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神様、あなたの推しを配信します~ダンジョンの中を配信するので俺にも世界を救えるように投げ銭ください~  作者: 犬型大


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一つ、変わったこと2

「こっち……きてくれる?」


 サラの弱々しい声にマサキは素直に応じる。

 ベッド横に立つ。


 サラの顔はまだ見えない。


「ちょっと、後ろ向いてくれる?」


「……ああ」


 こうなればサラのお願いに反抗することもない。

 マサキが体を逆に向けると、何かの音が後ろから聞こえてきた。


「……サラ? おっ……」


 一人でサラが動いているような、そんな音だと思った瞬間だった。

 マサキの後ろから腕が伸びてきて、ギュッと腰に抱きついた。


「サラ……一人で……」


「うん、私にも、効果あったんだ」


 サラはマサキに後ろから抱きついていた。

 全く体が動かせなかったサラが、自力でベッドから起き上がったということにマサキは驚きを隠せない。


「でもまだカスミちゃんのようには行かなくて、支えがなきゃ立ってられないんだ」


 サラの声の振動がマサキの背中に直接伝わってくる。


「また……立てるようになったよ……」


 サラの声は震えている。


「また……歩けるように…………なるんだよ」


「ああ……よかったよ」


「ありがとう……」


 もはや諦めていた。

 歩くことはおろか、このまま全身硬くなって死んでいくのだろうと思っていたのだ。


 だけどまた体が動くようになった。

 自ら手を伸ばして、相手を抱きしめることもできるようになった。


 カスミより症状の重かったサラはカスミのように歩いたりすることはできない。

 けれども立ち上がって相手にもたれかかるぐらいはできるようになっていた。


 サラはマサキの背中に顔をうずめる。


「こわかった……死にたくなかった」


 気丈に振る舞っていたものの、サラも不安で怖かったのである。

 マサキは背中に涙を感じたけれど何も言わずに、後ろから回されたサラの手に、自分の手を重ねる。


「もう大丈夫だ。治療を続けていけば……きっと良くなるさ」


「うん。マサキのおかげだね……」


「いや、俺じゃなくてカズキさんが」


「またそうやって……」


「うっ!」


 サラがマサキのお腹をギュッとつねる。


「キサキさんを連れてきてくれたのはマサキなんでしょ? それに薬のヒントだってくれたって。必要な材料まで取ってきてくれた。俺のおかげじゃない、なんて言わせないよ」


「……分かったよ。じゃあ一生言い続ける。俺のおかげだな」


「その方が、いいかな」


 サラが少し笑う。


「ねっ」


「なんだ?」


「立ってるの、疲れちゃった。だからベッドに座らせてくれる?」


 マサキと会話している間に、涙もおさまった。

 ただやはりまだ体は万全でなく、マサキを支えにしていても立っているのが辛くなってきている。


「無茶するなよ?」


「分かってるよ」


 マサキはサラの手を取って、振り向く。

 ちゃんと見たサラの顔は少し目が赤くなっていて、それでも嬉しそうに笑っていた。


 サラの体は十分に動かないので、ゆっくり慎重にベッドに座らせる。


「マサキ」


「おっ? ……サラ」


 座ろうとするサラを支えて前屈みになったマサキの腕を掴んでサラが引っ張る。

 あまり力を入れたらサラに負担がかかると、マサキはそのままサラに顔を寄せるような形になる。


 サラは少し体を倒して、マサキの頬にそっとキスをした。

 マサキは目を丸くして驚いている。


「……お礼」


 サラは顔を赤くしている。


「次はさ、頑張って歩けるようになるから……デートしてよ。約束してくれたら私も頑張れるから」


「……わかったよ。どこ行きたいか考えておいてくれ。俺はそういうの考えるの苦手だからな」


「……うん!」


 頬を赤くしたままサラは笑顔を浮かべる。

 これでサラの病気はきっと治るだろうとマサキは確信した。


 神に愛されることがなかったからなんて、クソッタレな理由で回帰したものだと最初は怒ったものだった。

 だがこうして目に見えて変えられたものがある。


 世界を救うという、起こしたい変化から見れば小さなものかもしれない。

 しかし、確実な変化。


 そしてマサキにとっては大きな変化だった。

 こうして変えていこう。


 その先ではきっと、世界の命運も変えることもできるはずだとマサキは思った。


「まあ、少しは感謝だな」


 サラの笑顔を見ていれば、回帰できたことにはありがたみを感じられた。

 生配信もできるようになった。


 今度は神様に気に入ってもらうだけである。

 小さな希望が、大きな希望となっていく。


 神様、見ていてください。

 ゲートの中でも人間は必死に足掻いていますので、せめて投げ銭でもください。


 そうマサキは思ったのだった。


 ーーー第二章完結ーーー

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