第二話 2つの世界
昼休み、こっそりと体育館の裏にある物置小屋の近くの木の下を掘り返す。
「あった!」
これは石垣 京介と二人で産めたタイムカプセルだ。
やはり凡その想い出は、こっちの世界でも同じなんだと確信する。
そして、タイムカプセルを開けてみると、山吹 栞と書かれた手紙が入っていた。
つまり男友達が女友達に変わっただけで、やってる事は同じ?
栞には悪いが、手紙を読む。
”私は…………好き”
それは俺に対しての告白だった。
つまり男だった時、石垣 京介は……俺に手紙で告白していたことになる。
男だった時は、イケメンではないが、今は間違いなく美少女だ。
こんな可愛い女の子に惚れない男はいない。
女だって……。
♂ ⇒ ♀
タイムカプセルを埋め直した俺は、五時間目の授業が始まるギリギリで教室に駆け込んだ。
そして、俺の斜め前に座る山吹 栞の背中を見つめる。
男の子時代、女の子に相手にされなかったため、クラスの女の子について何も知らない。
う〜ん……BLは……男に対してそんな気持になれないけど、男の魂を持つ俺なら……百合も楽しめるかも?
元高2の俺は、小5の女の子を手玉に取るくらい……簡単じゃねー。
だって女の子の気持なんて、ワカンネー!!
そんな事を考えていると、不意に栞が振り返る。
決して美人ではないが、ニコッと笑った栞は、とても可愛かった。
♂ ⇒ ♀
放課後、本当に魔法少女が迎えに来た。
正門から堂々と歩いて帰ろうとするから、学校中の生徒が押し寄せて来た。
やっぱり圧倒的なオーラが魔法少女にはある。
ブルームーンは嫌な顔一つせず、心の奥から喜ぶ。
「皆、応援ありがとう! 時間がないけど、皆のために一曲歌います!!」
どこから出したのか、マイクを手に如何にもJ-POPな歌を踊り付きで歌った。
スピーカーなど無いが、学校の上空から歌声が響く。
「これが……魔法少女の力?」
俺以外の生徒は、この曲を知っているらしく、一緒に歌う者、ダンスする者、アイドルコールの合いの手や、それぞれが楽しみ大盛り上がりとなる。
正直、魔法少女のパフォーマンスに圧倒される。
そして、俺には無理だと……確信した。
♂ ⇒ ♀
父親が仕事から帰ってくるまでに母親を陥落させた魔法少女。
その容姿、その話術、その料理、何から何まで母親好みだった。
「魔法少女になれば、この位出来るようになります。お嬢さんを立派な魔法少女にしてみせます!!」
「大丈夫かしら? あの子……要領悪いから……」
理解っているじゃないか、流石母親!
「大丈夫です!! 任せてください!!」
梨々花の奴なんて、魔法少女の膝の上に乗って、胸の谷間に顔を埋めている。
「私のお姉ちゃんもブルームーンみたいになれる?」
「フフ。お姉ちゃんは、私以上の素質があるわ」
「本当?」
「うん。楽しみにしていてね。後はお父さんに許可をもらうだけなんだけど……」
「絶対に許可してもらう!!」
おいおい、俺には……無理だよ……。