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地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


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45/60

44.八階 〜復活の魔法は高難度のため取扱にご注意ください〜

■地下迷宮 八階 ナイラ 治癒術師Lv7 商人Lv3


治癒術師のレベルも五を超えると

仮死状態の人間を復活させる魔法が

使えるようになる


ただしレベル五で巻物に現れる復活魔法は

成功率が低いことで知られており

使用する者はほとんどいない


だからレベルが八になってから習得する

真復活魔法を使うのが

探索者たちの間ではお約束になっていた


「無理ですよ!

 ただでさえ成功率低いのに

 仮死状態通り越して

 魂のない亡骸を相手に

 どうしろって言うんです!?」


ナイラはまたしても会ってしまった

元仲間に食ってかかっていた


それもそのはず


復活の魔法は

回復のそれと比べて

危険な上

失敗したら二度と

やり直しが効かない


そういう

扱いが難しい魔法なのだ


「悪いことは言いません

 この身体を地上に連れて帰って

 街の神殿の祭司様に極復活魔法を

 かけてもらってください

 値は張りますが確実ですよ」


「それが酷な発言だって

 分からないわけじゃないだろ

 戦士抜きでどうやって

 上まで戻れっつーんだよ

 頼む

 復活魔法をかけて

 そして

 成功させてくれ!」


「復活魔法は失敗したら

 術者にも

 かなりの悪影響を及ぼします

 十中八九失敗すると分かっているものを

 どうして実行すると思うんですか

 せめて前もって魂を呼ぶくらいのことは

 してくださいよ」


治癒魔法では

対象になる命は

時に宝玉にたとえられる


回復魔法は

表面に付いた傷を直すが

復活魔法は

半分に割れた玉を直すようなものだ


難易度は比べものにならない


しかも話に聞くところによると

復活魔法に失敗すると

その行使者は己の

魂を削られてしまうという


結果

もし自分が絶命して

復活魔法の世話になる場面に

出くわしたとしても

術は成功しなくなる


さらに通常の回復魔法を使うのにも

それが可能な回数は半減するという


おそらく魔力の総量が

減ってしまうのだろう


どれほど回復薬で満タンにしても

元の器が小さければすぐに息切れする


せっかく鍛えて増やした魔力量を

みすみす削られるわけにはいかない


それに復活魔法は失敗したら

対象者が粉々の灰になってしまう


そこからもう一度

復活を試みる場合

その灰を一粒残らず

一ヶ所に集めて

もっと高位の術を

使わなければならないのだ


「魂を呼べばやってくれるか?」


「やりたくないです本当は

 私はまだ未熟者で

 復活魔法なんて

 荷が重すぎます」


「頼む

 ──頼むよ

 助けてくれナイラ

 この通りだ!」


「ああもう……」


ナイラは両手で自身の目元を覆い

顔を仰向けた


しばらくそうしていたが

やがて顔から手を離して

視線を正面に戻す


口元は真一文字に引き締めて

ある種の覚悟を決めた眼差しには

強い光が宿っていた


「魂は彼の装備品に宿らせてください

 できれば鎧がいいですが

 最悪身に付けているものなら

 何でもいいです」


「ありがとう!」


ナイラは一旦リボンを解いてから

手ぐしで髪を整えて

もう一度きっちりと結び直した


気合いを入れ直しているのだ


彼女は次に上衣の襟や裾を引っ張って

形を整えた


いよいよやる気だ


探索者たちが口々に魂へ呼びかける


するとナイラの眼には

深層階にいる探索者にしてはか細い光が

彼の胸当てに宿ったのが映った


一瞬危ぶむが

彼の仲間たちに目線をやると

力強くうなずいてみせたため

魔法の詠唱を開始することにした


(から)(うつわ)に気が満つる時

 一度(ひとたび)は絶えし緒にも

 繋がる命が結ばれる……」


彼の傷口は血こそ流れていないものの

切り口はきれいで

まだ真新しいようだった


この迷宮ではいつもこうなるのだ


外へ出てしまうと

一気に傷が進行するが

中にいる間は

氷で冷やして保存しているのと

近い状態になり

傷を負っても治療しやすい


出だしも途中経過も悪くない

これは成功するかもしれない


ナイラは内心で少しだけ安堵した


その直後に油断を自戒する

必要があることを悟った


胸当てから魂が這い出たのだ


その動きは蛇に似ていた


おそらくモンスターの魂が

潜り込んでいたのだろう


やられた


しかし失敗しそうになったおかげで

ナイラにはもっと色々なものが

見えるようになっていた


遠まきに見守ってくれている

スフィンクスの

さらに向こう側に

立っているのだ

復活を望まれている

戦士の魂が


しかし彼は今

迷いもあらわに腰を引き

そこから動けずにいる


ナイラは呪文の詠唱は続けておいて

彼へ向かって手招きした


だが一体どうしたというのか

彼はためらいながら

一歩も動かない


ナイラのジェスチャーのおかげで

彼の仲間も

戦士の魂の居場所に気づいたようだ


彼らは我先にと

魂のいる場所へ駆け寄った


そして口々に

身体の中へ入るようにと

説得するのだった


しかし彼はかたくなだった

困った様子で動こうとしない


もうすぐ詠唱が終わってしまう

このままでは復活魔法は失敗に終わる


ナイラは息継ぎをした

元々高かった緊張がより高まっていく


 ──こうなったら──


ナイラは大博打を打つ決心をした

賭けるのは自分の命だ


詠唱を終えるその瞬間

自分の魂を彼の身体に宿らせる


魂が入ってさえいれば

復活魔法そのものは成功するはずだ


その後でナイラは

自分の身体の中に戻る


すると空になった彼の肉体に

本来の持ち主の魂が

帰ってきやすいだろうという考えだった


しかしこれは

本当にギャンブルだ


赤の他人の体内に入ったりして

果たして無事に出て来られるものだろうか

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― 新着の感想 ―
復活魔法、成功すれば本当に凄いですが、リスクも大きいのですね…なんとか目の前の戦士を甦らせようとするナイラの決死の覚悟が、とても伝わってきました。 自分自身の命を賭けて、他人の身体に入ってまた出る、…
 嬢ちゃん無茶しすぎだぁぁぁぁぁ! と思ってしまった。  旧知の仲だからって、そこで命賭けるのはお人好しを越えて酔狂にも思える。  でもそれがナイラさんらしさなのか。  冒険者的に死者蘇生ってどうな…
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