生配信3
「そうあわあわすることはないよ。いつもと同じくモンスターを倒せばいいんだ。よくある配信のようにアピールするのは……余裕ができてからだな」
「余裕ができたら……やるんですね」
ゲートの攻略を生配信する人が増えていくと、ただモンスターを倒すだけじゃ人は見てくれなくなる。
差別化を図るために覚醒者たちは色々と画策するのだ。
企画を立てたり、刺激的な格好をしたり、時には非道なことをして注目を集めて、視聴者や投げ銭を自分のものにしようとした。
そのうちそうした差別化も必要になるかもしれない。
だが今はそんなこと必要ないとマサキは思う。
なぜなら他に生配信している人なんかいないからだ。
他に競争相手がいないのだから、無理をして工夫する必要もない。
そもそもゲート攻略配信動画すらマサキたちの専売特許となっている。
しばらく生配信はマサキたちが独占する。
およそ半年はマサキたちだけが生配信して、一年後には他の人にも解禁となる予定だ。
その時までには固定の視聴者を掴んでおきたいが、今はまず覚醒者として慣れることが優先である。
「今すごい勢いでコメント来てるぞ」
ゲート内の動画を配信するだけでもそれなりに見られていたし、コメントもきていた。
しかし信憑性が低いし、どうやって撮影しているのか謎のままだったのでもうひと伸び足りない感じがあった。
最近はちょっと伸び悩んでいる感もあったが、ゲートの中生配信とあって視聴者もコメントもすごく伸びている。
後で確認するのが大変そうだ。
「ちなみに今回から投げ銭もできるんで、よかったらよろしくお願いします」
なんとタイミングの良いことに、投げ銭も解禁された。
これまで投稿してきた動画の積み重ねがようやく実を結んだ。
生配信にぶつけられたのは運が良かった。
「まあ、コメントは差し置いて、モンスターの討伐をしていこうか」
どうせ今コメントを拾って返していくなんてことはできない。
「おっ? ありがとうございます!」
いくつか色のついた枠のコメントが流れていった。
それは投げ銭、つまりお金を投じてくれたコメントである。
[レイレイ推しさん(5000円):生レイレイ来た!]
[世界を愛する者(100pt):ゲートの中を見れるなんてすごいですね。レイレイ中心に配信お願いします]
[トラ党(1000円):トラちゃん可愛いよ!]
[氷剣女帝(150pt):トラを映せバカ]
コメントがすごい速さで流れていくので、なかなかなんて書いてあるのか読むのも苦労する。
しかしここまでのレイレイファンやトラファンからの投げ銭がいくつかあることは確認できた。
「まあやっぱり二人は人気だな」
ダイチは男だし、新参者だ。
どうせ生ならレイとイリーシャを見たいというコメントの方が多い。
「とりあえず今回のモンスターを確認しておこうか。トラ、これ持って」
「はい」
マサキはスケッチブックをトラに渡す。
そこにはモンスターの写真や情報が載せてある。
事前に用意しておいたもので、こうした分かりやすさは視聴者にとっても大事なことをマサキは知っていた。
回帰前は有象無象、色々な配信を行っている人がいた。
ただ配信していれば見られるなどという甘えは捨てて、できることはしていくつもりだ。
戦う以上はグロい映像にもなりうる。
生配信ということで注目度は高いが、見続けてもらうための工夫はしておく。
「今回のモンスターはグラスウルフだ」
「グラスウルフ? 葉っぱでできた……犬?」
「ウルフだからオオカミだな」
ゲートに出てくるモンスターはグラスウルフというモンスターである。
芝生のような細かい草が寄り集まって、ウルフのような姿をしている。
ウルフというが植物系モンスターだ。
やたらと植物が多いのにも理由がある。
やはり生き物と戦えば血が出ることは多い。
それを嫌う人も少なからずいて、モンスターと戦う様子を見られない人も一定数存在する。
初めて見た配信がショッキングだったから、トラウマになったという人だっているのだ。
その点で植物系モンスターとの戦いはマイルドに映る。
人が傷つけば血は出るが、植物系モンスターを切っても血が出ないことがほとんど。
戦いの生々しさが少なくて、見ていてもグロさというものがかなり抑えられる。
だから今回も植物系モンスターを選んだ。
植物系は柔らかく戦いやすいモンスターも多いなんて理由もある。
モンスターのチョイスもまた、配信を見てもらうために大事な要素だった。
「まっ、そんなに強いモンスターじゃない。その分特に取れるような素材もないけど、安全が第一だからな」
お金で考えるとグラスウルフはあまり美味しい相手とはいえない。
だがグロくもなく、倒しやすく、割と相手として分かりやすいのでお金は二の次だ。
「それじゃあモンスター探すか」
生配信の衝撃と生配信を行っているという話の広まりも落ち着いてきただろう。
あまりウダウダしていると飽きられるので、ここらで動き出す。
「地面と同化してるかもしれないから気をつけろよ」
カメラとなるスマホは基本的にマサキが持つ。
どこかでスピードなんかに特化したカメラマンを仲間にしても良いかもしれないが、今はそんな人を雇う余裕はない。




