた男はタナカであった。

 マサキのことをよくないバイトに引き込んだ張本人で、覚醒した日に縁を切るとボコボコにして追い返した相手だった。


 もう来ないと思っていたのに今日は何人か引き連れてきていて、マサキは復讐にでもきたのかと警戒する。


「チッ……てめ……」


「どいていろ」


「あっ……どうぞ」


 タナカよりも頭一つ身長の高い体つきのいい男に肩を掴まれてタナカは勢い減じて後ろに下がる。


「はじめまして。えーと……」


伊勢山イセヤマだ」


 イセヤマと名乗った男は覚醒者だなとマサキは思った。

 覚醒者は見た目で分かるものじゃない。


 分かりやすく魔力の影響を受けている人もいるがそうではなく一般人と同じ見た目をしている人がほとんどである。

 けれど覚醒者には魔力があるという大きな違いがある。


 未熟な覚醒者ほど自身の魔力をコントロールできずに体から魔力が漏れ出す。

 イセヤマから魔力を感じる。


 威圧的にも感じられる魔力はイセヤマの性格も表しているようだ。


「お前仕事から足洗いたいんだって?」


「もう洗ったつもりなんですけどね」


 相手がタメ口でくるならマサキも丁寧に対応することはしない。

 タナカと縁を切った時点で仕事など止めている。


 そもそもちゃんとした仕事のつもりもなかった。


「ふん、聞いていた通り生意気な態度だな。急に生意気になった理由は……お前、覚醒したんだろ?」


 これまで従順だったマサキが急に仕事を辞めると言い出した。

 そんな話を聞いたイセヤマはすぐに理由を察した。


 覚醒した。

 だからマサキが強気の態度に出たのだろうと考えたのである。


「だとしたら?」


 実際タナカをボコボコにした時はまだ覚醒していなかったが、覚醒した時の記憶はあるわけだし半分覚醒していたようなものではある。


「足を洗わせてやる。ただし条件がある」


「条件だと?」


 正式に契約書を交わしたわけでもない違法ギリギリのバイトのくせして辞めるのに条件など意味が分からない。

 マサキは思わず顔をしかめる。


「これからする仕事に人手が足りない。覚醒者の頭数が必要なんだが一人捕まっちまって穴が空いちまった」


「それを俺に手伝えと?」


「そうだ。いくらか分け前もくれてやるしこれで最後にしてやる」


「断ったら?」


「断るつもりなのか……?」


 イセヤマがマサキに向かって魔力を放つ。

 どうやらイセヤマはマサキのことを格下だと思っているようだ。


 高ランクの覚醒者なら良いギルドに入って良いところに越しているはすだ。

 いまだにこんなボロ屋に住んでいるということはそんなに高ランクではなかったのだろうと簡単に推測できてしまう。


 マサキは覚醒して日も浅いし戦っても負けることはないとイセヤマは自信満々である。


「……いつだ?」


「ふふ、それでいい」


 マサキは大人しく引き下がることにした。

 それを見てイセヤマはマサキが怖気付いたのだと鼻で笑う。


「あいつの着信拒否解除しておけ。また連絡させるからよ」


 それだけ言うとイセヤマは一度ガッチリとマサキの肩を掴む。


「逃げるなよ? 逃げたら……お前の家族も友達も恋人だって探し出して潰してやる」


「……逃げないよ」


「ふっ、行くぞ!。これで頭数は揃った」


 タナカがマサキのことを睨みつけながら横を通っていく。


「チッ……面倒なことになったな」


 タナカをボコボコにすれば終わると思ったのにとんだことになりそうだ。

 マサキは思わず舌打ちする。


 休もうと思っていたのに休むこともできなさそうだ。


「どうするかな……」


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