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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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命を懸けて1

「正直言って……他の人に触らせるのも怖いぐらいのものですよ」


 マサキは研究所を訪れて、カズキに会っていた。

 今世の中は大騒ぎとなっている。


 初のゲート生配信を行ったのは誰なのかと、犯人探しは魔女狩りのような過激さすら見せ始めていた。

 過去の配信動画や生配信からマサキたちのことを特定しようとする動きも絶えない。


 レイなんかは少し怯えてしまっている。

 そこをケンゴが情報チームを雇って、燃え上がりすぎないように上手くコントロールしてくれていた。


 日本のみならず世界で話題となっているのために、だんだんと加熱が早くなってコントロールが効かなくなっているそうだが、ある程度は仕方ない。

 研究所にも生配信への興味を持っている人はいるだろうが、町中と違って誰が生配信をしているのだなんて会話はない。


 ちょっと落ち着ける感じがある。

 そんな研究所で、カズキは少し怖い顔をしていた。


「薬効成分……とでも言いますか。覚醒者の能力を増大させてくれる成分もありますが、こちらもまた……なかなか」


 カズキは思わず深いため息をつく。


「ウサミ君から受け取ったあの実は、全体としてはとんでもない劇薬だよ」


 今回研究所を訪ねてきたのは、以前お願いした実についての報告を聞くためだった。

 実とはレイと一緒に参加したゲートの中で確保した、覚醒者の力を高めてくれるものである。


 ただ実には毒が含まれていて、覚醒者の力を高めてくれるけれども代わりに毒によって死んでしまう。

 回帰前にも実によって被害者が出た。


 マサキは被害者を減らすという目的もあったが、実から毒を取り除いて安全性を高めて能力を上げることができることも知っていた。

 毒を扱うことができる研究者であるカズキに、実から毒を取り除いてもらおうと考えていたのだ。


「なかなか奇跡的な成分もしている。本来なら毒も薬効成分もかなり強力なんだけど、それぞれが互いを上手く抑えるような形になってる。だから最初は薬効成分が表に出て体を強くし、のちに薬効成分が消えて毒で苦しんで死んでいく……なんてことになるみたいだ」


「薬効成分だけ分離することはできそうですか?」


 実の中でどんなことが起きているのかは分かったが、マサキとしてはそんなことにあまり興味がない。

 必要なのは実の薬効成分とやらが使えるのかどうかである。


「分離は可能だ。なかなか繊細な作業にはなるけれど、毒を無効化することはできるよ」


「じゃあ……」


「ただ、さっきも言ったけど薬効成分の方も劇薬だ」


「使えない、ということですか?」


「いや、そういうわけじゃないけど……そのままだとかなり体に負担がかかる。いくらか効果を落として体に負担の少ないように調整するのがいいと思う」


 カズキはやや難しそうな顔をしている。


「そのままだとどれぐらい危険ですか?」


 だがマサキも効果を落としましょうとは言わない。


「……最悪の場合、命を落とすだろうね」


「落とさない場合、効果はどれぐらいですか?」


「覚醒者にもよるとは思う。覚醒者能力は一つぐらい上がるだろうね。潜在能力の方も一つや二つは等級が上がる可能性はある。まあ、等級が高いほど効果は薄いと思ってくれ」


「俺は覚醒者能力E、潜在能力Fです。効果は十分にありそうですね」


「……まさか、そのまま使うつもりかい?」


 マサキの目に覚悟が滲んでいることに、カズキは気がついた。


「最大効果を得たいんです。たとえ苦痛があるとしても」


 こんなふうに言われることはマサキも予想していた。

 だがマサキは効果を落として安全に、などとは考えていない。


 たとえ苦痛が伴うとしても最大効果を狙うつもりだった。


「決してオススメはできないよ? むしろやめた方が……」


「強くならなきゃいけないんです」


 まだまだ自分は弱い。

 その上に成長の可能性も小さい。


 今はまだレイたちと大きな差はないが、これから潜在能力の差からマサキとみんなの差は広がっていく。

 もっと強くならねばこれからのことに立ち向かっていけない。


 回帰前のように、ただほんの一瞬の隙を作るためだけにみんなに守られるのはもう嫌なのだ。


「…………分かった」


 カズキもダメだと言いたいところだったが、実はマサキから任されたものである。

 最大限マサキの希望を聞く必要がある。


 確実に死ぬというわけでもないし、最も高い効果を受けたいという希望があるならば絶対に拒否するわけにもいかない。


「もう少し時間をください。効果は落とさず、でも負担は減らせないかと試してみるので」


「ありがとうございます。死ぬぐらいきつくても大丈夫ですよ」


 マサキは笑う。

 一回死んだ人間である。


 命力丹の効果は凄まじかったが、代わりに体の中が溶けていく強い苦痛があった。

 死に至るかもしれないではなく、実際に死に至る苦痛をマサキは経験したことがある。


 たとえどんな苦痛でも、親しい人が、仲間が、そして何の罪も人々が皆死んでいく過酷な世界よりはマシである。


「このことは……みんなには秘密で」


「言えないですよ……こんなこと言ったら止められるし、きっと僕が怒られる」


 カズキは苦笑いを浮かべる。

 マサキの希望だからどうにか叶えようと思うが、レイを始めとして、ケンゴもこんなことを知ったら止めるかもしれない。


 だがマサキの決意が固いことは分かった。


「ありがとうございます。どうにかお願いしますね」


「できるだけ効果を下げないようにしながら危険性を減らすよ」


 カズキはため息をついた。

 なかなか難しいお願いを引き受けてしまったものだと思った。


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