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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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木を燃やせ3

「あれですよ、あれ」


 カスミが視線を向けたのは亀の背中にある木であった。


「……あれはどうなさるつもりですか?」


 すでに覚醒者たちが駆けつけて亀と戦い始めている。

 普通に地面に生えていても争いになったのだ。


 今は共闘して戦っているけれど問題はボスを倒した時である。

 ボスである亀の背中に生えている木の実など熾烈な争奪戦になるに決まっている。


 木を燃やしたマサキが遠く離れたところから様子を窺っていることを見つけたカスミは何か作戦があるのかと尋ねにきたのだ。


「正直かなり難しいですね。俺も彼女も覚醒して日が浅くてまだ強くもありません。木を狙うことはおろかボスとまともに戦うのも厳しいんです」


 いざボスの近くまで来てみたけれどやっぱり無理だろうという考えになっていた。


「そうですか……」


 カスミは顔をしかめた。

 命をかけて木を狙えなどとマサキたちに戦うことを強要はできない。


 カスミだって正義感だけが全てではない。


「ただ……ミカミさんが手を貸してくれるなら」


「何かあるのですか?」


「ワンチャンあるかもしれないです」


 ーーーーー


 百人規模の戦いとなるとかなり大きなものとなる。

 正確には百人いないのだがそれでも戦闘はだいぶごちゃごちゃとしていた。


 大規模な攻撃方法を持つボスだったら厳しいだろうが亀は物理的に襲いかかってくるだけなので脅威度としてはあまり高くない。

 それでも巨体が迫ってくればかなりの迫力があるしマサキ如きは簡単に押し潰されてしまう。

 

「レイ、大丈夫か?」


「は、はい!」


 一応機会があれば狙うつもりもマサキにはあった。

 ただほとんど可能性はないだろうなと思っていたが、カスミがいるなら話は変わってくる。


 マサキとレイも亀に近づいた。

 戦う他の人に紛れて亀の攻撃に巻き込まれないように立ち回りながら機会を窺っている。


 やや後方で攻撃もせずに逃げ回るだけなら危ないこともない

 亀の攻撃はかなり単純で突進して体で押し潰そうとしたり手足で押し潰そうとしたりするぐらいだった。


 下に入り込まなきゃ近くにいてもやられる可能性は低い。

 ただやはり亀であり体の多くを覆っている甲羅のところは硬くて生半可な攻撃では傷すらつけられない。


 狙うなら甲羅から出ている顔や手足となるが、顔は位置が高くて狙いにくかった。

 今覚醒者たちは協力して前足を狙って亀の頭を攻撃できる位置に引きずり下ろそうと頑張っているところだった。


「あっ、あの人が実を拾いましたよ!」


「放っておけ! 取り戻しにはいけない」


 亀が動けば背中の木も大きく揺り動かされる。

 そのせいか木になっている実が時々外れて落ちてしまう。


 そのまま亀が潰してくれればいいのだが実が落ちてくることに気づいて我先にと拾うものはどうしても出てきてしまう。

 半ば囮のようにも使っているのか実を拾った直後に足が降ってきて潰されてしまった人もいるが実を持ち帰ることに成功した人もいた。


 回収してしまいぐらいの気分であるが拾ったものを寄越せなど言ったところで大人しく聞く人はいない。

 むしろ強盗のように見られるのがオチである。


 実を手に入れた者は運が良かった、あるいは運が悪かったとして諦めるしかない。


「頭が下がったぞ!」


 覚醒者たちの度重なる攻撃によって亀が耐えられずに足が体を支えきれなくなった。

 亀が地面に伏せるような体勢になって頭が近くなった。


 覚醒者たちが一気にその隙を狙う。


「あっ、ズルい!」


 みんなが亀を倒そうとしている中で違う動きを見せている人もいた。

 亀の上に登って木の実を取ろうとしている人がいるのだ。


 そうした動きが出ることは予想していたけれどなんとも醜い争奪戦がもう始まっているのだ。


「一斉攻撃だ!」


 亀も弱っている。

 ここで魔法を使って一気に勝負を決めてしまおうと誰かが号令を飛ばした。


 魔法を使える人が次々に自分の使える魔法を発動させていく。

 多くの人が炎を扱い、周りが赤く見えるほどに色々なところから魔法の炎が上がっている。


「よし……」


 マサキは視界の端でカスミも魔法を使おうとしていることを確認した。


「放てー!」


 再び誰かの号令で魔法が一斉に放たれる。

 カスミも一緒に魔法を放つ。


 ただその軌道は他の人と違っていた。


「瞬間拘束……みんな、少し動かないでくれ」


 マサキはスキルである瞬間拘束を発動させた。

 対象は亀を含めてその場にいる覚醒者全員。


 対象が多ければ多いほど拘束時間は短くなるが、ほんの一瞬体が動かなくなるだけでも人の思考は体が動かなくなったことに気を取られる。

 そのために実際の瞬間拘束の時間よりも長めに人は動けなくなる。


 それで十分だ。

 カスミが放った炎は真っ直ぐに亀の背中の木に向かって飛んでいった。


「だ、誰だ、あんなことをしたのは!」


 これがマサキの作戦だった。

 瞬間拘束によって場にいる人全員の動きを止めてその間に木を攻撃してしまう。


 カスミがいなければ他の人の攻撃をなんとか利用するしかなくて確実な遂行は無理だったが、カスミが炎を放ってくれるのなら実行できる可能性はぐんと上がる。

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