恋愛初心者のアピール方法_視点変更
一日三話と思っていたのですが、個人的にヴォルさん視点が好きなので、続けて投稿します。
続きは明日からまた三話ずつ投稿していきます。
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『団長さ、婚前交渉しないって言ってたけど、それってもしかしてキスも?』
副団長、リーツ・プラトゥースに相談した俺は、そう問われ大きく頷いた。
『当たり前だろう』
その俺の返答に、リーツは大きく息を吐きだして、そしてその分深く息を吸う。
『当たり前じゃないでしょ!格式の高い貴族や王族同士の結婚じゃあるまいし!普通にキスくらいするわ!
エッチは本人同士によるけど!それでもデートしてお互いドキドキキュンキュンしてるのにキスもないとか愛想つかされるわ!』
一息で言いきったリーツの言葉に、俺はというと大きな、それは大きな衝撃を受けていた。
耳に突き刺さるほどの声量は、この際目を瞑る。
『それは…本当か…?』
あまりの衝撃に思わず声が震える。
アレンのあの柔らかそうな髪、華奢な体、更には小さな唇に、婚姻前に、本当に、本当に触れてもいいのだろうか。
俺の様子に鼻を鳴らして座り直すリーツは「酒のみてー」と言いながらも水を一口煽る。
『当たり前だよ。不安なら聞けばいいんだよ。そんで承諾したらその子も“そうしたい”って思っているんだ』
そうか。いいのか。
と、酔ってもないのに想像しただけでふわふわしてくる俺の思考を察してか、リーツが話を進める。
『で、恋愛初心者の団長はもういい年です。
相手が子供だからといって、子供に合わせた恋愛をすると一向に意識してもらえないってことはわかる?』
『あ、ああ…』
『なら、意識してもらえるようにグイグイ責めること!』
『ぐ、ぐいぐい…?具体的には、何をすればいいんだ…?』
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「あの時いたヴォル、さんは、私とお義母さんの話聞いてたと思うけど…
自分で好きな、…夢中になってもっとやりたくなるようなことって、私自分でわからなくて…
お義母さんの言う通りだなって…、私全然他の事に目を向けてなかったってことに気付かされた…。
だから、自分の近くに”プロ”がいる”料理”が一番手にしやすい物かなって、お義父さんにお願いして教えて貰ってるの」
そういったアレンは、”全然できないけど”と苦笑するが、それでも他の意見を受け入れ、前に進もうとする姿勢は称賛に値するものだった。
誇りが失われつつある貴族の大半は己のメンツばかりを気にし、自分の意志にそぐわないものは例えそれが正当な意見だとしても受け入れられることは勿論、下手をされると社会的に消されてしまう。
そして平民でもそのような意志を持った人間は、決して多くない。
「アレンは凄いな」
だからこそ俺の素直な気持ちを伝えると、アレンは本当に驚いていた。
「自分以外の人の言葉を素直に受け止められるところも、前を向いて頑張っているところも」
そう告げると難しそうな顔をしているが、それでも言われて嬉しかったのか、頬が赤く染まる。
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『いい雰囲気になったら、ここぞとばかりに積極的に!』
グ!と拳を握るリーツに俺は具体的にと問う。
『え?積極的にがわからない?あのねー、手をつなぐとか抱きしめるとかあるでしょー?
意識してもらえたら、絶対その子の態度っていうか雰囲気が変わるから!
とりあえず団長は顔もいいんだからさ、優しくして、微笑んで、抱きしめればいいんだって!』
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ふとリーツの言葉を思い出す。
そもそもいい雰囲気自体がどういうものかわからなかった俺は、アレンを町の中連れていた時も、この建物に着いた時も、手に触れ握りしめていたわけだが、リーツの言っていた“意識してもらえているような雰囲気”は感じとれていなかった。
が、なんとなく“今”だ、と思ったのだ。
そっと、宝物に触れるように優しくアレンの頬に触れ、微笑む。
「とても魅力的で、俺には眩しいよ」
その瞬間、アレンの肌が朱に染まる。
「あ、ああああのの!?」
真っ赤に染まり、どもるアレンにリーツの言っていたことは“これなのか”と思った。
『意識してもらえたら、絶対その子の態度っていうか雰囲気が変わるから!』
少しでも俺を恋愛対象だと認識してもらえたのだろうか。
そう思ったら嬉しくなった。
(…積極的に…)
思わずごくりと唾をのむ。
「抱きしめても、いいだろうか?」
積極的に、リーツのアドバイス通り行動している俺だが、今”抱きしめたい”と思ったのも本当だ。
だが、急にこのようなことをお願いして断られたらどうすればいい。
折角招きいれることができたのに、断られて、その後気まずくならないだろうか。
そもそも想いを伝えているわけでもない俺は、恋仲にもなれていない。
拒否されることも、承諾されることもなく、沈黙したままのアレンに弱弱しい声になってしまったが、もう一度問うとコクリと頷いてくれた。
承諾してもらえたと、喜びに胸が高ぶりながら、そっとアレンを腕の中におさめる。
初めて抱きしめることが出来たアレンの体は本当に華奢で小さかった。
これ以上力を込めてしまったら骨が折れるだけではなく、砕けるんじゃないかと思うほど。
だから、怪我をさせぬうちに、礼を伝えて体を離す。
ああ、顔が熱い。
燃えるようだと思いながら、アレンから微かに香る甘い香りに目を細める。
「とんでもないです」
小さく呟かれたアレンの声に、また感情が高ぶった。
(アレンを抱きしめた感覚が体から抜けない…)
感情が高ぶりすぎて、ドキドキして、心臓が口から飛び出してしまいそうだった。
アレンの隣から移動して、水魔法を用いて頸動脈を冷やす。
幾分か気持ちが落ち着いてから、口を開いた。
「アレンが構わないなら、魔法を教えたいんだが…」
「…え?」
パタパタと手で仰ぐアレンと、目が合う。
(か、かわ___!)
ダメだ!とすぐに顔をそらし、何食わぬ顔して話を続ける。
きっとこの光景をリーツに見られたら、怒られるだろう。
『なにやってんだ!』と。
仕方ない。
自分のしたこととはいえ、今アレンと顔を合わせるとどうなるかわからないんだ。
「アレンは10歳で登録したのだろう?それだと講座が受けられないのではないか?
先程自分でも魔法球を利用する以外の魔法は使ったことは無いと言っていたから、…俺の休日の日に合わせることになってしまうが、俺がアレンに教えたい。
いや、こうしてアレンと会う口実を作りたいんだ」
どうか、頼む。
この願いを受け入れてくれ。
そうして次のデート、いや、魔法を教えるという口実でアレンと会う約束をし、そして共に昼食をとった。
ここは会議室も備えられている為、弁当を予約しておけば持ってきてくれる。
休日の日でもそれを利用するのは可能な為_本当は良いお店に連れて行きたかったのだが、”その子平民なんでしょ?!気持ち察して弁当にした方がその子も無駄な気を使わないしで喜ばれるんじゃないの?”というリーツのアドバイスがあり_、予約しておいたのだ。
自分の暴走の結果だとしてもどうなることかと思ったが、頸動脈を冷やしながらが幸いしたのか、どうにかまとも対応をとることが出来た。
昼食も、アレンは持ち込まれた弁当に嫌な顔することはなく、アレンと魔法について話ながらゆっくりとした時間を送ることが出来たのだった。




