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無償の愛  作者: あお


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訪問




レインがきて、2回目の朝。

レインが王都に戻る日とあって、今日は私からも抱き着きながら朝を迎えた。

自分じゃない他の人の体温って凄く心地よくて、このままずっとくっついていたい気持に鞭を打って布団から起き上がる。

体を起こすと外気に触れたレインもうっすらと目を覚ました。


「おはよ、レイン」

「…はよ」


まだ眠いのか枕に顔を埋めるレインに布団を掛けなおして、着替えを済ませる。


「先下に行くね。朝ごはんの用意出来たら呼ぶから、下りてきてよ?」


うーと呻き声のような声で返すレインにくすりと笑い、顔を洗った後洗濯していると思うお義母さんのもとに向かった。

そして洗濯物を干し終え、お義父さんが朝食の用意を終える頃レインが装備を整えた格好で降りてきたので、揃ってご飯を食べる。

朝食を食べながら飛び交う会話は、レインを心配する声が主だった。

レインは陽も出ているし、引率者がいるから大丈夫だというが、それでも魔物の存在がある壁の外を移動するのだから心配する気持ちを止められない事は仕方ない。

私だって心配だもの。


「じゃあそろそろ行くよ」


ご飯も食べて少しした後レインが立ちあがる。

なんでも引率者の騎士は各家に尋ねにくるのではなく、各街や村で集合場所を決めて集まったのち出発するのだ。

出来れば太陽のあるうちにというのは皆共通の思いで、朝の早い段階で集合するらしい。


「元気でやれよ」


お義父さんがレインの頭を撫でながら激励する。

私もお義母さんもレインの姿が見えなくなるまで見送って、そして、いつも通りに店を開けた。










開店直後のお昼前に来るお客さんは大体決まった人たちで、所謂常連さん。

私より少し年上くらいの男性から40代くらいの男性の客層が主だ。


短い間だったけど、ずっと一緒にいたレインが発ってから気分が落ち込み気味の私に、お客さんたちが励ますように声をかけてくれる。

なんて優しいんだろうと身に染みて感じながら、必死に動いた。

食器洗いをしていると沈んでいた心に整理がつきやすいのか、お義父さんのエプロンに気付いたお客さんの声とか周りの声が聞こえてきた。

自慢するお義父さんの様子に、私も嬉しく思いながら恥ずかしくなった。


(そのエプロンも髪留めもレインと買いにいったんだよ)


食器洗いも余裕が出てきて、といってもまだまだだけれど、それでも閉店前ぐらいにはお義母さんの手伝いを出来るほどまでになった私は、お義父さんの料理を持ってお客さんに渡しに行く。


「あれ?アレンちゃんも新しいエプロン?」


この人はよくお義父さんと話をしながら食事を楽しんでいる常連さんのコニーさん。

大体ピークを過ぎたあたりから閉店までの間にやってくる。

ちなみにお義父さんと同い年らしい。


「はい!お義父さんとお揃いです!」


へへと照れながら返すと、そうかそうかとコニーさんが頷いた後大声を上げた。


「おおおお、お義父さん!?!?お前!もう養子縁組したのか!」


厨房に向かって叫ぶコニーさんに、お義父さんも厨房から答える。


「気付くのおそ!」

「言えや!」


そんな二人のやりとりを眺めていたら、コニーさんが私に気付いて、


「よかったな、そのエプロンも似合ってるぞ」


と笑って褒めてくれた。


コニーさんは建築のお仕事関係をしていて、見た目は筋肉モリモリでかなりゴツイ。

袖がないタンクトップから表れている二の腕は陽にかなり焼けていて、黒光りしている。

コニーさんに「ありがとう」と伝えて厨房に戻ろうとしたところで、次のお客さんが来店した。

最近常連さんになったジャンさんだ。

お母さんとお父さんの間くらいの身長で、今年成人したといってたから15歳。

10歳で(登録申請した)私の5つ上だ。

コニーさんと同じところで働いているらしいけど、まだまだガッシリといった感じではないが、程よく筋肉がついてて、短髪で、何か女子に持てそうな感じのスポーツマンって感じの人。


