第2話 魔法は使えないの
ベランダに銀髪碧眼で水色のワンピースを着た魔法使いが現れた。冬なのに裸足、ワンピースと言っても紐のワンピース。見るからに寒そう。
腰まで伸びた長い銀髪に夜でも一際輝く綺麗な碧い瞳。
「私を喚んだかしら?」
魔法使いは都市伝説じゃなかった。友達に自慢しよう。
「……」
俺は驚きの余り、数秒固まっていた。
しばらくして――
「ああ。俺を速読にさせてくれ」
「無理よ」
「はぁ!?」
「私、魔法なんて使えないから」
……え? 嘘だろ?
こいつほんとに魔法使い?
けど空は飛べてるし、手にはステッキのようなものを持っている。明らかに不審者だけど、魔法使いのオーラは漂わせている。魔法が使えない、というだけでこいつを魔法使いじゃない、と決めつけるのはまだ早い。
「どんな願いも叶えてくれるって……」
「なに? そんな噂、信じてたの? 馬鹿じゃない?」
ダメだ、こいつ。召喚しなきゃ良かった。多分このままこいつと絡んでたら、俺のメンタル、ズタボロになるに違いない。
どうやら、この魔法使い、毒舌クーデレらしい。容姿は整ってるのに……残念だ。
「じゃあ何で魔法が使えないのに、俺の前に現れたんだよ」
「喚ばれたから」
それはその通りだ。
「それは、ごめん。もう帰っていいぞ」
「嫌よ。あんたの安眠、妨害したいから」
はああああ!?
「お前、性格悪いって言われない?」
「んー、初めて会った人間があんただから、言われたことない」
だろうな。これから沢山言われるんだよ。
「私の名前はステラ。あんたの名前は?」
知らない魔法使いに名前を気安く教えていいのだろうか。
「九条ともり。高校二年生だ」
「ともり、ね。オッケー。でも私、学年なんて聞いてないけど?」
「……っ!」
後でこいつの鼻に七味唐辛子入れようかな。そして、極めつけに饗した大福に山葵も忘れずに。
でも俺は知らなかった。ステラは家の中には入れないことに。
ステラは優しくしたら、少しは性格変わるかもしれない。そんな微かな希望を込めて、こう告げた。
「取りあえず寒いから、部屋の中入れよ」
「――私、ベランダから動けないの」
……え?
どういう意味だ、それ。