第七話 登校日
一週間の合宿があっという間に終わった。
マジカル♡キュアドルの合宿も解散となり、国会議事堂の遥か地下にあるマジカル♡キュアドルの本拠地は一時的に閉鎖される。
これからは各自バラバラで自宅を中心に活動していくらしい。
「えっ? 一人で?」
清純派のブルームーンの美月さんに助けを求めたが、「皆一人で頑張ってるから……」と華麗にスルーされてしまった。
仕方なく、電車に乗って一人帰宅するが、流石に美少女なんで……あっという間にブラックサキュバスだとバレてしまった。
しかし、初日なのでSPさんが護衛してくれているため、安心安全の帰宅となった。
そもそも、スナイパーライフルで意識外から狙撃されても、マジカル♡セーフティが発動して、自動的に変身が可能だ。
しかし、マジカル♡シールドは間に合わないため、脳しょうをばら撒き……マジカル♡リザレクションのお世話になるらしい。
これはピンキーレインボーこと狭山 杏の実体験である。
♂ ⇒ ♀
帰宅すると、梨々花をはじめ両親も温かく迎えてくれた。
感動して涙が出そうになる。
しかし、梨々花がマジカル♡キュアドルについて、ベッタリと金魚のフンのようにまとわりつきながら、質問攻めしてくるので鬱陶しくなり、自室に逃げ込んだ。
「……家族の前でブラックサキュバスに変身なんで出来るわけない!! 恥ずかしい!!」
明日は水曜日、カバンの中に教科書を……。
「あっ。学校行きたくないかも……」
家族でさえもあれである。
学校なんて行ったら、四六時中質問攻めにあう気がする。
しかし、ブラックサキュバスの何かが組み込まれた体が、引きこもりなんて許すはずがない。
シミュレーションしてみる。
何かあった場合……魔法を使いたい。
でも、魔法少女ブラックサキュバスに変身しないと使えない。
だけど、恥ずかしくて絶対に変身したくない。
「仮に変身すると、誘惑と解放のスキル……マジカル♡バリア、マジカル♡シールド、マジカル♡アーマーの防御系スキル、そしてブラックサキュバスならではの魔法が使えるが……」
何がブラックサキュバスに出来るのだろうか?
ブラックサキュバスの魔法は特殊だ。
例えば、空を飛びたいと願っても発動なんてしない。
しかし、パンチラで下着を見せたいから空高く飛びたと願えば飛行も可能だ。
うん、スカートをめくるために、そよ風が作れたのもエロがらみだからだ。
「頭が痛くなってきたわ……」
♂ ⇒ ♀
その朝、ある世界中のマジカル♡キュアドルたちが驚く……大魔法を思いついてしまった。
「マジカル♡ドール!!」
そう、シモネタ大好きな同年代の女の子を作り出すことで、自分の存在感を薄めようとしたのだ。
『イエーーーイ!! 朝は、牛乳。乳搾りだぜぇ!!』
えっ? シモネタだけど……残念すぎない?
もう一つ、残念なことがある。
容姿が自分と瓜二つなのだ。
寝癖の位置から、目やにまで、何もかも。
「あ、このドールに学校行ってもらえば……」
『相変わらず馬鹿だな。おっぱいに栄養分盗られちゃったか? って、ツルペタだな!! マジレスすると3m以上離れられない』
どうしよう……。
ドールに帰ってもらおうかしら?
いや、恥じらいもなく、積極的なドールを全面に押し出して、今日という日を乗り越えてみせよう!!
♂ ⇒ ♀
通学路、やはりブラックサキュバスにあやかりたいとか、出来るなら匂いをかぎたいとか、触りたいとか……。
そんな欲望に溢れた女子や男子が近づいてくる。
『おう、男子!! オナったら手を洗おうぜ!! 臭うんだよ!!』
いきなり面倒くさい相手、狭間 真司を撃退した。
凄いぞドール!! お前は最高だ!!
何度か、ドールがシモネタで近づく者を撃退していると、不用意に近づけば大やけどすると認識され始める。
そんなとき……。
「お、おはよう……」と山吹 栞が挨拶してきた。
『膨らみ始めたバストの先がチクチクしてるかい?』
「えっ!?」
ドールが栞まで攻撃し始めている。
「ご、ごめん。こいつの事は気にしないで。人払い用の魔法なの。ドールも少し黙ってて」
「び、びっくり。同じ顔で……そんな事言うんだもん」
「ごめんって! それよりも久しぶりだね」
「うん」
流石だよ、栞。
マジカル♡キュアドルやブラックサキュバスの話題を避けながら会話を進めてくれる。
これが石垣 京介だったら……どうなんってるんだろう?
運命なのか? 栞がニッコリと笑うだけで、胸がキュンとなる。
『お二人さん、●●●がジュンと濡れてちゃったね』
はっ!? た、確かに……そうかも……。
って事は、このドールのシモネタって、意外と真実を言ってる訳なの!?