「ジャンさんいらっしゃい!」


声をかけるとニカって微笑むジャンさんは、お兄さんって感じで私はすっかり懐いてしまった。


「新しいエプロンか?似合ってるな」

「ありがとう」


ジャンさんが席に着くとお義母さんが見計らったように、小鉢とサラダを渡す。

お義母さんに対してジャンさんが軽く頭を下げると、私の方をみて口を開く。


「…、あのさ_」

「アレン!洗い物!」

「はーい!…ジャンさん、ゆっくりしていってね」

「あ、ああ…」


なにか言いかけたような気もするが、特に何も言わなかったジャンさんに私は気の所為だと思って、ゆっくりしていくよう声をかけてから厨房に戻った。


洗い物が一段落したころにはコニーさんもジャンさんも帰っていて、他のお客さんもいないし、今日はヴォルティスさんがくるということで早めに店を閉めることにした。

厨房でお皿に盛りつけているお義父さんの手元には4枚のお皿。


「4人分?」

「ああ、騎士さんがどっかで食べてくるなら余った分は明日にでも食べればいいが、食べてこなかった場合、俺たちだけで食べるわけには行かねーからな」

「あ、そっか…。確認しておけばよかったね、ごめん」

「気にすんな。3人分も4人分もかわらねーから」


お義父さんの慰めの言葉に素直に受け止めて頷いた。


「それより、今日は店の片づけじゃなくてシャワー室洗ってきてくれねーか?

昨日サリーナも言ってたが、話の流れによってはアレン一人にするかもしれねーし」

「うん!わかった!」

「終わったら言えよ?お湯いれっから!」


「はーい」と返事して2階に駆け上がる。


そうして一通り終えた頃、ヴォルティスさんがやってきた。

鎧姿ではなく黒いズボンに白のシャツをインさせて、薄い上着を羽織るヴォルティスさん。

イケメンは何を着てもイケメンだった。


「私はヴォルティス・フォンティーヌ、第二騎士団の団長をしております。

この度は急な来訪になってしまい申し訳ございません」


出迎えた私の両親に頭を下げるヴォルティスさんにお義母さんが慌てる。


「いえ!問題ないですわ!それよりも騎士様が訪れるだけでも光栄な事です!」

「ええ。気にしないで頂けるとこちらとしても気が落ち着けます。

俺はここの店長で、アレンの父親であるインディング・フィーズ。

こちらは家内のサリーナだ…です。さあ、入ってください」


ヴォルティスさんが中に入ったことを確認して、私は扉を閉める。

扉を閉めていた私を待つように立っていたヴォルティスさんに駆け寄った。


「ヴォルティスさんはご飯は食べて来ましたか?」

「いや、仕事が終わってそのまま来たからまだ食べていないんだ」

「まぁ!それなら是非食べていってください!」


お義母さんの提案に一度断ろうとするヴォルティスさんに、既にお義父さんの出来上がった料理を見せるとと微笑んだ後に頷いてくれた。


「では頂いていきましょう」


ヴォルティスさんの食べ方を横目で見ながら、私はレインの話を思い出していた。


(確か王都にいるような貴族っていってたよね)


私たちと同じ食事内容に同じ食器を使っている筈なのに、その動作はとてもきれいだ。

鮮麗されているといってもいいほどに、隣で食べるのが少し恥ずかしく思えてくる。


「それで…、騎士様はお詫びとしてアレンを招待したいと伺いましたが…」

「ええ、そうです。怪我をさせてはいませんでしたが、アレンには痛い思いをさせてしまった事を償いたく、招待してもいいでしょうか?」


お義父さんとお義母さんが顔を見合わせてから、皆食べ終わったお皿を片付けようと手を伸ばしていた私をみる。


「アレンは騎士様の騎士寮に行ってみたい?」

「え、うん…?」

「嫌じゃない?」

「嫌じゃないよ?」


昨日貴族区を見てきて、大きな建物だなと思ったのと同時に、中がどうなっているのかも疑問に思っていた私としては、招待されたことは決して嫌ではなかった。

恐れ多いけど。


「じゃあアレン、片付けなくていいからシャワー浴びて来なさい。入れていたお湯さめちゃうから」


お義母さんの言葉に、昨日言っていた大人同士の話し合いをこれからするということが分かった。


「うん。じゃあヴォルティスさんまたね」







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