命を懸けて2
「色々試してみた。その中で一つ分かったことがある」
「分かったこと?」
イリーシャを連れてカスミのお見舞いに来たところ、カズキもいた。
どうやらカスミのお見舞いに来ることを聞いて、マサキを待っていたようだった。
「あの薬効成分……現状では実の状態が一番効果が高そうなんだ」
「じゃあ最大の効果を受けるには実のまま食べるしかない……ということですか?」
「そうだね。でも実のまま食べると毒で死んでしまう。僕のように完全な毒耐性があるならともかく、マサキ君は耐えられないだろう」
「効果を落とすしかないのですね」
マサキは少し渋い顔をする。
実の効果を受けられるのは一回限り。
できるだけ最大の効果を受けたいところであるが、確実に死に至ると分かっているなら流石にそんな方法は使えない。
効果が多少落ちても力を得られるなら妥協しようか、と考えていた。
「いや、そうでもない……」
「何か方法が?」
カズキはやや表情を曇らせている。
明るい提案ではなさそうだとマサキは感じた。
「……実の毒の何がダメかというと、実にしか含まれていないということだ。未知の毒……なんの研究も進んでおらず、かなり強い猛毒だということしか分かっていない」
「そう、ですね」
「だから解毒薬もなく、そのまま摂取しても命の保障がないんだ」
「ええ、それは分かっています」
「…………ならば他の毒で代用できるかもしれない。同じような猛毒でも、解毒薬があるもので代用できるなら能力向上の効果を受けた後に毒を解毒して無事に高い効果を得られるなら可能性がある」
ほんの少しのためらいの後に、カズキは覚悟したようにマサキの目を見つめる。
実は恐ろしいバランスの上で成り立っている。
毒と薬効成分がそれぞれうまく作用することで、実を食べた時に苦痛を感じることなく能力向上の恩恵を受けられるようになっていた。
ただ毒は消えずに残り、薬効成分はやがて消えてしまうので最終的に毒でやられてしまうことになる。
皮肉にも毒の成分が薬効成分の吸収を助けているなんて側面もあったのだ。
ならば別の毒が代用ができないかとカズキは考えた。
モンスターの毒にも対応するために、解毒薬などの研究も行われている。
実の毒に対する解毒薬を作るという方法もあるが、それよりも解毒薬がある毒で代用できるならしたほうが早い。
「ただそれもリスクはあるよ。実に含まれる毒に比べて苦痛はあるかもしれないし、毒の作用も従来と変化して解毒が間に合わないこともあるかもしれない」
人で試すわけにもいかないものなので、確実なことも言えない。
「結局は……高い効果を目指すと命に関わるかもしれないんです」
「それでもやらなきゃいけないんです」
どうせ何もしなきゃ世界は滅ぶ。
弱いまま生き残って、何もできない無力感に苛まれながら仲間を失っていくぐらいなら、命を懸けて強くなる道を選ぶ。
「もう何かを失うのはたくさんです。たとえ命懸けでも……やらせてください」
犯罪にならないのならなんだってやる。
自分の命を懸けるぐらいならどうってことはない。
まだ救うことができる世界なのだから、マサキは救いたかった。
「……一つだけ」
「なんですか?」
カズキにはマサキがそんな覚悟をする理由がわからない。
ただ、男の覚悟を止められはしないということは感じ取った。
「ケンゴ君の許可が欲しい。流石に猛毒を僕一人の権限で集めるのは難しくてね。彼が許可してくれるならトップダウンでどうにでもなるけど」
「つまり、全部話して、説得しろということですね?」
「その通り」
マサキは頭を抱える。
ケンゴはなかなかの強敵。
どう説得したものか、そう悩むのであった。




