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地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


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47/60

46.八階 〜昔の仲間と今度こその別れ〜

■地下迷宮 八階 ナイラ 治癒術師Lv8 商人Lv3


ためらいながら

ナイラは

ぽつりと言葉をこぼした


「何言ってんだよナイラぁ……」


「あきらめろってことよタック」


魔法使いの少女は

半泣き状態の戦士に

塩対応で告げた


ナイラが

ごめんなさいと

小さく言う


すると戦士ではなく

少女が首を横に振った


「いいのよ

 タックには

 あたしがいるんだから」


その場にいた全員が

各々少女の名前を呼んで

目を丸くした


彼女はまだ十三、四歳だ


戦士は二十代後半


戦士にとって魔法使いは

手のかかる妹のような存在だった


丸くした目を三人が見交わす


その六つの瞳が

少女に集まった


少女は頬をふくらませて言うのだ


「何よ

 あたしじゃいけないの?」


ナイラと盗賊は

手をあごの高さまであげて

ぶんぶんと首を横に振った


ためらいながら話しかけるのは

たった今告白された戦士だ


「シェリン……本気か?」


「本気も本気よ!

 失礼ね

 それで?

 あんたはあたしのこと

 そういう風には見てくれないの?

 タック」


「それは……けどよ

 振られてすぐに

 他の女になびくような

 軽い男にゃなりたくねぇな

 オレは」


「そうね

 そういういじっぱりなとこ

 大好きよ」


何となく

うまくいきそうな二人だ


そのやり取りをみて

ナイラと盗賊は

安堵の微笑みを交わし合った


 * * *


「本当にいいのか

 地上に帰らなくて

 上へ誘うのは確かに

 オレらの安全のためもあるが

 ──同じくらい

 オマエのためでもあるんだぜ」


「はい

 分かってますよ

 ありがとうございます

 でも今はまだ

 上には行きたくないんです」


ナイラのテントのそばで

元仲間の一行が

彼女に最終確認をしている


淡い微笑みだったナイラの表情が

徐々にその深みを増していく


やがて

にぱっ

と満面に笑うと

ナイラはこぶしを握って言った


「十階まであと少し

 ここまで来たら

 つらぬいたほうがいい

 ──後悔したくないですから!」


「……そっか

 そうだな

 いいなあオレらよりも進んでるじゃんか

 もうすぐ九階だろ?」


しんみりしていた戦士だったが

ナイラの笑顔につられてか

そちらも明るい顔になり

言った


ナイラは深くうなずく


「ええ

 でもレベルも九になるまでは

 八階でがんばるつもりなんです」


「九になるまで?」


「スフィンクス様との約束ですよ

 ね?」


「うむ……」


少し遠巻きにナイラたちを見守っていた

スフィンクスは考え深げに

ナイラと戦士を見比べて言った


「ナイラ

 そこの戦士はまだ治療の余地があるのだろう

 ついでに経験を積ませてもらえばどうだ」


「ああ

 そうしたいのはやまやまなんですが

 もう私の魔力が残ってないんですよ」


「回復薬があるだろう」


「なるべく置いておきたいです」


「そうではなく、その戦士が装備している分だ」


「え? それは傷薬では?」


薬を装備するのは戦闘になった時に

すぐに使えるようにするためだ


魔力の回復薬など戦士が持っていても仕方ない


確かに魔法使いに使うのもありだが

戦士は前列で敵と戦い

魔法使いは後列でそれを補助する


位置関係からしても戦士が装備することには

あまり意味がないのだ


しかしスフィンクスから出てきた言葉は

意外なものだった


「そこの男

 戦士というよりは

 魔法戦士だ

 ──そうだな?」


「……戦ってもないのに分かるんだな」


戦士のそれは肯定の言葉だった


彼は懐から銀の小瓶を取り出すと

ナイラに向けて差し出した


「オレもいざという時のために

 置いときたかったんだけどな

 まあ回復させてもらったほうがイイや

 このままじゃ戦闘になったら

 一巻の終わりだからなー」


「……頂戴します」


ナイラは小瓶の中の薬を飲み干すと

手で口元をぬぐって目を閉じた


まるで強い酒を飲んだ直後のように

体が芯から熱くなる


瞳が潤んでくるのが分かった


心臓がどきどきと高鳴り

手指の先まで力が満ちていく


彼女は深く深く静かな呼吸を繰り返した


そうして魔力に満たされた体が落ち着くと

ナイラは目の前に立つ戦士へ

命の精霊の祝福を与えるのだった


 * * *


スフィンクスを連れて

九階への転送陣を探している間

ナイラは興味深いものを見つけた


前々からうわさには聞いていた

湯治客が後を絶たない温泉が湧いていたのだ


ひょっとしたら

テント暮らしで回復しきらない体力が

少しはましになるかもしれない


そう思って入ってみることにした

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― 新着の感想 ―
半泣きの戦士タックでしたが、魔法使いの少女からの思わぬ言葉…『何となく うまくいきそうな二人だ』というナイラたちの気持ちに、一緒に頷いてしまいました。 九階へ向かうために魔力を回復させたいナイラにと…
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