人類の敵2
「それで、どうするつもりなんだ?」
暴力云々は冗談として、マサキはカズキがただ黙っているだけとも思えなかった。
「正直山神のトップの座にはあまり興味はないんだけど、ただで兄貴たちに俺のものくれてやるのもな」
どうするのかと聞いたものの、どうするのかは何となくわかっている。
回帰前、ケンゴは山神グループを率いていた。
お金とグループの力を最大限に使って色々な人を助けていたのだ。
つまり、回帰前のケンゴは兄二人を押し退けて山神グループのトップの座についていたのである。
サラが生きている時点で回帰前と流れは変わっている。
しかしケンゴそのものに変わりはない。
どうやってトップに上り詰めたのか知らないけれども、今回もケンゴがトップになる可能性は高い。
「もう一つ困り事なんだけどさ……」
「もう一つ?」
「サラの方がやる気なんだよ」
ケンゴは深いため息をつく。
「私が死ぬのを期待してるなんて何事だ! なんて言って怒ってて……兄貴たちに渡すぐらいなら自分の持分くれてやるから、俺がトップになれってさ」
「そこは自分じゃないんだな」
怒って自分が一番になってやる、ではなくてケンゴにトップになれという。
いかにもサラらしいとマサキは思った。
「責任重大な仕事はやりたくないとさ。あいつは専業主婦が望みらしい」
「サラが専業主婦?」
「似合わないだろ?」
マサキとカズキは顔を見合わせて笑う。
サラはかなりアクティブな女性だ。
体が動かないから病院で静かにしているだけで、家庭に収まって静かにしているところはあまり想像できない。
「まあ、サラの支援得られるなら兄貴たちに比べて一歩リードしてるからな。やるだけやってみようとは思うよ」
「応援してるよ」
「ありがと。でももし……なんかあったらサラのこと頼めるか?」
「……ああ、任せとけ」
万が一なんてあるわけないと思うが、回帰前と違う流れに何が起こるかは分からない。
マサキは真剣な目をしたケンゴに真剣に頷き返す。
「これで安心して戦える」
冗談なのか、本気なのか、よくわからない目をしているとマサキは思った。
「だけど……死ぬなよ? せっかく仲直りできた親友の力、もうちょい借りたいんだ」
「サラの借りもあるしな。もちろん俺にできることなら力は貸すぜ。それに死ぬつもりもないよ。死にそうになったらお前に匿ってもらうことにするさ」
「いつでも来いよ」
今回ケンゴとの関係は悪くない。
山神グループが後ろ盾になってくれるなら覚醒者としての活動もしやすくなる。
「あとさ……ちょっとお願いみたいなものがあるんだけどさ」
この流れならいける。
そう思ったマサキは毒のこともついでにお願いしてみるのであった。
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「おっとまり〜」
遠征してきたので、近くの町でホテルをとってある。
ただ用意してくれたのはケンゴだから良いホテルだったりする。
良いホテルに泊まれることが嬉しいのか、イリーシャのテンションもちょっと高めだ。
「よかったのか、こんなところ」
「女の子たちを安いところになんか泊められるわけないだろ?」
「さすが金持ちは違うな」
「お前こそ、泊まれればいいなんて考えるのはやめておけよ」
「それでいいと思うんだけどな」
「世界初のゲート生配信者が聞いて呆れる」
ケンゴはため息をつく。
「攻略してるゲートみたろ? まだまだ稼ぐって領域じゃないんだよ」
「配信の方はどうなんだよ?」
「そっちの方は……結構儲けてんな」
二回目の配信も結構投げ銭が来ていた。
詳細な金額はまだ確認していないが、純粋な応援から冷やかし、それにマサキに見てほしいからというものもある。
海外の大型ギルドなんかは生配信のやり方が知りたくて、十万円という投げ銭に連絡先のメールアドレスを乗っけてきていた。
そんななので、合計金額を見てみれば決して少ない金額とは言えない。
「今ならそこそこ金あるだろ?」
「まあ、そうだな」
「スダさんはサラと年齢も近いし、良い友達になってくれればなと思うんだよ」
お前はサラの母親か、と思うのだけど、マサキとしてもレイがサラと仲良くなることに賛成である。
「次ぐらいにはサラも同行させるか?」
「近場なら……可能かもな」
今はサラも少しずつリハビリをしている。
カスミの方はかなり快方に向かっているけれど、やはりサラの方はしばらく歩いていない影響もあって筋力も落ちているらしい。
「こんな遠くは流石に少し厳しいかもな」
「ここまで遠くに来ることは……多分そうないよ」
バレないように、と理由をつけた。
それは別に嘘ではない。
ただ他の目的もある。
だから離れたところにあるゲートを選んだ。
「ともかく……もう怒ってないようだな?」
「いや、まだ怒ってるよ」
マサキはケンゴの顔色をうかがう。
自分の力を強化するために危ないことに手を出そうとしていた。
猛毒を実験のために集めたい理由を打ち明けた。
やはり命の危険があることはそう簡単には許可が降りなかった。
それだけではなく勝手に命の危険があることをしようとしていたのだから、珍しくケンゴも怒っていたのである。




