第九話 敵だらけ
マジカル♡リザレクション?
意識が覚醒化していく。
あ、頭を撃ち抜かれた!?
自分がマジカル♡キュアドルでなかったら死んでた……てかマジカル♡キュアドルじゃなかったら、こんなことにはならない。
臨死体験か。
マジカル♡キュアドルが精神をやんわりと鈍らせていなかったら、恐怖と痛みで発狂していたに違いない。
黒いブーツ? 倒れているすぐ隣に誰かが立っている。
耳を劈く銃声が何度も鳴り響いている。
倒れたまま、どうにか顔を動かすと、可憐さんが何発も銃弾を浴びたのか血まみれになっていた。
「可憐さん!!」
可憐さんの周りには四人の黒ずくめの男たちが銃を突きつけ立っていた。
「すげーな。頭を撃ち抜いたのに本当に蘇りやがった。この化物め!!」
銃声と共に私は意識をまた失った。
……………
………
…
マジカル♡リザレクション……。
今度は、このまま……。
橘さん、花さん……助けて!!
いつものように一陣の風が吹き、目の前には真っ赤な魔女ローブを着た、大きな槍を持つ魔法少女が現れる。
「おっと、動くなよ、このマジカル♡キュアドルを撃ち抜くぞ」
黒ずくめの男は銃口を頭に私の押し付ける。
「やってみろ。マジカル♡キュアドルは不死だ。その程度では死なん」
えーーーーっ!? た、橘さん!?
死なないけど、痛いし怖いし、気分が悪いんですけど……。
「花、全員殺せ」
「はい。許さない!! 私の親友と後輩を!!」
橘さんと同じ真っ赤なローブを着た大葉 花は、私と可憐さんの置かれている状態を見て、全身から炎を体現させた。
マジカル☆ウィッチのサラマンダー、これが大葉 花の力だ。
渦巻く炎は、異世界空間を埋め尽くす。
その熱量に黒ずくめの男たちは、なす術もなく焼かれて死んでしまった。
「悪い……花。また助けられちゃたね」
「馬鹿、ハンターなんかに良いように、やられちゃって……あっ……わざと?」
「……」
「ただ……治療のキスがしたかっただけ?」
「うっ。っていうか、マジ治療してくれ、血を流しすぎて意識が飛びそう……」
可憐さんは私の頭をガッチリと押さえつけ、口内をベロンベロンと舐め回す。
『だ、駄目ですよ。た、橘さんが……ほら、滅茶苦茶睨んでます!!』
「なるほど……。完全に舐めてるわね可憐。ちょっとキツめの修行が必用かしら?」
可憐さんはビックっとして、私から離れると誤魔化すように、橘さんに言い訳を始めた。
「駄目。花と護衛変更だ」
♂ ⇒ ♀
帰り道、途中で広く誰もいない公園に寄ってみた。
花さんとは初めての二人っきり、何を話せば良いのやら……。
「あ、あの人たちは何だったんですか?」
「人が人であるために人であることを守る、そんなスローガンを掲げてる、ハンターという組織よ」
「ハンターですか? マジカル♡キュアドルとかと敵対してるとか?」
「風化は何も教えてないの?」
「ご、ごめんなさい」
「貴方が謝る必用はないけど、ハンターは、マジカル♡キュアドル、マジカル☆ウィッチ、ビーストなど、人ならざるものを排除しようとしているの」
「怖い人たちですね」
「ある意味、ビーストよりたちが悪いの。厳密には何も超能力のない人だから、法律で殺すことは許されてなかったの。でも、卒業したマジカル☆ウィッチを何人も殺害して……マジカル☆ウィッチも徹底抗戦する覚悟を決めて、今では世界中でハンターの殺害は、正当防衛として認知されるようになったのよ」
「そういう歴史が……」
あっ、話すことがなくなった。
あっそうだ!!
「あっ、あの……。花さんって強いですね」
「そんな事ないわ。私は序列で言えば、8番目。愛の一つ上よ。まぁ。愛が最年少だというだけだけど」
「え? あんなに強くて8番目ですか?」
「うん。1番目は言わなくてもわかる通り、橘先輩。唯一ビーストロードを倒せる存在。そして2番目は新宮地 天。もしかしたら橘先輩よりも強いかもと噂されているの。でもまるでやる気がないのよ。3番目は北条 明里さん。優等生なんだけど、橘先輩をライバル視しすぎて……いろいろあるの。そして、4番目が可憐よ。ねぇ、可憐の事本気で好き?」
「す、好きって……言われても……」
「そうよね。困るわよね。でも、可憐とは小さい頃からずっと一緒で、何度も助けられてて……私は……可憐が好きなの」
「……」
「そんな顔しないで。本音を言えばヤキモチだって……でも、今の可憐は毎日が楽しそう。あれが恋って……ことなのかしら」
花さんはにっこり笑うと、私の首を締め上げながら、持ち上げた。
「は、は……な……さん」
「ごめんなさい、貴方が邪魔なの」
カチャリと右腕に金属製の腕輪が嵌められた。
「これでマジカル♡キュアドルに変身できないわ」
締め上げた首を解放されると、地面に落とされて倒れてしまった。
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ……」
「こんな可愛い顔して!!」
お腹を蹴り飛ばされた。
「うぐっ!?」
「どうしようかしら? 醜く、二度と戻らないように顔を真っ黒に焼いてしまおうかしら?」
「や、やめて……」
「それとも生きたまま内蔵を全部取り出してあげてもいいわよ」
あの目は本気だ。
花さんに殺されてしまう。
恐怖で失禁してしまう。
「あらら? 駄目じゃない。マジカル♡キュアドルなんだから美しく可憐に散ってくれないと。失禁だなんてショックね」
怖くて、怖くて、歯がガチガチを震える。
「そうね、ちょっとでも動いたら、指を一本ずつ……消し炭にしてあげる。いいわね? 動いちゃ駄目よ」
マジカル☆ウィッチに変身した花さんは、私の服を焼き切り……真っ裸にした。
「まだまだ子供の体ね。ねぇ、大人になる前に死ぬって、どんな気分?」




