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あなたの隣で  作者: 淡雪
4/12

記念日

その後電話が終わって再び星宮先輩と二人の時間になったが、ぶっちゃけ気まずい。

向こうの事情は分かったけど今後どうすればいいのかもまとめきれてないしほんとどうしよう。そんな事を思いながら一人で頭を抱えて悩んでいると先輩の方から話しかけてきた。


「えっと、色々悩む所ではあると思うんだけど大事なお話してもいいかな?」


「はい、もちろんです。まず今後どうしていくのかしっかり話し合って…」


「これから一緒に暮らしていくのに緋色くんってのも何かよそよそしいよね。だからひーくんって呼んでもいいかな?」


「ってそこですか!?」


「えー、呼び方って大事じゃない?私の事はみぃって呼んでくれると嬉しいな」


「そんなおそれ多くて呼べませんよ…」


「呼んでくれると嬉しいな?ね?」


これ呼ばないと終わらない流れだな。今この状況でまず呼び方考えるあたり、思ったより天然よりの人か。

親が安全面で心配するのは、女の子ってだけが理由じゃなくてこんな一面もあるからなのかも。


「分かりました。じゃあみぃ先輩って呼ばせて頂きます」


「んー先輩もいらないんだけどな」


「いやいや、そこはマジで勘弁してください」


「しょうがないな。じゃ改めてよろしくね。ひーくん」


「よろしくお願いします。みぃ先輩」


コロコロ表情が変わってほんと可愛いなこの人。こんな感じで距離詰められて愛想良いんだから、それはモテるようなぁ。そんなこの人と同じ屋根の下で暮らすとか、学園の人に知られたら僕の人生終わるんじゃないかな。


「ちなみにみー先輩は荷物全て運び終わってるんですか?」


「元々そんなに私物は無かったし、基本的にはおうちにあるって聞いてたから終わってるよ。お部屋は空き部屋使っていいって事だったからそこに荷物は置かせてもらってる」


「了解です。そしたら夕飯でも買いに行ってきますよ。何か食べたいものありますか?」


「いや、私作ろうか?お世話になってる身だし」


「えーと。。とりあえず今日はお互い疲れてるでしょうし、時間もそれなりなので出来合いの物にしましょうか。それで今後の家事分担とかを後ほど決める形でどうでしょうか。」


「そうだね、せっかくそう言ってくれてるし今日はそうしようか。どこか買いに行ける所あるの?」


「ええ、近くに商店街があるのでそこで買って来ようかなと。そこそこ安いのでいつも利用しているんですよ」


「そうなんだ!じゃあ早速これから行こうか!」


「え、、一緒に来るんですか?僕買ってきますよ!引っ越しでお疲れでしょうから休んでいてください」


「そんなわけにも行かないでしょ!私も行くよ」


こちらの気持ちを全く察してくれないようで、ニコニコしながらこちらを見ていて引く様子もない。このまま話していてもしょうがないし、実際疲れているだろうから、時間をかけるのも申し訳ない。

結局こちらが根負けする形で一緒に買い物に行くことになった。





「うーん、風が気持ちいいねぇ」


「そうですね、大分暖かくなってきましたしね」


少しずつ夕焼けと夜空との境界が曖昧になってきた空を見上げながら二人で商店街を目指している。


「とりあえずお米は炊いてきたので何かおかず買って帰りますか」


「いいね!何かおすすめの店とかあるの??」


「そうですね。この時間帯だとお肉屋さんの揚げ物が揚げたてくらいの時間ですかね」


「揚げたての揚げ物!?最高だね!今日はそこにしようよ!」


言っておいてなんだが意外と庶民的な所もいけるんだな。何となく見た目だけだとお洒落なもの大好きみたいな感じだったから安心した。

今後の事も考えて好き嫌いとかも把握していかないと。


「いやー買った買った!」


「ほんとに買いましたね。一種類ずつくださいって言った時は焦りましたよ」


目的だった夕食のおかずを無事買うことができ、帰宅の途についている。始めは不思議そうにお店を見ていた先輩もだんだん楽しくなったのか揚げ物を大量購入していた。


「でも全部美味しそうだったんだもん。あんまりこういうお店で買うことも無かったから」


「あ、やっぱり無かったんですね。すみません、まだ先輩の好みが分かってなくて」


「違うよ」


「え?」


「先輩じゃなくてみぃでしょ?」


「あ、そっちですか、すみませんみぃ先輩」


「まぁよし!」


どうも先輩は呼び方にこだわりがあるらしい。今後気を付けよう。


「あと揚げ物は別に普段食べないとかじゃなくて、私の家の近くにこんなお肉屋さんとか入ってる商店街が無かったから珍しかったんだよ」


「そうなんですか、それなら良かったです」


「ねえねえ、家に着く前に一つ半分こして食べない??」


「あ、いいですね」


「じゃコロッケにしよう。じゃあ半分にして、こっちどうぞ!」


準備よく持っていた紙ナプキンでコロッケをくるんでこちらに渡してくれた。


「ありがとうございます」


「いえいえ、じゃ頂こうか!」


「「美味しい!」」


二人して同じリアクションをしたので思わず顔を見合わせて笑ってしまった。


「今日はコロッケ記念日だね」


そんな事を言いながらはにかんでこちらを見てくる


「サラダ記念日のパクりですか?」


「もう!わざわざ言わないでよ」


怒ったような、恥ずかしがるような、みぃ先輩の表情を眺めながら歩いていると、見慣れた我が家が見えてきた。



読んでいただいてありがとうございます。

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